椎名どらごん

私は、かつて物書きをしていた何かです。今はほかの仕事をしています。 もう一度文章を書こ…

椎名どらごん

私は、かつて物書きをしていた何かです。今はほかの仕事をしています。 もう一度文章を書こうと思いました。ぽつぽつとここに書いていきます。

最近の記事

ばいんばいん

ばいんばいんと跳ねて 可愛げなリズムで 転がって弾んで そんな塩梅で過ごしていたい かりんかりんと砕けて 楽しげな硬さで 割れて弾けて そんな面白さを見つけていきたい

    • 不安。或いは、光

      しばしば、何かに対する不安に制御が効かなくなる。 何かしらの安寧を手に入れた途端、それを手に入れた喜びをかみしめると同時に、たちまち、それを手放す可能性に対する不安の卵が生まれてしまう。 ひとつの不安が生まれてしまうのではないかという予想が頭の中に出てきた段階で、その不安がやがて訪れるということに対する不安はもう既に始まっている。 ババロアが好きだ。 スプーンで壊すことが約束されている美しさだから。 失うことをはじめから受諾できている美しさだから。 でも、少しだけ退屈だ。

      • ばけもの或いはげてもの

        お行儀よく お行儀よく お行儀よく 今日も行進 お行儀よく お行儀よく お行儀よく 今日も行進 お行儀よく お行儀よく お行儀よく そんでもって 或る日突如崩壊 行儀悪く 行儀悪く 行儀悪く 黒目をくすませて 行儀よく 行儀よく 行儀よく 人を傷つける 考えない 考えない 考えない あーあ。 迷わなかった 迷わなかった 迷わなかった ツケが回ってきちゃったね お行儀よく崩壊 お行儀よいまま Rest In Peace 愚直な直行にはなむけを

        • 黒い安寧

          ふつふつと薄黒い観念 煙のようにふわりとひとまわりし 液体金属のように蝕み 怠いから逝かない それだけ 怠いから動かないから面倒臭いから逝かない それだけのこと 生く理由も生かない理由もなにもない どこに向かうわけでもないなんでもない なんでもないから苦しいだけ あてもないのに帰る場所があるのがときどき苦しい 草原で寝転ぶような穏やかさを 暗転する舞台のような爽快さを 寝息が重なるような心地良さを あなたに求めた僕が悪いの 一瞬で亡くすような綱渡り これでもやっとの

          感じること

          感じるということ。 感じるということは、「五感を介して得た情報によって生まれるもの」であることには違いない、のだろう。 じゃあなぜ僕たちは、「感じ」るときに、見えた・聞こえた・匂った・味わった・触れた、と直截的に表現しないのだろうか。なぜあえて「感じる」という言葉で表現してしまうのだろうか。 五感を介して得た情報ではあるが、五感を介したという認知が薄く、総合的な感覚でキャッチしたものであると朧げながら認識している状態の時(情報に対するソースが曖昧である状態で)、見る聞く

          気が抜けたジンジャーエール

          形骸化した未来が、琥珀色の中で揺らいでいる 出会ったり、別れたり、出会ったり、そんなに多くはないけれど 泡に包まれて、そして時間が経って 泡は消えていく ボトルの中に残された琥珀色のその中に 映るそれは未来なのか、いまの上に成り立つ何かなのか 起きたら雨が降っていた 今日も、昨日も、一昨日も 何も予定がないという事実は、少しの安心をもたらしてくれる 一昨日の夜から、昨日の朝にかけて 無我夢中で、何かを求めるようなその行為は、反面、取り憑いた何かを祓うようでもあった

          気が抜けたジンジャーエール

          人生はひもほどき

          人生について、紡ぐという表現が用いられることが度々あるが、どうもあまりしっくり来ない。 市役所で住所変更の手続きをしている時、ふと感じたこと。 それは、人生とはむしろ、不用意に絡まってしまった糸を、器用にほどいていく作業の繰り返しなのではないか、ということ。 少し変わった子供と言われてきた。注意欠陥がどうだとか言われたこともあった。 転出転入の手続きも、半年ほど伸ばしに伸ばし、必要性に追い込まれた行ったものだ。これといった問題もなく、手続き自体はすぐに終わった。 これま

          人生はひもほどき

          蜘蛛のように君を

          小さな蜘蛛を捕まえた 部屋の隅っこで、じっとしていた 蜘蛛をつぶせない僕は、A4の紙で器用にそれを掬い 窓の外に振り落とした 大人しい蜘蛛だった 目覚めたとき、夏の匂いがした 空の遠く、入道雲が生まれていた 何もない僕は、何かが始まることをひそかに期待し 朝からシャワーを浴びた どこかで何かを期待している 五月の日差しは目覚めのようで ただ漠然と、漠然とした何かが目覚めているような気がしていた 何もしたくない僕にとっても、何かが目覚めるその予感は、 むしろ歓迎すべき

          蜘蛛のように君を

          干潟の匂い

          昼下がり、重く湿ったシーツ 多分、ぬるいそれは、しかし肌に直接触れるとなると 少しだけ冷たい まどろむとき、あの干潟の匂いがした 胎内に回帰するような 潟の匂い 夏の午後の、どうしようもない昼下がりの 気怠くて、遣る瀬がなくて ただ何もなく、でも、だから、窮屈で さえぎるもののない、うみべの景色 見えない壁の、閉塞の質感 遠いむかしの、汐のかおり 遠く、うみべの街 そこにはかつて生活があり、僕のすべてもまた その時は、そこにあった 気怠い夏、気怠い永遠、遣る瀬のない日々

          エイリアンズのこと

          公団の屋根の上 バイパスの澄んだ空気 気が向いてふと立ち寄った、写真の展示会で びびっと打たれる、青天の霹靂 明らかに異彩を放つ一枚 自分の内面を代弁してくれる、情景の切り抜き そんな写真が、無造作に、乱雑に、しかしどこか丁寧なバランスで 誰かのカバンから落ちてしまったのか、 はたまた緻密に仕組まれたデザインなのか、 雨上がりのアスファルトの上に何枚も散らばっている 情景を一枚の限定された写真として切り取り、散りばめ 一定の背景の上に繋いでいく 散らかった写真の継ぎ

          エイリアンズのこと