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お針箱

四条通を歩いていて、あまりにも暑くてたまらず、ふらりとノムラ―テーラーに入った。あらゆる布を売っている、生地屋さん。ここに来ると、作れもしないのに何かを作りたくなる。型紙やレシピもたくさん売っているので、好きな布さえ買えば何でも作れるような気になってしまうから危険。

涼みついでに入っただけだけど、かわいい端切れが安く売っているのを見て、マスクでも作るか、という気になってしまった。マスク作りのレシピも「ご自由にどうぞ」と置いてある。先日、知り合いが手作りマスクをくれたけど、それがすごくかわいくて、売り物みたいに上手だったので、自分でも作ってみたかったのです。早速、置かれていたレシピをもらい、端切れ数種類と紐を買ってしまった。

昨年、結婚のお祝いに、みすや忠兵衛のお針箱をいただいた。着物柄のちりめんでできたお針箱の中に、同じくちりめんでできた針山、小物入れ、針、定規、ハサミ、指ぬき、などなど、裁縫セットがひと通り入っている。お針箱の内側は真っ赤なちりめんで、糸切狭には、小さな鈴がついてたり、小物入れは舞妓さんのこっぽりの形になっていたり、女子心をくすぐるかわいいお針箱。

夫のシャツのボタンが取れたとき、やっとあのお針箱を使える!と嬉しかったぐらい。そのお針箱を取り出し、チクチク縫い始めた。適当な性格なので、ミリ単位での寸法はそもそも無理だし、キッチリ裁断しても線のとおりにまっすぐ縫えない。知り合いからもらったみたいにキレイにはできなかったけど、自分で使うには十分。好きな柄で、かわいいマスクができた。うれしい。

夏休みにマスクを縫うとは、半年前には想像もしなかったな。


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