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旅の記録を残してみる #10 ~徳島編 寝れないから旅に出る~ 

何となしの切符と不眠

令和4年3月2日、18歳。平凡な大学1年生を終えようとしていた。時はコロナ禍。大学生活、バイト、何もかもうまくいかない。精神的に追い詰められていた。
この頃、春日市の実家に住んでいたが、もう限界だった。親にもろくに相談せず、大学そばの家を契約した。家賃は2万円、引っ越し予定は3月10日頃。

私は昔から寝つきが悪かった。完全な夜型で、一度目が覚めるともう眠れない…なんてこともしばしばあった。この頃は尚更だ。

1年前にコロナが来てから、旅には出ていなかった。…コロナなど、興味もなかったが。月に15万円近く稼いでいた当時、お金には少しだけ余裕があった。少し値上がりして、確か12,500円。1日2,500円なら、移動手段としても、ロマンを買う金としても、安い。そんな2月の下旬に、久々に青春18きっぷを買っていた。行く当てなんてあるわけがない。

その日は、まったく眠れなかった。3時くらいになったら大抵眠れるはずだが、3時半、4時半と時間が過ぎていき、焦りが収まらなかった。

そして、徹夜のまま始発で旅に出ることにした。当然、独りである。

再び、旅へ

四国方面を目指す

令和4年3月3日、最寄りの南福岡駅まで、寒い中を歩いた。歩きながら、四国方面へ行こうと決めた。理由は単純で、行ったことが無かったからだ。

そして、早朝の電車に乗り込み、北上する。

見慣れた下関

中学2年生の頃は小倉で既に旅を感じていた。回数を重ねるにつれ、山陽本線さえ見慣れた電車と化していく。
ただ、下関発の山陽本線を終着の岩国まで乗り通すのはこれが初めてだった。遠い。下関・岩国間は非常に長い。

防府の海が心に刺さる

ラピスは高校卒業と同時に航空自衛隊に就職した。教育隊は防府にある。そんなことを考えながらここを通った。

徳山駅にて

徳山駅に30分ほど停車するということで、せっかくだから降りてみた。既に11時だ。この電車は長すぎる。合計で3時間半ほど乗りっぱなしだ。別府に行った時と乗車時間が変わらない。

岩国

結局、岩国駅に着いたのは何時頃だっただろうか。遅延していたのか知らないが、12時は確実に過ぎていた気がする。
そして、山陽本線の中でも極めてきれいな電車、RedWingに乗り、広島方面へと進む。

阿品駅

1月にラピスと厳島神社に行ったときに、阿品駅を使った。それを思い出す一人旅である。

広島駅

14時半頃に広島駅へ着いた。なんだか、この時点でかなり不安になった。
特に方向も決めていなかったが、せっかくなので今まで行ったことのない四国に行こうと決める。岡山から瀬戸大橋を通って香川へ行き、徳島へ向かうことにした。

田舎の風景が続く

そして、糸崎駅で乗り換える。この時点で16時を過ぎ、電車通学の小中学生たちと一緒に電車に乗ることになる。

糸崎

乗るのは再び古い電車へ。「~~じゃけえ…」「~~じゃろ?」そんな言葉が聞こえてきて、広島を感じる。

大門駅を過ぎると、笠岡駅からは岡山県である。そこから少し進むと、倉敷市へと入る。

倉敷のどこか

そして、岡山駅に到着。既に18時である。移動だけで過ごしている。

瀬戸内海を渡る

岡山駅

岡山駅を出て、少し散策するも、大して何かを見ることもできなかった。
瀬戸大橋線に乗り、香川へ向かっていく。このときは、さすがに興奮した。

嗚呼美しい

瀬戸内海の凪を眺めながら、初めて四国へ行く。北海道、本州、九州、四国の中で、唯一四国だけには行ったことが無かった。期待値が高まる。

高松駅

19時頃、高松駅に到着した。駅に堂々と灰皿が置いてあるのに驚いた。博多駅ですら喫煙所を廃止したというのに…。
そして、徳島へ向かう電車を探し…。

!?

想定外。ディーゼルである。しかもかなり古く、人もほとんど乗っていない。
この汽車が動き出して、恐ろしいことに気づいた。単線である。しかも、一駅ごとに電車を待ち合わせ、10分以上は停車している。

暇すぎて、外に出てみた

電車はすべてボックスシート。同乗のおじさんたちは、皆靴を脱いで足を乗せて乗っている。ホームに灰皿があるので、一駅ごとに、タバコを吸いに行く。そんな感じである。外は真っ暗で何も見えない。

21時頃だったと思う。明らかに旅をしている爺さんが近くに座った。青春18きっぷで旅をしていると、旅人を探す勘は鋭くなる。
話を聞けば、その爺さんは千葉からやってきたという。しかも、テントで寝るそうだ。一緒にテント泊をしないかと誘われたが、携帯が充電できないことを理由に断り、爺さんは途中で降りて行った。

どうせ10分くらい停車するのだからと、別の駅にて、自動販売機で飲み物でも買おうかと思い、ホームに降りた。何もない。うろうろと探していると、運転手さんが声を掛けてくれた。徳島駅以外のほとんどの駅には、ホームには何もないという。全駅通過して徳島に行ってほしい、なんて冗談を言ったところ、運転手さんも俺だってそうしたいと話してくれた。

徳島駅

そうして、22時を過ぎてようやく徳島駅に着いた。仕方のないことだが、駅前だというのにほとんどの店が閉まっている。

徳島ラーメン

特に名産品も思い当たらず、徳島ラーメンへ行くことに。店の名前も覚えていないが、旅の疲れと空腹には沁みる味だった。

もちろん宿など取っているはずもなく、近くのネカフェに向かう。このとき18歳。初のネカフェ泊だから、鍵付き完全個室を選んだ。気絶するように、0時には寝ていた。

長すぎる帰路へ

5時半にはネカフェを出た。旅には睡眠不足がつきものだ。そもそも、福岡を出た時点で徹夜である。

徳島城跡の中

徳島城跡の中を歩きながら、徳島駅を目指す。城の門のそばでサイファーをしている連中がいたが、素通りする。

徳島駅に着いたのも、まだ6時前である。始発に乗って、香川方面へ帰っていく。

徳島市内

空が白みだす中で外を見ると、まったく印象の異なる世界が広がる。九州と違う土地が広がる。

海の見える町
小学生たちが登校している

香川県に突入し、海が良く見えるようになった。海の見える田舎町…こういうところに一度住んでみたい。

そして、高松駅に8時頃到着した。

駅前のうどん屋

香川にはうどん屋が非常に多いようだ。駅前の店に入り、かけうどんを注文。旅情と哀愁溢れる店舗であった。

そして、再び瀬戸大橋を渡る。ここからは、特に取り上げることもない。岡山に10時、福山に11時、岩国に14時頃である。

岩国コーヒー

岩国駅で、喫茶店に行った。この喫茶店には、今後よく寄ることになる。
再び、下関までの長い電車に乗ることになった。

暇が哲学を生む

電車の窓の落書きを見て、考え事をする。誰がこれを書いたのだろう。どれくらい昔のものが残っているのだろう。

3時間も4時間も過ぎ、その後の記録は何も残っていない。

青春18きっぷは5回券。あと3枚残っている。それを使い切ることも考えようと、友人と話していた。

~続く~

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