日本の郵便マークはいつできた? おまけに世界の郵便マーク
ビジネスに使えるデザインの話
ビジネスにデザインの知識はけっこう使えます。苦手な人も多いから1つ知るだけでもその分アドバンテージになることもあります。noteは毎日午前7時に更新しています。
日本の郵便マークはいつできた?
日本の郵便マーク(または郵便記号)。これって何なんでしょう?
これは、郵便番号の頭にもつくし、郵便局のシンボルマークでもあります。いつできたのか?それは1887年(明治20年)。逓信省(ていしんしょう)が徽章(きしょう)として考案・発表し、後身の郵政省・郵政事業庁・日本郵政公社へと引き継がれ、民営化後の日本郵政グループのブランドマークとなっています。
1871年6月7日(明治4年4月20日)に日本の郵便事業が始まります。しかし当初は特に定められた徽章はなく、「郵便」の文字だけでした。
1877年(明治10年)頃から、大きな赤丸(いわゆる「日の丸」的な徽章)に太い横線を重ねた赤い「丸に一引き」が郵便マークとして用いられ始めたとされています(*2)。
「丸に一引き」は、郵便配達員の制帽・制服・郵便旗などに記されており、1884年(明治17年)6月23日太政官布達第15号により、正式に「郵便徽章」と定められました。その後、上述のように1887年(明治20年)に「〒」が逓信省の徽章に定められました。
なお、郵便等の所管官庁として逓信省が創設されるのは、その翌年、明治18年(1885年)である。
郵便マーク「〒」誕生までのいきさつ
1887年(明治20年)2月8日、当時の逓信省(ていしんしょう)は「今より (T)字形を以って本省全般の徽章とす」と告示。
しかし2月14日に「〒」に変更し、2月19日の官報により(「T」ではなく)「実は「〒」の誤りだった」ということで訂正されます。
この経緯にはおもに3つの諸説があります。
諸説1
「T」を第一案とし、「テイシンショウ」の片仮名の「テ」を図案化した「〒」を第二案として提出したところ、第二案の「〒」が採用された。しかし、告示の時「T」と誤ってしまったために、これを訂正した、という説。
諸説2
「T」にすることに決まっていたものの、後日調べてみると「T」は国際郵便の取扱いでは、郵便料金不足の印として万国共通に使用されていた。そのため、これによく似たマークは適当ではないということで、「〒」に訂正した、という説。また、この訂正では、「テイシンショウ」の片仮名の「テ」からの説と、単純に「T」の上に一本足して「〒」とした、という説の2つがある。
諸説3
船会社(日本郵船)のファンネルマーク(funnel mark: 船舶の煙突、ファンネルに描かれる海運会社など当該船舶の所有会社を表示するためのマーク)が横二本で、同社の社員から、これは日本を意味するもので、この下に縦棒をつけて「〒」とした説。
いずれにせよ、これ以降は「〒」の徽章が、郵便配達員が身につける帽子(丸笠)の正面や制服上着の袖口、郵便旗、あるいは書状集め箱(現在の郵便ポスト)につけられるようになりました。
また、当初は上述の「丸に一引き」や封筒をモチーフにしていた「郵便局」を示す地図記号も、「〒」を丸で囲んだもの(〶)と定められていました。
なお、郵便記号の縦横比は、昭和25年(1950年)の郵政省告示第35号により幅のほうが広く高さが低いのが正しい記号とされています。
顔郵便マーク
顔郵便マーク(〠)は、かつて郵政省(現:総務省)が郵便事業(現・日本郵便)で使用していた記号。正式名称は不明。顔郵便マークに手足が書かれたマスコットは「ナンバーくん」と呼ばれており、こちらは郵政省自身による公式な愛称。
1996年に新キャラクターの「ポストン」が登場したことから郵政の場では公式には使われなくなりました。さらに民営化により、日本郵政グループでは「撤去が望ましい」扱いとされました(*2)。
ちなみにフォント(書体)によって顔郵便マークは異なるので、「ゆうびん」と入力して試してみると楽しいです。
ポストン
Mr. ZIP
Mr. ZIP(非公式には「Zippy」)は、あらゆる郵便物にZIPコード(アメリカの郵便番号)を書き込むよう一般大衆に奨励する1960年代のアメリカ合衆国郵政省、後の1970年代のアメリカ合衆国郵便公社が用いたキャラクターです。
Mr. ZIPは、ニューヨーク銀行のbank-by-mailキャンペーンにより、郵便集配員の息子で広告代理店の社員であるハワード・ウィルコックス(Howard Wilcox)が元々デザインしたもの。ウィルコックスのデザインは、手紙を配達しているポストマンを表しています。その後数回デザインは変更された後、電話会社 AT&Tが権利を得て、郵政省が無料で利用できるようになりました。胴体と手足・バッグを追加した郵政省の新しいMr. ZIPのデザインは、1962年10月に発表されました。
逓信省から日本郵政までの流れ
逓信省(1885–1949)
逓信省(ていしんしょう)(英語: Ministry of Communications)は、かつて日本に存在した郵便、通信、運輸を管轄する中央官庁でした。
内閣創設時(1885年)から第二次世界大戦中( 1939–1945)の行政機構改革で統合されるまで、交通・通信・電気を幅広く管轄していました。第二次世界大戦後にも復活して1946年(昭和21年)から1949年(昭和24年)まで存在していましたが、この時期には通信及び航空保安のみを管轄。
現在の総務省、国土交通省航空局、日本郵政(JP)、及び日本電信電話(NTT)は、1946年(昭和21年)から1949年(昭和24年)までの逓信省の後身に相当します。
ちなみに「逓信」(ていしん)とは、「順次にとりついで、音信を伝えること」という意味。
郵政省(1949–2001)
