ひとりそたぶ342 五月病
342回目は「五月病」です。
自分も心を患ってるのでどうにも笑いのネタとして昇華出来ず、ショートショート形式になってしまいました。ユニット名はふざけ倒してるのに。
ではご覧下さい。
孤独なスメル
ショートショート/五月の別れ
「目に青葉 山ホトトギス 初鰹」
五月は一番気候が良いのだが、自分にはどうにも気が滅入る季節だ。
葉っぱが青いからどうしたという話だし、ホトトギスなどは見た事が無いし、初鰹にしても秋の戻り鰹の旨さには及ばない。
ゴールデンウイークにしても祝日も働く環境の中、連休など夢のまた夢だ。外は晴れ晴れとしているのに心はちっとも晴れやしない。五月病だろうか。
「五月が終われば自然に治りますよ」
医者はそう言う。だがその台詞を聞いたのは十年前だ。六月に入り梅雨が来ても、九月が過ぎ肌寒くなっても、年が明けても五月病が続いている。
果たして自分の五月病がいつ終わるのか、モヤモヤした気持ちのまま十年を過ごした。
深夜0時。今年も五月が終わった。今日から六月だ。寝る前にカレンダーを捲ろう。
「5月」
ん……?目の錯覚だろうか。確かに今剥がした感触はあった。手元には剥がしたばかりの5月の紙がある。
しかし壁のカレンダーは手元のカレンダーと同じ絵が描かれている。
そんな馬鹿な!もう一度剥がす。
「5月」
何ということだ!目の錯覚に違いない!そう思い何枚も剥がした。
「5月」
床には同じ5月の紙が何枚も散乱するばかりで、壁のカレンダーがそれを嘲笑うかの様に5月と書いてある。
そして何枚も剥がしたはずなのに一向に減らない。12枚しかないはずななのに床にはその倍以上の紙がある。
ミスプリントに違いない。夜中だがクレームを入れてやる。そう思いスマートフォンを起動した。
「5月1日」
嘘だ!!今日は6月1日じゃないか!!
テレビもパソコンも考えうる限り確認したが、どれも「5月1日」だった。一体どういう事なのだ……?俺は憂鬱な五月をもう一度過ごす羽目になった。
また憂鬱な五月が過ぎた。今日こそ六月だろう。寝る前にカレンダーを捲ろう。
「5月」
俺は夜中にも拘わらず咆哮し、そして咽び泣いた。俺の五月病は終わらないのだと悟った。
新型五月病:長年五月病を患った患者が罹る病気。主に五月から抜け出せなくなる、いわゆるループする錯覚に陥り、最後は発狂する。