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被災地支援ボランティアを通して感じたこと
今回、奥能登への被災地支援ボランティアへ参加したのが被災地へ足を運んだ初めての体験だったため沢山の衝撃を受けた。
車中泊だったため石川に入った瞬間は真っ暗で何も見えない状態かつみな寝付いていたが地面からバスへの大きな振動を感じてほとんどの人が目を覚ましていた。
振動の正体は地震による道路の割れであった。
最近ではメディアを通して能登の被害が報道されることが減っていたためもうかなり復興しているのではないかと心のどこかで思っていた。しかし、実際現地では今回の地震で唯一倒壊した7階建てのビルの解体は今月の頭に始まったばかりであったり、一階がひしゃげて二階が接地している家屋が多く残っていたりと決してまだ復興しているとは言い切れない状況であった。
一階部分がひしゃげた建物をはじめて目の当たりにしてどこか現実のものではないものとしてとらえている自分がいた。
自分の生活している町との乖離の激しさに身体が同じことが起こりうる可能性を否定しているようだった。
どこか映像を見ているかのような現実のものとして捉えきれない感覚があった。
輪島の観光名所でもあった輪島朝市は現在一つのお店を除いて営業していないどころか、お店の形が存在していなかった。
輪島の街には復興や輪島朝市復活に向けた「頑張ろう」の文字が多く存在していた。
わたしはこんなに頑張っている人たちにこれ以上無責任に「頑張ろう」といえるほど責任がもてないと思った。
なかには「復興を願っています」の文字とともに店の名前が連なるポスターがあった。
異なる解釈かもしれないが、もうこのお店は輪島でお店を再びやることを諦めているのかもしれない、一つの夢となるくらい叶わないと感じているのかもしれないと考えた。
意図は異なるかもしれないが、そう思わされるくらいの状況がそこにはあった。
未だ自衛隊の提供する浴場が輪島には存在する。
上下水道の整備が追い付いていないのだ。
彼らのなかには貯水タンクからやりくりして水を使った生活を営む者が多くいる。
これは日本で初めての事態だという。
お風呂は三日に一度、トイレは水洗じゃない、この生活を送る人が日本に多く存在していることをどのくらいの人が知っているだろうか。
輪島は能登半島に位置し、金沢から100km以上離れている。
金沢から水を引いてくるのにも100km以上の水道管が必要だということだ。
阪神淡路大震災と今回の能登半島地震の大きな一つの違いは約30年の月日だ。
近年ではSDGsが主張され、ごみの分別は大きな一つのルールとなっている。
被災地の家屋や建造物解体もこのルールに則り、分別を強いられている。
阪神淡路大震災のときはすべて重機で解体して海を埋め立てる方式で復興は早かったという。
しかし、今回の災害ではこのルールに復興が苦しめられている。
加えて、能登半島は今年九月の大雨による土砂災害に苦しんだ。
土砂を詰めた土嚢が集まっても今度は土嚢袋と土砂を分ける作業が必要とされる。
復興は一筋縄ではいかない。
私たちは今回二日間かけて一軒の家の裏山にできた土砂崩れによる水路の閉塞に対する開通作業を行った。
わたしは正直、重機でやったほうが早いのではないかと思った。
しかし、実際現地に足を運ぶと家は軽トラック一台がやっと通れる細さの急な斜面の上に位置していたことに加え、重機では難しい薄さの泥や石、岩が堆積していた。
薄いといっても人間には重作業でとてもご年配の方が一人でできる作業だとは思えなかった。
実際、私と同年代の若い女性ボランティアであっても土砂を詰めた土嚢袋を持ち上げるのは至難の業であった。
現地に入った日、水路はどこにあるのかわからないほど土砂が堆積していた。
21人が二日間力を合わせて水路は復活した。
おうちの方に話を聞くと、この水路がないと山からの水がすべて家に流れ込んでいたという。
私たち21人は一人の命を救ったのである。
二日間の活動を通して、当初の何から手を付けるべきかもわからない現実のものではないような感覚は消えていた。
真剣にいま自分の目の前にあるものとして解決の手立てを考える力がついた。
活動が終わったとき、そこには広くて青く澄んだ空と海が広がっていた。
間違いなく今回の被害を引き起こした張本人であるのに、憎めないほどきれいなのだ。
私はこの景色をまたたくさんの人が見に来る能登にしたいと思った。
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