アディダスとエロス “Avant Garde Gothic”という書体
ビジネスに使えるデザインの話
ビジネスにデザインの知識はけっこう使えます。苦手な人も多いから1つ知るだけでもその分アドバンテージになることもあります。noteは毎日午前7時に更新しています。
“Avant Garde Gothic”という書体
斜めになったAやV、GとAがひとつになった合字が特徴のこの幾何学的な書体、Avant Garde Gothic(アヴァンギャルドゴシック)と言います。かなり有名な書体でいろいろなところで使われています。いつ頃、誰がデザインしたのかから始めて、この書体がどう「エロス」につながるのかを経由し、ついでアディダスとの関わりあたりで話を結びたいと思います。
Avant Garde Gothic (アヴァンギャルドゴシック)
この書体のデザイナーの一人、ハーブ・ルバーリンは、カリグラフィーに長けたアメリカ合衆国のグラフィックデザイナーです。ファウンダリーとは、「鋳造所」という意味ですが、書体は昔、活字だったので金属で作っていたので書体を作るメーカーを鋳造所と読んでいました。
そしてアヴァンギャルドゴシックをリリースしたITCという鋳造所は、ハーブ・ルバーリンが仲間たちと設立しました。書体のデザイナーであり、鋳造所の創設者ということになります。
この書体は、ハーブ・ルバーリンがそのロゴやグラフィックデザインを制作した「アヴァンギャルド」という雑誌のロゴを展開したものでした。
アヴァンギャルド(avant-garde)とは、 軍隊用語で「前衛」を意味するフランス語です。雑誌『アヴァンギャルド』は、その名の通り、かなり前衛的な雑誌で、エロスを含む、アメリカ社会や政府を痛烈に批判する内容の雑誌でした。
ハーブ・ルバーリン
ハーブ・ルバーリンは、アメリカのグラフィック・デザイナーで、ラルフ・ギンズブルグ(Ralph Ginzburg)と共同で3つの雑誌『エロス』『ファクト』『アバンギャルド』を手がけました。
『エロス』という雑誌
雑誌『エロス』は、1962年に4冊だけ発行されたアメリカの政治・文学を扱った季刊誌です。 ニューヨークタイムズはエロスを「見事なデザインのハードカバーの『マグブック(magbook)』」と評し、「歴史、政治、芸術、文学におけるセクシャリティを幅広くカバー」していると評価していました。
1962年秋に発行された全4号のうち第3号でマリリン・モンローの死の直前の写真が掲載され、当時のアメリカ司法長官ロバート・ケネディからギンズブルグに対してわいせつ物に関する訴訟を起こされています。
ギンズブルグは有罪判決を受け、懲役5年を言い渡されましたが、8ヶ月間服役しました。 この事件の後、雑誌は廃刊となります。
ルバーリンは、1961年に『サタデー・イブニング・ポスト』のトレードマークをデザインし、1964年には自身の会社「ハーブ・ルバーリン社」を設立しています。
Avant Garde Gothicを使ったロゴ
アヴァンギャルドゴシックを使った有名なロゴがいくつかあります。
雑誌の名を冠した書体
アヴァンギャルドゴシックの他にも雑誌用にデザインされ、その雑誌の名前を冠した書体があります。日本のデザイン雑誌、AXISです。
まとめ
アヴァンギャルドゴシックは、1970年代に流行し、今なお頻繁に使わている幾何学的なサンセリフ体です。サンセリフとは、いわゆるゴシック体です。
流行しただけあって、この書体には「ちょっと前の」という気配がいくぶんあります。現在は中立的な書体が流行しているので幾何学的ながらクセのあるこの書体は、ユニークなキャラクターを含めて使われることが多いようです。
斜めになったAやVを見かけたら「お!アヴァンギャルドゴシックか!?」と興味を持ってもらえると嬉しいです。
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参照
※1
https://www.dynacw.co.jp/fontstory/fontstory_detail.aspx?s=502
※2
https://fontmeme.com/famous-logos-created-with-itc-avant-garde-gothic-font/