【今日の論文】発話に困難を示す知的高等部生徒における伝達スキルの習得過程-作業学習-

概要 特別支援学校高等部に在籍する男子生徒1名。MA=5歳8か月。自発的に話さないため、意思が周囲に伝わらない。言語が不明瞭。本研究では、3年間の縦断的変化と支援経過を検討し、明らかにする。<調査研究>

手続き
(1)作業学習中の行動観察
  授業時間約2時間(観察回数5/各学年時)、ビデオカメラにて記録。記録は、行動カテゴリーに分け、場面と行動を記録。
(2)担任教師と作業学習担当教師へのインタビュー 2年生期と3年生期の観察終了後にインタビュー
結果 伝達行動(自発的に他者に作業に関係することを発話する)は、1年生の時に比べて大きく増加。他者注視行動(明らかに何かを伝えるべきときに、見つめるのみで発話できなかった)と試行錯誤行動(作業を止め、同じ作業を繰り返す)は減少した。他の学校生活場面においても挨拶や質問を自発的に行うようになった。
考察
 伝達行動の増加の理由として、作業学習がほかの授業よりも発する言葉の内容が決まっているため、話すことへの負担が低いことが考えられる。いくつかの定型表現を覚えればよいということが、着実な作業遂行の習得につながった。
 教師が発話のモデリングや教師自らのコミュニケーションを調整し、対象児が自発的に話すこと、相手に伝える経験を増やすことが重要。
 今後は、現場実習や家庭生活における伝達スキルの変化とその教育支援との関連性まで踏み込んだ分析を行う必要がある。

感想
・教育的現場での環境調整(場所、教師の指示)ができていれば、生徒は伸びるってこと!
・対象児は作業時に発話の手本カード(文字刺激「おねがいします」「できました」「おしえてください」など)を機器に貼り付けておくことで、話す内容を自ら選択し、発話に移すことができた。しかし、文字が読めない場合はどうする?絵カードでやる?スモールステップでまずは、「おねがいします」のみいれていくとかかな?
・「学習動機が…」「不安感の軽減」という用語が気になってたまらぬ。いや、たしかにわかるんだけど、もっと行動的にかけるのではないかと思ってしまう(笑)


文献情報
渡邉雅俊・松本晃. (2013). 発話に困難を示す知的障害のある高等部生徒における伝達スキルの習得過程. 教育実践学研究: 山梨大学教育人間科学部附属教育実践総合センター研究紀要= 教育実践学研究: 山梨大学教育人間科学部附属教育実践総合センター研究紀要, (18), 48-56.

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