正しさという暴力

中学生の頃の道徳の授業で、ビデオを見てその感想を書いて提出するという課題があった。

内容はおぼろげにしか覚えていないけれど、小田正和さんの「たしかなこと」という曲に合わせて(曲名を知らなかったので今調べた)、
家族写真らしきものが映し出されるショートムービー。
確かどこかの企業のCMだったんじゃないかと記憶している。

私は配られた原稿用紙に何も書かず、白紙で提出した。

「命は尊い」
「家族は大切なものだ」

こういう答えを書いて欲しいんだよね?
意図が透けて見えてくるようで、それはもう胸糞が悪かった。

家族の存在が足枷になっている人だっているし、
生きることに希望を見出せる人ばかりじゃない。

無理矢理一つの同じ型にねじ込もうとするから、壊れちゃうのにね。
少数派の叫びは、聞こえないふりをされがち。


倫理とか道徳とか正義とか、雲みたいにフワフワしていて実体がない。
前提条件が変われば、容易に形が変わっていく。
多数決で、たまたまたくさんの手が上がる方。そんな危うさでできているのが、きっと「正しさ」の正体。
唯一無二の正しさなんて、地球のどこにも存在しないんじゃないかな。

人それぞれ違う正しさを持って、それに基づいて生きている。

どこかで線引きしなければいけないのは分かっているけれど、正しさの押し付け合いが無くなることを、願ってやまない。

最後までお付き合い頂きありがとうございました。ほんの少しでもあなたの心が軽くなりますように。