#317 本当は「よりよくしたいだけ」なのに――人事のみなさんに感謝を込めて
竹内義晴の「これからの働き方」――この番組は、これからの働き方、組織作り、地域づくりの実務家、竹内義晴が「楽しく働く」をテーマに、組織づくりやコミュニケーション、マーケティング、キャリアデザイン、複業、テレワーク、ワーケーションなどの視点でゆるゆると話をしていく番組です。この番組が面白かった。あるいは参考になったらフォロー・コメントなどいただけると嬉しいです。
昨日は、人事の方に向けたメッセージをお話しました
昨日は、人事の方に向けたメッセージをお話ししました。一言で言えば「大変ですよね」と。
いやぁ、本当に大変だと思います。
小さな組織だったらまだしも、中堅とか、大きな組織になればなるほど、自分の「何かしたい」とか、「本当は、こうした方がいい」「こうすべきだ」って思っていること……それを「形にしよう」と思っても、なかなか形にできないのが実際のところですよね。
本当は「よりよくしたいだけ」なのに
本当は、もっと社員のみなさんが「前向きに働けるような環境できたらいいな」って思うんでしょうし、本当は、もっと「コミュニケーションが良好の会社になったらいいな」って思うんでしょうし、本当は、もっと「一人ひとりが自立しながら、自分の未来も考えつつ、会社という組織を生かして働いてくれたらいいな」なんでしょうし。
人事のような仕事をされていると――もちろん、いろんなタイプの人がいるので、必ずしもそうではないかもしれませんが――人を支援する仕事をされていたら、「本当は、こういうふうに変えられたらいいな」と思うことって、たくさんあるんじゃないかなと思います。
ですが、現実問題、目の前には「そうじゃない環境」がすごく広がっていますよね。周囲を巻き込むのが難しかったり、発信しても、誰も反応してくれなかったり、上司が「そんなことなんでやる必要あるんだ」って言われたり、経営層から「そんなことより、まずは利益だろう」みたいなこと言われたり。
そういった状況が現実なのではないかなぁと思います。
その結果、何かを「形にしよう」と思ってもできない状況の中で、毎日悶々と過ごす。「本当は〇〇できたらいいのに。でも……」という環境が、現実で。
その結果、「もう、会社やめようかな」なんて思う時もあるかもしれません。
そんなに簡単に解決するなら、苦労しないよ
そういった状況の中で、「その場合はこうすればいいですよ」なんて言われても、「そんなことで本当に問題が解決するんだったら、苦労しねぇよ」というのが現実だと思います。
いや、本当にそうだなと思います。
時代とか、環境とかがまだ追いついていない時に、何かを発信したところで、何かを「やりたい!」と言ったところで、周囲が反応してくれない。共感してくれない。何言ってんだと言われる……それが現実だと思うんです。
僕も毎日悩んでいる
ただ、僕のこれまでの経験をよくよく考えてみたら、「ずっと、その連続だったな」と思ったんですよ。いや、なんなら「いまもそうだな」って。
たとえば、僕がいま考えていることは、「組織の心理的安全性」とか、「今後のキャリアは一人ひとり自律していった方がいい(キャリア安全性)」とか、「今後、地域の企業は人がどんどん減っていくから、地域の企業に都市部をはじめとした人たちが複業のような形で働くことができたら、地域の企業にとっても、これまでの経験を生かして会社の外に接点を作りたいと思っている人にとっても、きっといいはずだ(地域複業)」みたいなことです。
これらが、将来きっと必要になるのは間違いない。
だけど、それを形にしたり、現実にするのはすごく難しい……という意味で、僕も毎日、悶々としながら「どうすればいいんだろう?」ってすごく悩んでいます。
過去の経験を思い出したら「これまでもずっとそう」だった
ですが、昨日ふと、過去の経験を思い出したんですよね。過去の経験というのは、もうにっちもさっちもいかない、管理職を任された時のことです。
目の前にあったのは、すごく働きにくくて、プレッシャーが多くて、しかも上の人たちに意見も言えない。しかも、プレッシャーばかりかけられて。
「もう、こんなところで働きたくない!」って思って、「いかに逃げるか」しか考えてなくて。
そこで「これだけやって、やめようと」と思ったんです。「やめるなら、もうちょっと働きやすい環境だけ作ってやめよう」と決めて。
そして、自分でコミュニケーションを勉強したり、いろいろ調べたりした結果、なんとなく「こうすればいいんだ」と思って。
ただ……学んだことを実践してみたけれど、全然うまくいかなくて。
「それでも」と思って、毎日「どうしたらいいんだ。どうしたらいいんだ……」って悩みながらやってきました。
閾値を超えたときに訪れる「上昇する感じ」
で、毎日悩んでいるんだけれども、ふとした瞬間に「あれ、ちょっといままでより変わってきたかも?」と思ったことがありました。
このような、何かを超えた瞬間に「あれ? 最近、なんかちょっと、以前と変わったな」って思える一線を、「閾値(いきち・しきいち)」と言います。
目の前の現実は、にっちもさっちもいかないし、何の解決策もないんだけれども、ある閾値を越えた時に「何かが変わる」っていう経験を、何度かしてきました。
その経験を思い出したら、「それでいいんじゃないか」と思ったんですよね。「目の前にできることがあるならば、とりあえずそれをやる。それがダメだったら、別のことやってみる」っていう。
「それだけでいいんじゃないか?」って。
「とりあえず、やる」ために必要なこと
もっとも、「とりあえず、やる」にしても、そこには「本当は、こうだったらいいな」っていう理想が必要かもしれませんね。
毎日辛いんだけど、理想があるとやり続けられる(「ここから逃げる」という理想でもOK)。
そんな経験が、管理職時代にあって。その結果「人を支援する仕事も面白いな」と思うようになって、エンジニアからキャリアを変えたという経験があります。
そういえば、いまも同じ
そういえば、中身は違うんですけど、いまもやっていることも同じかもしれません。
たとえば、2012に、メンタルの課題を解決するために、地域の資源を使って農作業をやったり、自然体験をしたり。そうすることで心が癒されたり、自分自身を取り戻していったり……みたいな形で、自分を回復しながら働く環境ができたらいいなぁって思ったことがあったんですよね。
でも、当時そんなこと言っても誰も理解してくれなかったし、「そういうの、いいっすね」と言われたことはあったけれど、どうしたら形にできるのか、全然わからない。
それでも、解決策は分からないけれど、とりあえず、目の前の自分ができること……たとえば、イベントで農作業の体験をやってみたり、あれこれやっているうちに、急に世の中がワーケーションなんて言いだして。
「あれ? なんか、急に形になりつつある?」みたいな。
ここに至るまでには、それこそ何年もかかっているんですけどね。それでも、理想をぶらさずに、「とりあえず、いまできることを」とやってやれば、いつか、閾値を越えた時に、ふっと上昇する……ということがあったなぁって。
そう思うと、「それでいいんじゃないかな」って思ったんです。どんなに大変なことでも「とりあえず、やり続ければいいんじゃないか」と。
というわけで、今日は「やり続けるのは大変だけど、とりあえずやり続けよう」という話をしてみました。じゃあ、今日の話はこれで終わりにします。じゃあね。バイバ~イ!