低温調理を勉強する
『低温調理の教科書』今城 敏・著 / カナリアコミュニケーションズ(2022)
このnoteでも時々紹介しているハム作りの加熱殺菌は、低温調理の方法を用いています。高い温度だといわゆる煮豚になってしまうので、しかるべき温度で加熱を行うわけです。他にもいろんなレシピで低温調理が行えますが、私の場合は、ほぼローストビーフとハム作りで行っています。
始めるにあたって随分いろいろな文章を読みました。個人のブログ、メーカーのサイト、書籍など。内容は本当に千差万別で、「えっ? そんな簡単でいいの?」というものから「ふむ、そこまで必要ですかの?」と腕組みをするものまで、全く感覚だけで信用できないものから数字をしっかり出しているものまで様々です。プロアマ混合で様々な情報が溢れています。
一応辿りついたのが食品安全委員会のガイドラインです。
これをしっかり行うために低温調理器や中心温度計を使用し、また消毒、手袋の使用、食材の選定から温度管理など出来るだけ慎重に行うようにしてきました。この間もより信頼できそうなサイトや書籍を読んでは修正を重ねるようにしています。概ね正しい方法で行って来たかな、とは思います。
本書に出会ったのは最近です。最初にこの本一冊あれば事が済んだな、と思いました。あるいは、これから始めようと思っている人やたいして調べもせずに感覚だけで行っている人は、読めば低温調理を行うのを止めようとさえ思うかも知れません。家庭で自分たちだけ食べる分を作る人も、不特定多数に料理を提供する飲食店の人にもおすすめできる一冊です。
ここでは、日本の安全基準だけでなく、より厳しい米国やヨーロッパの基準も紹介されています。特に豚肉におけるE型肝炎ウイルスに対する加熱殺菌基準の違いを知ることが出来て、それだけでも本書を買った意義があったと思います。ハム作りにあたって、これまで厚生労働省の示す温度をベースにプラスして加熱していましたが(65℃/30分ほど)、今後はイギリス基準(65℃/48分)まで上げようかと思っています。
また、ローストビーフについても、日本では「特定加熱食肉製品」の表が示されていますが、厳格な食材管理や保存の扱いがセットという条件があり、個人で行うならやはり通常の食肉の加熱殺菌条件を当てはめた方が良いことも分かりました(75℃/1分と同等)。今後は61℃で53分というのをベースにしようかと思っています。
本書を読んで、「この基準で行えば大丈夫」だと思いました。もちろん、衛生や管理や扱いなど慎重に考えながら緊張感を持って、自己の責任のもとに行うことは言うまでもありませんが。
科学的なことを踏まえた信頼し得る情報をもとに、おいしい料理を作ってみたい人は、ぜひ本書を一冊持っておかれたら良いと思います。