郵政省(ゆうせいしょう)(英語:Ministry of Posts and Telecommunications, MPT。ただし設置当初の英称はMinistry of Postal Services)は、かつて存在した日本の行政機関です。国家行政組織法と郵政省設置法に基づき、郵便事業・郵便貯金事業・簡易保険事業ならびに電気通信・電波・放送に関する行政を取扱っていました。長は郵政大臣。2001年1月6日に行われた中央省庁再編によって総務省と郵政事業庁となりました。
郵政事業庁(2001–2003)
(ゆうせいじぎょうちょう)(英名: Postal Services Agency)は、かつて存在した総務省の外局の一つ。
日本郵政公社(2003-2007)
日本郵政公社(にっぽんゆうせいこうしゃ)(英名:Japan Post)は、2003年4月1日から2007年9月30日までの4年半にわたり、日本で郵政三事業(郵便・郵便貯金・簡易保険)を行っていた国営の特殊法人です。コーポレートスローガンは「真っ向サービス」。
2007年10月1日、郵政民営化に伴い日本郵政グループとして日本郵政株式会社、郵便事業株式会社、郵便局株式会社、株式会社ゆうちょ銀行、株式会社かんぽ生命保険へ分割され、日本郵政公社は解散しました。これにより、内務省・逓信省以来130年以上にわたり国営によって行われてきた時代の郵政事業は幕を閉じることとなりました。
日本郵政株式会社
日本郵政株式会社(にっぽんゆうせい)(英語: JAPAN POST HOLDINGS Co.,Ltd.)は、日本郵政グループの持株会社。郵政民営化)に伴い、発足。現在は総務省が所管しています。
日本郵便、ゆうちょ銀行、かんぽ生命保険などの傘下の事業会社を通じて郵便・物流事業、金融窓口事業・銀行事業、生命保険事業などを行っています。世界企業の売上高ランキングであるフォーチュン・グローバル500によると、売上高は世界第58位(2021年度)。かつUSPS、ドイツポストに次ぐ世界第3位規模の郵便事業体。
郵便マークの著作権は?
他国の郵便事業体のロゴ
アメリカ:USPS (United States Postal Service)
アメリカ合衆国郵便公社(USPS)は、郵便局、U.S.メール、郵便サービスとも呼ばれ、アメリカ合衆国連邦政府の行政府の独立機関であり、アメリカ合衆国、その島しょ部、およびその関連州で郵便サービスを提供する責任を負っています。アメリカ合衆国憲法によって明確に認可された数少ない政府機関の一つ。2023年現在、USPSには525,469人のキャリア職員と114,623人のノンキャリア職員がいます。
ドイツ:Deutsche Post AG(ドイツ・ポスト)
ドイツポスト (Deutsche Post AG) は、ドイツのボンに本拠を置く企業。
中世から続く帝国郵便を起源とし、約220か国の郵便・物流を担っている多国籍企業です。フランクフルト証券取引所に上場している。また、ドイツ株価指数(DAX)の採用銘柄でもあります。
日本では「ドイチェポスト」と表記されることもあり、ドイツ語での発音もこれに近い。
イギリス:Royal Mail(ロイヤル・メール)
ロイヤルメール(英語:Royal Mail)は、イギリスの郵便事業のブランド名。運営企業はInternational Distributions Services plc (IDS)で、郵便事業を営むほか、パーセルフォース(Parcelforce Worldwide)のブランドで物流・小包宅配事業を行い、国際物流企業のジェネラル・ロジスティクス・システムズ(General Logistics Systems)、窓口業務を行うポスト・オフィス・リミテッド(Post Office Ltd.)などを保有・運営しています。
フランス:La Poste(フランス郵政公社)
フランス郵政公社(仏: La Poste)は、フランスおよびその海外県であるレユニオン島、グアドループ、マルティニーク、フランス領ギアナ、海外準県であるサンピエール島・ミクロン島、マヨットで郵便事業を行っている公共企業体。モナコやアンドラなどでも郵便事業を行っています。原語表記でラ・ポストとも称される。
イタリア:Poste Italiane S.p.A.(ポステ・イタリアーネ)
ポステ・イタリアーネ (イタリア語: Poste Italiane S.p.A.)は、イタリア共和国ローマに本社を置き、イタリアにおける郵便事業・郵便局の運営を行う企業。保険や銀行などの金融サービス事業、携帯電話事業なども手掛けています。株式の6割をイタリア政府の関連組織が保有しています。
スペイン:Correos de España
ソシエダ・エスタタル・コレオス・イ・テレグラフォス(Sociedad Estatal Correos y Telégrafos, S.A., S.M.E.)、商号コレオス(Correos)のコレオスグループはスペインの公営企業です。同社は公営持株会社Sociedad Estatal de Participaciones Industriales(SEPI)の一部。1980年代から1990年代にかけて、イベリア、エンデサ、テレフォニカ、アルヘンタリアなどの大企業が民営化された後、スペイン最大の公営企業となっています。
まとめ
諸説ありますが、郵便マークができたときには母体は逓信省(ていしんしょう)だったので、Tや「テイシン」に関連付けて覚えられていたことでしょう。
「郵便」なのに「〒」のマーク。その理由にはそもそも名前が違った、ということも含まれているかもしれません。
個人的には、顔郵便マークの書体による違いがとても楽しいです。書体によってはウィンクしていたりします。
参照
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※2
*3