「ピローマン」観劇
はじめまして、思方(しほ)と申します。
唐突にnoteを始めました。というのも題名にある通り、「ピローマン」という衝撃的な演劇作品に出会ったのがきっかけでいてもたってもいられなくなったからです。
とはいえTwitter(まだXとは呼べない)は140字しか書けないし、とてもじゃないけどそんな簡潔に潔良く明快にこの舞台の感想をまとめられる自信もなく、うじうじしていたらついに千秋楽を迎えてしまいました。おめでとうございます…!
最近読んだ本に、推し(人に勧めたくなる何か)を語る時にはまず書いてみることが大事とあったので、伸び伸びと140字なぞに囚われず、ピローマンを観た私の気持ちを語りたいと思います。
少しでも読んでいただきやすいように、6つに話題を分けて書きました。
1.私の観劇について
2.登場人物(ネタバレなし)
3.あらすじ(ネタバレあり)
4.戯曲、役者の魅力
5.舞台セット
6.役者さんについて(成河さん、亀田さん・木村さん、那須さん)
の順で語っています。
長いのでよろしければご興味のある部分だけでも読んでみてくださいm(_ _)m
1.私の観劇について
私は高校3年間でおそらく100本近く観劇をしてきました。多い時では月に3.4回劇場に足を運んでいたと思います。そして学割が効かなくなったここ数年は20本観たか観てないかで、数ヶ月に1度観たら良い方…くらいに観劇数が激減しているのですが、その分観に行く作品も厳選しているつもりです。
食わず嫌いせず闇雲に演劇を観まくった高校時代の私と、社会人になってから観る作品を選りすぐんでいる今の私の観劇体験に懸けて断言するのですが、ピローマンは今までの全ての観劇の中で私のトップ3に躍り出た作品でした。(偉そうですね、というか前置きが長いですよね)
何がそんなに良かったのか、どう素晴らしかったのか、語っていきますね。そもそもまとめられる自信がなくツイートを諦めたので、簡潔さは期待しないでください!
まずは前情報として読んだ方が分かりやすいかとピローマンのWikipediaを引用しました↓
2.登場人物(ネタバレなし)
3.あらすじ(ネタバレあり)
4.戯曲、役者の魅力
この作品はある兄弟の物語で、弟の書く小説の危うさがスパイスになっているかと思いきや、なんと物語の軸だったんかい…!みたいな驚きがじわじわと押し寄せてくるのです。こんな人生に1度でも起きて欲しくない出来事を、お芝居だろうが役者は毎日繰り返すなんて想像も出来ない壮絶さです。
終始会話の勢いがすごいので食らいついて聞いていないと、というより聞かずにはいられなくなる熱量でした。
耳の穴かっぽじるどころか、私は目もかっぴらいて終始その場にいました。そう、"観客として客席に座っている"というより、"見てしまった、しかも目を逸らせない"という引力があります。それは勿論役者さん達の力ですが、要因は舞台そのものにもあると思いました。
5.舞台セット
客席で舞台を挟む、挟み舞台だったのですが、当然挟み舞台の場合、役者越しに薄ら向こう側から観ている観客が見えるわけです、鏡のように。
こういう状況だと、冷静になれそうな、常に客席と舞台の線引きが可視化されて没頭出来なさそうな印象がありますが、寧ろ逆でした。
というのも鏡写しのように向かいの観客が見えることで常に"演劇を観ている自分"を意識するかと思いきや、この作品は観客から傍観している自意識をも劇中に飲み込んでいくのです。
さっきから抽象的で申し訳ないですが、なんていうか、作りものだとか演技だとかを超えて、その状況、その事件を"見ることしかできない自分"として意識させられるわけです。だから我に返るどころか見てしまった、知ってしまった私自身も無関係ではなくなってくる感覚です。話が全然入ってこないですよねこれじゃ…🤦♀️
ピローマンの話をどこまで書いていいのか分からないのですが、膨大で難解なあの戯曲を最大限面白く、テンポよく、意地悪く演出されたのが今回の新国立劇場のピローマンなのかと思います。(これ以外にピローマンを知らないのでなんとも言えないのですが)
よくも、よくぞこんな残酷で希望のない話が思い付くな…と放心しましたが、希望のない人生を生きるという行為自体が希望になり得るのだと。それが私がこの舞台で1番受け止めたことです。
どんなに未来に希望を持てず希死念慮に苛まれたとしても、生きるを選択し続けることが如何に眩しいのか。全てが終わった時に気付くものなんですね。
6.役者さんについて
ここからは役者さんについて語りたいと思います!
