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蜘蛛のように君を

小さな蜘蛛を捕まえた
部屋の隅っこで、じっとしていた
蜘蛛をつぶせない僕は、A4の紙で器用にそれを掬い
窓の外に振り落とした

大人しい蜘蛛だった

目覚めたとき、夏の匂いがした
空の遠く、入道雲が生まれていた
何もない僕は、何かが始まることをひそかに期待し
朝からシャワーを浴びた

どこかで何かを期待している

五月の日差しは目覚めのようで
ただ漠然と、漠然とした何かが目覚めているような気がしていた

何もしたくない僕にとっても、何かが目覚めるその予感は、
むしろ歓迎すべき事象のようで
僕はすべての窓を開けた

長い坂を、転がるように下る
五千円で買った、茶色の古い自転車で

錆びた籠は平行四辺形、問題はない

風を切って下る
こんな時ばかりは、
坂の下にある踏切も、きっと必ず、開いていなければならない

街に出て、花を買った
店の隅っこで、元気に咲いていた
ハルジオンを籠に乗せ、落とさないように器用におさえ
また自転車を漕ぐ

根拠はないが
何かが始まる予感がしている
僕は何かを、期待している

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