桜さえ無ければいいのに…
大和男子が桜をしみじみと見つめている。濃紺のスーツ姿だけれどこの男は唯ものじゃない。平安時代の歌人、伊勢物語の主人公とされ、美男の代名詞とされる在原業平だと、俺は見抜いた。
「世の中に たえて桜の なかりせば 春の心は のどけからまし」 彼が歌を詠んだ。やはりそうだった。在原業平だ!
世の中に、桜さえなければ春はどんなにいいだろうなぁ…と彼は詠う。 俺もそう思うよ。
はらはらと散る桜には、もののあわれを感じる。桜はこの世の美しさを超えた存在なんだ。諸君は桜の花の奥に闇がある事に気づかないだろうか?
桜は人々を不安にさせ、狂わせもする。このコロナ禍では桜の魔力は一段と凄まじい!花の下での人間たちの狂宴を見れば納得するだろう。
満開の桜の噓寒さ…束の間の生の絶頂と、忍び寄る死の影… 桜への日本人の美意識には、独特なものがある。
風に吹かれ、雨に打たれて散る桜には、理念を越えての潔さに武士道の精神を見る!
日本人の精神の基盤、それは無常観、諸行無常、奢れる者は久しからず… 将に武士道…!
武士道の神髄は死に方にある! 願わくば 花の下にて 春死なん…なんだか一人で乗りまくっていたら、 目が覚めている事すら気が付かなかったよ(笑) あの在原業平は何処へ行ってしまったんだろうね。