自分史的なクリッピング史料

週末の楽しみは競馬。土曜日はテレ東、そして日曜日はフジテレビ。テレビ放送は準メイン、メインを中心に1時間枠の放送だから、全てのレースを視聴できる訳ではない(ネットでは全てみられるみたいだけど)。競馬場に足を運んだのなら、1日レースをみたいと思うのかも知れないけど・・・。でもこの酷暑の中、競馬場でみたいと思うより、汗をかきかき競走をさせられる馬の気持ちを思うとたまったもんじゃないと言ってたりして(If I were a horose)。

さて、先日の都知事選は想定通りの結果に。蓮舫さんは2位にはなれず、3位以下だと個人的には予想していたので、石丸さんの大躍進に驚きは余りなかった。一方で同盟国?のアメリカではポスト・バイデンがにわかに囁かれ日本ではポスト・岸田の議論も賑やかになっている。

首相は都知事選と違って「国政は政治家なら誰でもテッペンの首相を目指す」という輩が多い。国会議員の資格なくしてリーダーにはなれないから、訳の分からない候補者が出る知事選とはちょっと違う。なんとなくより高度な政治性を保持しているからという言い方ではカッコよすぎるけど。まあ憲法で決まっているから仕方なし。されど結局は、国民の人気・不人気は反映される、世論として。こんな話ばかりでなく少し世間の喧騒から離れて、夏休みに向けての話を。

2022年9月7日 朝日 旅する文学 青森編 文芸評論家・斎藤美奈子

もうすぐ夏休みの季節。家内の実家は青森だから、何となく何十年も里帰りすると故郷感が内心出てきてはいるものの、津軽弁は喋れない。ここでも言葉の壁を感じることがある。あちらの人は標準語・東京弁は理解しているけど、返される言葉が津軽弁の時には、少々理解できないことも。

この記事は文芸評論家の斎藤美奈子さんが、都道府県別にシリーズとして執筆されているコラム。やはり冒頭で、縄文、ねぶた、太宰治とご自身がすぐにでも頭に浮かぶ文化財だと紹介されている。その通りだ。でも個人的にはこれに奥入瀬渓流と八甲田山辺りも組み入れたいところ。但し自然遺産だからカテゴリーが違うのかも知れない。だとすると、もう一つ津軽三味線を入れておきたい。

太宰治は生まれ故郷に屈折した思いを抱いていたと。自分も斜陽館を訪れたことがある。その作品である『津軽』には戦争末期、3週間ほどかけて彼が津軽半島を旅した記録を記した。蟹田、今別、三厩と行く先々で太宰は歓迎されたらしい。何せ故郷の有名人だから。斎藤さんは、自虐ネタもあったりして、これは太宰にしか書けない規格外れの津軽ガイドブックであると記している。お菓子の『津軽』(クッキー)は食べたことがあるけど、実は本は読んだことがない。

また、青森にはハチャメチャな芸術家の系譜があるようだと記して、葛西善蔵をあげている。借金の無心のために東京と郷里行き来し、生活苦を創作欲に変えて破滅へ向かった私小説作家のダメっぷりは見事と評している。さらに棟方志功は太宰と同じように道化を演じることがあったと。
このどちらも、その様子を記した書籍、『椎の若葉に光あれ』(鎌田 慧著)と『鬼が来た』(長部日出雄著)が紹介されている。

青森という地域は、畿内を中心とした歴史観からいえば、敗軍の残党がたどり着いた最果ての地で、そこで培われた自虐と反骨の精神がこの地域独特の美意識を生んだのかもしれないとコメントされている。

この他にも、高村薫の『晴子情歌』や、原田マハの『奇跡の人』などをあげている。特に後者、『奇跡の人』は、かのヘレン・ケラー伝を青森に移植したフィクション。聾唖の少女と三味線を弾く盲目の少女の出会いと別れなど細部はリアルで涙なしには読めないと評している。原田マハの『奇跡の人』は要必読だと思っている。いずれ読まなければ・・・。更に平成の若者観を付して、越谷オサム『いとみち』を選書されている。主人公は板柳町(家内の実家のすぐそば)に住み、弘前のメイドカフェでバイト中ながら、どっぷりの津軽弁を駆使しながら、店のピンチを救うというストーリーは津軽ガールの本領発揮だと。映画化もされたキュートな青春小説だと。

最後には、県南東部の三八地域からも一編と記して、『海猫ツリーハウス』という小説を紹介。服飾専門学校を卒業前にやめた主人公は、実家の八戸に戻ってツリーハウスの工房に職を得て、服飾デザイナーを夢見たものの、服も作らずにうだうだとする主人公が成長する物語。色々な芸術家魂を散見できることにこの地域の眩しさを感じると締めくくられている。

小学生の時に、棟方志功の映画『わだばゴッホになる』を体育館で観たことを今でも覚えている。彫刻刀に顔をすり寄せるように彫っていた姿とこの文言。初めて棟方志功の存在を知った時。でもその時の東北地方は余りに自分からは距離があった。でも今となっては、その距離がだいぶ縮まったと思えてくる。各地域で芸術家は輩出されているだろうけど、それぞれの地域で連想する何か特別なものを頭に描くということもリフレッシュにはちょうどいいなぁと思いながら、いつもこのシリーズを読んでいる。



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