【今日の論文】遊び場面における広汎性発達障害児に対するユーモアを含んだ介入

概要 広汎性発達障害の5歳男児に対して(a)触覚ユーモア、(b)聴覚ユーモア、(c)視覚ユーモア、(d)からかいユーモア、(e)強化の遅延、(f)拡張随伴模倣、によって構成される介入パッケージで、アイコンタクトや笑顔が増加するか検討した。その結果、ユーモアを含む介入パッケージは、ASD児のポジティブな社会的行動の増加に効果があった。

〇広汎性発達障害(PDD) ≒ASD

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〇拡張随伴模倣 …子どものモノ操作、音声、ジェスチャーを即時に真似る手続き。ASD児のポジティブな社会的行動を促進した(Dawson & Adams, 1984; Escalona, Field, Nadel, &
Lundy, 2002; Field, Field, Sanders, & Nadel, 2001)。


対象児 ASD男児1名。
従属変数 アイコンタクト、笑顔、アイコンタクト+笑顔の生起率 
手続き
 BL 自由遊び場面で、1分間に一度、実験者は参加児の名前を呼ぶ。アイコンタクトなどの生起に対してはポジティブFB。
 介入 
(a)触覚ユーモア からかい、くすぐり
(b)聴覚ユーモア 参加児が下を向いて遊んでいるときに、実験者が奇声を上げ、視覚的定位反応促す。
(c)視覚ユーモア 実験者が突然お絵描きボードに頭をつける。 
(d)からかいユーモア 実験者がボールを提示し、参加児のリーチング行動を引き出した後、手をひっこめる。⇔押しつける。
(e)強化の遅延 おもちゃの渡す/受け取るの行動の繰り返しで行動連鎖を安定させる。参加児がおもちゃを渡してもあえて応答せずに5秒間ほかの行動をする。
(f)拡張随伴模倣 参加児の自発的な発話や社会的行動を大げさに拡張して模倣した。
 以上の介入パッケージで実施。
結果と考察 アイコンタクト、笑顔、アイコンタクト+笑顔の生起率が増加。おもちゃを変更しても維持。
 反応との関連が強い(自然な)強化子は、反応の獲得や頻度の増加に効果的である(Koegel,R. L. & Williams, 1980; Williams, Koegel, & Egel,1981)。おもちゃへの注視行動をおもちゃで強化する場合は強化子の関連性は強い。⇔他者の顔への注視行動をおもちゃで強化する場合は強化子の関連性は低い。本研究では、参加児のアイコンタクトに対し、実験者が見つめ返すこと、参加児の笑顔に対して実験者が笑顔で応答することが、自然な強化子の随伴性を設定したため、効果が示されたと考えられる。

感想
・実験中の様子のイメージがしやすい記述の仕方。
・勉強!臨床!指導!とか思って、がちがちにやるよりもユーモアをもって接することが重要なんだよなぁ。
・拡張随伴模倣は、重度ASDの高校生にも効果は出るのだろうか…。高校生だと効果が大きくない?また、重度重複障害の子には、どうなんだろう?


文献情報
松田壮一郎・山本淳一. (2019). 遊び場面における広汎性発達障害幼児のポジティブな社会的行動に対するユーモアを含んだ介入パッケージの効果. 行動分析学研究, 33(2), 92-101.

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