#274 キャリア安全性・主体性を深掘る2ー社員が個人事業主になると起こる成長
竹内義晴の「これからの働き方」――この番組は、これからの働き方、組織づくり、地域づくりの実務家、竹内義晴が「楽しく働く」をテーマに、組織づくりやコミュニケーション、マーケティング、キャリアデザイン、複業、テレワーク、ワーケーションなどの視点で、ゆるゆるとお話をしていく番組です。この番組が面白かった、あるいは、参考になったらフォロー・コメントなどいただけると嬉しいです。
キャリア安全性・主体性を深掘っています
昨日はですね。「キャリア安全性・主体性を深掘る」というお話の1回目で、「社員の個人事業主化」という話をしました。
社員のキャリア安全性や主体性を高めるためには、何か「スキルを学んで……」みたいなことも、もちろん重要なんでしょうけど、主体性って、何か「スキルを学べば……」とか、「知識を身に付ければ……」などというよりも、仕事や生き方に対する「あり方」とか、「マインド」の部分の影響が非常に大きいかもしれません。
こういった、あり方やマインドを育てるのは、何かを「教えれば育つ」というものでもありませんよね。
なので、「どうしたら、キャリア安全性や主体性を高めることができるのか?」という問いは、企業にとっても、個人にとっても難しい問いかもしれません。
一方で、その、もっとも手っ取り早い方法として「個人事業主化する」っていうのは、1つのアイデアなんじゃないか? というお話をしたんですよね。
その例として、昨日はタニタさんの例をあげました。
タニタさんでは2020年でしたか、「日本活性化プロジェクト」という取り組みで、社員のみなさんを個人事業主のような扱い……扱いというと、ちょっと表現が違うかもしれませんが、個人事業主として会社に関わっていただくことで、より、主体性を高める。そういった取り組みをされていらっしゃいます。
僕も社員から個人事業主に契約を変えた
で、昨日、この話をして、ふと自分の経験を思い出したんですよ。「何を思い出したのか?」というと、「そういえば僕自身も、以前勤めていた会社の仕事をそのまま続けながら、社員から個人事業主に契約し直したんだったな」って。
僕はもともと、プログラマー・エンジニアだったんですけど、いろんな事情があって――この話をしだすと、またそれで長くなっちゃうので、以前の番組を聴いていただければと思うんですけど――「会社をやめよう」と思ったんです。
だけど、当時の社長から「辞めるのはいいけど、起業する準備はできているのか?」と。「準備ができていないんだったら、もうちょっとウチで働け」と。「準備ができたら、送り出してあげるから」と言われて、契約形態を社員から個人事業主に変えてもらって、仕事自体はまったく変えずに同じ仕事をするようにしたんですよね。周囲の同僚には、「会社をやめて、個人事業主として契約した」って言わずに。いままで通りに仕事を続けたんですよ。
つまり、契約形態はタニタさんで取り組んでいる内容と同じですよね。
僕自身、社員から個人事業主に契約を変えた経緯があったので、「自分の経験を話してみよう」と思って。
僕の場合は、退職が前提だったけれど、退職しないのもアリ
僕の場合、近い将来会社を退職するのが前提で個人事業主になったんですが、タニタさんのように、いい関係性を会社と構築しながら、個人として会社と関わるっていうのもアリだと思います。
個人事業主になると、間違いなく主体性は高まると思います。
個人事業主になると身に付く成長
どんな主体性が身につくか? というと……
お金のスキルが身に付く
まずはね。お金の管理面ですよね。
個人事業主になると、間違いなく、毎月請求書を発行して、会社からお金を振り込んでもらわないといけなくなります。また、これからの確定申告の時期になりますが、毎年、確定申告をするようになりますから、お金の実務面のところが、かなり身につくと思います。
いままでより仕事をやるようになる
次に、いままで以上に、仕事をちゃんとやるようになるんじゃないかな、と思います。
僕自身もそうでしたが、個人として契約してもらっているから、結果を「ちゃんと出さないといけないな」って気持ちになります。毎年同じことやってればいいっていうわけではなくなるので、主体性や自律心が出てきました。
将来を考えるようになる
あとは、将来を考えるようになりましたね。ずっと「おんぶに抱っこ」していればいい、という環境ではなくなりますから。
もちろん会社との関係はいい関係なんですよ。いい関係なんだけど、「いつどうなるかわからない」というのはるから、将来を考えるようになりましたよね。
その結果、資格を自分のお金で取りましたし、いままで以上に「仕事をちゃんとやろう」って思いました。
信頼関係が構築できた
ほかには、当時の上司と、より信頼関係を構築できたというか、一生懸命仕事をするから、結果的に信頼関係も構築されていたと思います。「会社と」というよりは、「個人と個人の信頼関係」です。
「会社のありがたさ」を知った
あと、「会社のありがたさ」を知りましたよね。たとえば、確定申告しかり、保険とか、年金とかしかり。会社員のときは、こういった雑務を考える必要がなかったから。
だけど、個人事業主になることによって、確定申告とか、保険とか年金とか「社会って、こう動いているんだな」というのこともわかるし、いままで肩代わりしてくれていた会社って「ありがたいな」ということを知る……そういった経験が、主体性を高めていくんだと思います。
複業推進よりも、社員の個人事業主化のほうが取り組みやすいかも?
僕の経験では、社員の個人事業主化は、複業推進よりも実践しやすいかもしれません。それは、会社にとってもそうだし、個人にとってもそうです。
複業って、制度を作ることはできると思うんですよね。「複業してもいいですよ」って。だけど、それを実際にできる人って、まだ、ほぼいないと思うんですよ。つまり、「複業の制度はあっても、実際にやっている人がいない」という状況です。
「なぜ、そうなるのか?」というと、週の何日かだけ複業のような形で働くのって、さまざまなスキルもいるし、時間のマネジメントもいるし、結構大変なんです。
また、複業案件も、プログラマーとか、デザイナーとか、個人の力量が発揮できるような仕事の場合はあるかもしれませんが、会社に所属しながら複業ができる人って、まだまだ、そんなに多くはないと思うんです。
一方で、社員の個人事業主化だったら、複業よりも実現しやすいと思います。
「社員の個人事業主化」の注意点
「社員の個人事業主化」の注意点があるとしたら、安易に「業績悪くなったら切るよ」みたいな関係性だと、信頼関係を損なうので、あくまでも「社員の成長のために実施する」「おたがいの、成長のための取り組みだ」ということを、会社側もそうだし、社員個人もそうだし、お互いに認識を合わせておくのは、非常に重要ではないかと思います。
あとは、もし、想像と違っていたら「社員に戻ることもできる」みたいな制度設計にしておくと、チャレンジとしてはやりやすいんじゃないかな、と、実際にやってきた人間としては思います。
というわけで、今日はキャリアの安全性・主体性を深補るということで、「社員の個人事業主化は、社員の主体性を高める上で案外いいじゃないか」という話をしました。
では、今日の話はこれで終わりにします。じゃあね、バイバ~イ!