今回、ピローマンを観ようと思ったきっかけは「タージマハルの衛兵」の時のコンビ、成河さんと亀田さん(残念ながら降板となってしまいましたが)が出演されると知ったからです。
「タージマハルの衛兵」はもう5年も前になりますが、未だ鮮明に2人の地獄も天国も、セットや音響、自分が座っていた客席も思い出すことが出来ます。そのくらいおふたりの造り上げた演劇は力強く、圧倒されるインパクトがありました。
以降、成河さん、亀田さんが出演される舞台は絶対に間違いないと確信を持って観に行くようになりました。
那須佐代子さんは、風姿花伝プロデュース公演の「ミセス・クライン」という作品で知った女優さんです。そしてこの観劇以降、風姿花伝プロデュース公演も毎年観るようになりました。
こんな風に好きになった作品に出演されていた役者さんの舞台は観たくなります。そして今回のピローマンも役者さんはじめ劇場、演出家、全ての要素によって絶対に面白いという確証がある作品でした。そしてその期待を超えてくる面白さでした。
成河さん
成河さんは劇中、本当にずっと喋ってました。喋るといっても弁解やら説得やらで体力を使う台詞です。日常ではこんな熱量が要される場面はそう無いですし、あの膨大な台詞量を操るのは、それを観客に聞かせる役者としての技量がある成河さんでないと務まらないんじゃないかと思います。そのくらいのエネルギーがありました。もっと上手く言葉にしたいのに…!
観客は最初は成河さん演じるカトゥリアン目線で物語に入り込みますが、ふと"おや、この男本当に黒じゃないのか…?"と信じられなくなってきたり、ミハエル(兄)とのシーンでは2人の絆に引き込まれてやっぱり感情移入したりと、成河さんの役の機微が1番観客に影響を与えたと思います。
幼少期が明らかになる回想シーンは、ある意味回想シーンに見えなくて演劇ならではでした。あそこまで役者の動線が生き生きするのは挟み舞台だから出来る演出って感じがして好き。成河さんの危ういテンションの台詞回し、両親の残酷さをも全てブラックジョークのような意地悪い演出。素晴らしかったです。
亀田佳明さん・木村了さん
そして亀田さんの降板に伴い、ミハエル役(兄)で出演された木村了さんですが、ほんっっっとうにびっくりしたのが、台詞回しや仕草が亀田さんそっくりだったこと…!!!!!亀田さんがミハエルを演じていた稽古動画とかからトレースされたのかしらと思うほど、私には亀田さんの要素が感じられました。(そうじゃなかったら大変失礼ですね、すみません🙏)
もちろん私は亀田さんのミハエルは観たことありませんが、亀田さんのお芝居はこれまで沢山観てきたので、ああ亀田さんならこの台詞こう言いそうだなあとか、この仕草口調亀田さんっぽいなあとかがあるわけなんですね。そして木村さんのミハエルにはそんな亀田さんが透けて見えてくるように感じたのです。これは私だけなんですかね…?どんな稽古をされたのか、亀田さんから引き継ぎのようなものがあったのかとても気になるところです…!
木村さんのミハエルは代役とはとても思えませんでした。急遽だったと思うので稽古期間も本来より短いはずですが、あの役は急に出来るものでもないですしやっぱりプロだなあと、その一言に尽きます…。
ミハエルの純粋故の惨さは、同情せずにはいられない過去を知ると彼に責任は無いと分かるし、もう誰の手に負えるのだと頭を抱えました。
誰になら救えて、どこに逃げ場があったのか。そんな希望のない環境で光となったのが弟カトゥリアンの書く物語だったんですね。そして光だったはずのそれがミハエルの中の根付いた闇の引き金となる。皮肉な物語でした本当。
那須佐代子さん
そして那須佐代子さん!彼女は私の憧れる舞台女優さんであり、大好きな劇場、シアター風姿花伝の支配人(芸術監督)さんです。那須さんの舞台は高校の時から何度も観ていますが、今回も舞台に上がった瞬間那須さんらしい特有の麗しさというか、舞台女優としての魅力が存分に生きた佇まいで嬉しくなりました!(もちろん役としては最悪なことをこれでもかというほどしていましたが…)
最後に
こんなに長くなりましたが、結局ピローマンの演劇としての魅力、物語の感想は気が済むまで語れたのか分かりません…笑 仮に語れたとてもう千秋楽を迎えてしまったので何も貢献出来ることは無いのですが笑 流石に言葉にするまでに時間がかかり過ぎました🤦♀️
今回の衝撃的な観劇体験によって、私は自分が如何に演劇に飢えていたのか思い知れました。どこがどうして演劇を好きなのかも思い出しましたし、人生の限り観たいし突き詰めたいと、改めて自分の根本から惹かれる存在に気付くことが出来ました。
これからも、大好きな新国立劇場、信頼する役者さんの作品を観続けたいです。そして近い将来自分もそちら側に立てるように精進します。
ここまで読んで下さった方がいれば、本当に本当にありがとうございました。
まだまだ言葉にしたい出来事やなんてことない気持ちも溢れているので更新していくつもりです。
それでは(⁎ᴗ͈ˬᴗ͈⁎)
思方
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