【今日の論文】養護学校「作業学習」における知的障害児による目標設定・自己評価とその効果

概要
「作業学習」において、作業製品の仕上げの目標枚数と作業技術・態度に関する目標を生徒本人が設定し、作業終了後に設定した目標に対する自己評価が行われた。その結果、目標枚数の適切な設定や自己評価ができるようになり、仕上げ枚数の向上も示された。しかし、作業技術や態度については、大きな改善はみられなかった。

方法
対象児 知的養護学校中学部生徒。手工芸班での実践。生活年齢15歳3か月(IQ=40, 田中ビネー)。20までの具体物の数唱(+)。目標は高く掲げるが取り組みが持続しないことや、興味のない活動に対してむらがあることがある。
期間 11月中の1か月。作業時間約2時間。途中休憩あり。
手続き
(1)作業工程の分担 教員側の希望と生徒の希望によって決定。
(2)作業目標の設定 「作業量」「技術または態度」に関する目標を決める。 

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(3)実際の作業と教員の指導・助言 目標枚数を1枚仕上げるごとに小さいシールを貼る。
(4)自己評価 授業のまとめとして10~15分まとめ。4段階で自己評価し、シールを選択させ(金:大変よくできた、緑:よくできた、黄:がんばれなかった、赤:がんばれなかった)、教員との対話し、教師が評価基準に基づいてシールを貼った。
<評価基準>

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記録及び観察 生徒本人に目標設定、実際の作業、生徒本人による自己評価、決定された評価、を記録した。分析起案ごとに自己評価と決定された評価の一致率を算出。

結果と考察 対象生徒は目標数を適切に設定できるようになり、自己評価も正確にできるようになった。それに伴い、仕上げ枚数が向上した。作業態度においては、目標(「まっすぐ縫う」「寝ない」など)は教員が提示したが、効果はみられなかった。
 目標枚数の設定について、教員とほぼ一致するよう修正したが、子どもに対する肯定的で適切なフィードバックは「子どもの行動を改善するには何をすべきか」を理解させるためには重要であった。作業技術や態度に関して自発的な目標設定がなされなかったのは、設定する目標が複雑な言語表現を求められたためと考えられる(例えば、作業においては「50個つくる」でOKだが、作業態度では行動そのものを設定する必要があったため)。あらかじめ行動を言語化したものを提示して選択させることが必要であった。
 本研究では、仕上げ枚数の向上に影響を及ぼした要因が複数考えられるため(目標設定、目標確認、作業ノートへの自己記録、自己評価、教員のフィードバック)、今後は自己評価を行うことがどの程度生徒の取り組みに影響を及ぼしていくのか検討する必要がある。

感想
・教育現場でのデータ。参考になる。
・教員は「寝ない」とか「ふざけない」とかよく言うけど、これ死人テストに引っかかってるんだよな。代替行動で即座に言い換えできないかな。でもリストを作って練習することが必要になってきそうな。
 それと、「背骨ピシッと座ります」とかより「ふざけない!」の方が即効性があるし、まっすぐ伝えられるから、指導者側は「伝えたぞ感」に強化されているのかな。言語刺激の「即時×抽象 vs 非即時×具体」ってどっちが効果あるんだろ。長い目で見たら、後者?

文献情報
霜田浩信・井澤信三. (2005). 養護学校 「作業学習」 における知的障害児による目標設定・自己評価とその効果. 特殊教育学研究, 43(2), 109-117.

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