「命の選択」にしないために
ここ数ヵ月、0~29歳の自殺者数が対前年比で大幅増しています。この傾向は20歳未満の女性に特に顕著で、2020年7月から10月までのコロナ第2波では、20歳未満の女性の自殺者数は対前年比49%も上昇しているそうです。
0歳から29歳の男女において新型コロナウイルスに感染して亡くなった方の報告は2名です(厚生労働省オープンデータ)。この年齢層においては、増加しているのは「自殺>コロナ感染による死亡」だということは明らかです。
コロナで亡くなる方がいるのは確かに問題です。可能な限り防がなくてはいけないし、防ぎたいと私も強く思います。
その一方で、繰り返しになりますが、0~29歳のこども・若者たちにとっては、コロナ感染で亡くなる方以上に、自殺で亡くなる方が増えているのが実情です。
私はいま教育機関(大学)で働いていますが、学生たちのメンタルヘルスの状況は、かなりシビアな状況に迫りつつあると感じます。きっと多くの大学関係者が同様の感触を持っているのではないでしょうか。(ぜひコメントなどいただければと思います。)
だとすれば、大学と言いますか、私たちの社会全体が、結果的に「目の前で増加する自殺によって亡くなる学生の命」と「コロナ感染によって亡くなる方々の命」の選択にいままさに迫られているように感じます。
何が言いたいのかと申し上げますと、自殺によって亡くなるこども・若者たちの命とコロナ感染によって亡くなる方々の命、どちらも大切な命であり、どちらも守りたいということです。
ただ、こども・若者たちの命の話は、私が知る限り、その重大さに比べれば、あまり話題に挙がらない、ケアされていない、と感じています。
第3波で、大変な状況が起きつつあります。
私の専門分野である大学中退予防の観点から少し具体的な話をしますと、2020年度の大学中退者数は、現時点では前年度より減少傾向になっています。やや不思議な現象かもしれません。この件については先日noteで解説を行いましたが、おそらく雇用・経済の悪化により、中退後のキャリア形成のリスクを従来より高く感じる学生が増えているものと思われます。
平時であれば中退したい状況だけれども、雇用・経済の悪化により中退するのも怖い、リスクを感じる、そういういわば八方塞がりの状況に陥っているのではないかということです。
このような状況が長期化すれば、メンタルヘルスに悪い影響を与え、自死という選択を取る学生もいることは、これまでの学生支援の蓄積から明らかです。
家計が大きく悪化した学生もいます。そのようなご家庭では、夫婦喧嘩が増えているかもしれません。「自分はいない方が良いのでは?」と考える学生もきっといらっしゃるだろうと思います。一人や二人ではなく、もっと多くの学生が、似たような状況に置かれてはいないでしょうか。
3度目になりますが、29歳以下でコロナ感染で亡くなった方は現時点で2名です。コロナ感染による健康上のリスクが高い方々の命を守るために、直接的にも、間接的にも、若者・学生たちは我慢を強いられています。
若い人たちの命にも、今以上に目を向け、社会的なサポートやケアに力を入れていただければと、一人の教育関係者として強く願います。
想いを広く共有できればと思い、言葉にすることにしました。
貴重な週末の中、たいへん「重い話」に最後までお付き合いいただき、感謝を申し上げます。