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"17,000件のエラーがあります"という警告メッセージを見た経理担当者はどうしたらいい?

決算期、それは経理の聖戦とも言える時期。

3か月ごとに四半期決算がやってきます。決算は1か月間続くことが多く、期間中はほかのどんな業務よりも決算業務を優先することになります。会社によっては30分単位でスケジュールが組まれており、予定が狂ってしまった場合、広範囲への影響もあり得るので、決算チームの一人ひとりは責任重大です。

そのため、すべての起こり得ることは事前にスケジュールに組み込むか、事前にリスクを潰しておくか、この二択しかありません。それでも想定外のことが起きてしまった日には、なぜそれも想定しておかなかったの?と、後日反省会が待っていることでしょう。

もちろん、ミスを許す余裕などありません。ダブルチェックでもトリプルチェックでも、事前にどうにかできることはそうすべきです。万が一、間違いが見つかった場合は、迅速な解決が求められます。決算とは、それだけシビアな行事であり、四半期ごとの一大イベントなのです。

そして、あの日がやってきました。

「17,000件のエラーがあります。データが取り込めませんでした」

画面に表示されたこの無慈悲なメッセージを見た瞬間、正直、目を疑いまた。ゼロの数、多くないですか?と思いつつ、数回まばたきしても数字は変わりません。次の瞬間、背中に冷や汗が流れるのを感じました。
「17,000件」って、どうすれば・・・?

事の発端

この大惨事の発端は、おそらく入社3か月の60代派遣社員、仮に「Aさん」としましょう。彼が改修作業してくれたファイルをシステムに取り込もうとした時、あのメッセージが突然現れたんです。反射的に「またかよ!」と心の中で叫びましたが、顔には出さず、冷静を装ってパソコンの画面をじっと見つめていました。

Aさんに依頼した改修作業は、入力ミスを減らすための入力制限と、シート同士の一致チェック用関数をエクセルに組み込むというものでした。Aさんは定年退職後も派遣として経理の仕事を続けているベテランで、即戦力としてチームに加わってもらったのですが…。

ところが、Aさんにはベテランゆえの頑固さも持ち合わせていました。たとえば、一致チェック項目の一つに、貸借対照表の「賞与引当金」と損益計算書の「賞与引当繰入額」をどうしても設定しなければ気が済まないと聞かなかったのです。いやいや、そこは一致しない場合もあるんですよ?と何度説明しても、彼は一歩も引きませんでした。※1

※1 貸借対照表の「賞与引当金」は未払いの金額を意味し、支払ったらなくなります。対して損益計算書の「賞与引当繰入額」はかかった費用を意味するので、支払い状況に応じて変動するものではありません。

結局、そのチェック項目を含めたファイルが完成し、関係各所に回すことに。案の定、「なんで問題ない処理でエラーが出るんですか?」という問い合わせが殺到。私は謝罪しつつ、こっそりそのチェック項目を削除する羽目に…

ようやくデータ入力を終え、システムに取り込もうとした矢先に、あのエラーメッセージが出たわけです。「またかよ!」と思わず心の中で叫びましたが、ここは大人の対応を心がけるべきだと、喉元まで出かかった怒りをどうにか飲み込み、無言で席を立ちました

ストレスが充満しているオフィスから離れて気持ちを落ち着かせようと、コンビニに向かいました。深呼吸しながら「いつものことだ、冷静に。どうすればいいかを考えればいいだけ」と自分に言い聞かせていました。

解決

席に戻ると、Aさんには「こちらで対応するのでなにもしなくていい」と責めずに伝えて、それからすぐにエラーの原因を探し始めました。まずはエラーの詳細一覧を出力し、システムのAIチャットボットに質問を投げかけ、返ってきた定型文の解説を読んでいました。

エラー箇所に一つひとつ手を入れては、システムに再度データを取り込む作業を繰り返し、3時間ほどかけてようやく原因が判明しました。Aさんが改修作業の際、エクセルフォームの列を挿入したり削除したりしていたせいで、読み込み対象の列が消えたり、参照がずれてしまったんです。これが、エラー件数17,000件という無慈悲な数字を生んだ原因でした。

原因がわかったことでホッとしたところで、上司と一緒に修正作業に取り掛かり、そこからさらに半日を費やして、ようやくデータをシステムに取り込めました。結局、まる一日を失った形になります。もちろん、決算スケジュールは動かせないので、残業は確定です。

Aさんには定時で帰ってもらい、翌日に原因を説明してフィードバックを行いました。私自身も次からは依頼内容をもっと慎重に見極めようと、脳内で一人反省会を始めていました。

決算は生き物

このように、決算というのは、生き物なんです。たとえどんなに事前に準備しても、どんなに予定通り進めようとしても、想定外のトラブルは何通りでも起き得るし、実際起きてしまうのです。その都度いかに迅速に対処し、遅れた分を巻き返し、決算発表のスケジュールを守るかが最大の課題であり、ある意味、その過程こそが決算業務の醍醐味でもあります。

今回のトラブルは無事に解決しましたが、次回の決算もきっと何かが起こるでしょう。けれど、そのたびに冷静に対応し、乗り越えていくしかありません。

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