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その男 ジミー・オズボーン…

その男は まるでマシンガンのように世間に疑問と侮辱を叩きつける。  俺の前に佇む、その男 ジミー・オズボーン

すでに確立された社会に疎外された青年だ。その怒りをぶつけようがない。その怒りの矛先を爆発させる力もない。行動に移しえないのだ。

「オレ達の世代の人間はさぁ、何か立派な主義主張の為に死ぬ事もできねぇし、そう云う事は、オレ達がガキだった頃に終わっちまったのさ」

「今はもう、人をドキッと感動させる主義なんか残っちゃいねぇ。どうせ何も残っちゃいないなら、せめて女にでもさ、首を絞めてもらった方がいいかもな」

今、こんなジミーのような男がゴロゴロいる。別に数十年前のイギリスでなくても…今の日本には箒で掃き捨てたいほどいる。

怒りや不満や疑問をぶつけるが、行動はしない。既成の権威へ、陰では怒りを爆発させるが、表には出さない。特にこのネットの時代は、彼らを隠す。彼らも隠れる。

イギリスの劇作家、オズボーンの代表作品 「怒りを込めて振り返れ」に登場するジミーのような若者が、今の日本にはいくらでもいる。

特にこのコロナ禍で、忘れ去られてる階級の若者たちに…男も女もない。 時間規制された深夜の繁華街…缶酎ハイ握りしめて屯する若者たち…

この時代のジミーは男も女もない。みんながジミーなんだ。夜景の中に蠢く彼らを見つめながら、俺は独り言を言っている。

あのイギリスは、若者たちの無気力さから衰退した。国家として何の魅力も無くなってしまった。

今の日本もイギリスの背中を追っているとしか、俺には見えない。若者だからこそ、行動力を見せつけてほしいのに…

ミャンマーや香港やウイグル族の若者のように…            遠くで聖火を大事そうに掲げて、はしゃいでいる集団が見える。          俺は缶ビールを握りしめて、朧に霞む若者たちを見つめている。     

そして、はたと気が憑いた! 俺は数十年前にアルコールと縁を切っていた筈だ!…すると…これは…


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