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「また作って!」と言われない妻の手料理。その理由が分かりました【考察】
残念ながら、私の夫にとって、私の料理は全力で食べたいものではないらしい。
というのは、私が自己流アレンジしてしまうからだ。
たとえば、普通のカレーをスパイスカレーにしてみたり、ちょっとアクセントに生姜を入れてみたり。
*
近くのパン屋さんに行った時のことだ。
ちょっと小洒落てて、店の人も対応良くて、清潔感もあって、なかなかよかった。
そこで、家にチーズがあったことを思い出し、そうだバケットに乗せて食べよう。そう思った。
「バケットある?」と私は尋ねると、店主さんは「もちろん!」と応え、大きめな丸いパンをカットしてハーフで提供してくれた。(ラウンド型のあのパンは、果たしてバケットというのか?という疑問は置いといて。)
早速、家に着くなり、あのいい感じのお店のバケットを試食する。袋を開けるとふわっとパンの香りが広がる。
だが。
プレーンのバケットは、なぜかチーズのような風味、さらにガーリックいり。
いや、、
美味しいよ。
美味しいよ、、、
不味くはないよ、、
でも。
私は小麦粉と塩と水でできたバケットがよかった。
なんともないバケットを食べたかった。
そんなとある日の朝だった。
*
そして、事件はまた起こる。
このお店は小さいながらに10種類ほどのパンがある。ベーグルはメキシコのパン屋ではあまり見かけないこともあって、この店はベーグルある!と期待して購入した。
だが。
食べてみると中は黄色味がかがっているし、なんかふわふわしている。
まさか。
食べてみると、普通にふわふわのデニッシュのような。
…いやこれ、ベーグルじゃないやんけ。
ベーグルってのは、もっとシンプルでもちもちしてて、ガツンとお腹に溜まるあれだよ。
なぜバターの風味が感じられるのか。
なぜふわふわなのか。
いや、美味しいんだよ!
美味しいんだけど、それじゃないんだよ。
*
私はそのときハッとした。
これが夫の気持ちなんだと。
夫は私の作る料理に対し、あったら食べるけど、作ってとは言わないスタンスである。
「これどう?」と作って感想を聞くと、「うん美味しいよ」と言う。
しかし、「また作ろうか?」と訊くと「まぁこれじゃなくていいかな」と。
このやりとりを友達に話したら、なんとひどい旦那さんだこと!と友達には哀れがられ、私も「なんで妻の料理を愛してくれないんかな〜」とイライラしたこともある。
しかしながら、分かってしまった。
美味しいけど、これじゃない
この一言に尽きるわけだ。
夫はベーシックなものが食べたいのだ。だから、そういう物言いをするんだ。
パンならば、私はなんにもないシンプルなものが食べたいのだ。
名前をつけている以上、定義される(イメージする)料理がある。すなわち、それにそぐわないものは、期待を裏切って「そうじゃない」が上回る。
夫の気持ちが分かった経験だった。
想像と、実際の味の違和感は、良くも悪くも強烈な印象を与えるのだ。
(だけれども、素晴らしい料理の腕があり、「それじゃない」のその上のレベルで舌を唸らせることができるのならば、それはホンモノなのだと確信している。)