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あなただけが知らないこと

先日友達カップルといた時のことだ。二人が妙な会話を始めた。
A「うーん、どんな動物?」
B「猫」
A「どんな天気?」
B「うーん、夏のカンカン照り!」
A「どんな家電?」
B「炊飯器!」
A「8!」
B「残念6でしたー!」

知らない世界に迷い込んでしまったようだった。
全て知っている言葉なのに何を言っているのか分からない。
しばらくしてやっと何かのゲームをしていると気付く。
アキネーターのようなBが予め設定したキーワードをAが推測するゲームだろうか。
でも猫とか家電とか言っている。8とか6って何?
僕は混乱しながらある種の恐怖を感じた。それは自分だけが知らないという恐怖だ。
世の中に自分だけが知らされていない当たり前の事実が存在するのではないか?時々そんな恐怖に陥ることがある。
 

世にも奇妙な物語にズンドコベロンチョという話があるそうだけれど、それと同じだ。
記憶を遡ってみると恐らくはサンタクロースについてからだろうか。
でもサンタクロースについては殆ど同世代の子供たちは知らないところから徐々に知っていく。自分だけが知らないという状況ではない。
「子供がどうしてできるか」も同じかもしれない。
 

他にもそんな知らない恐怖を味わったこと出来事があった。
名前は伏せるけれど、あるアプリゲームについてだ。
そのゲームはマップ上に表示されるお宝を探すというものだ。
恐ろしいのはゲーム内で探すのではなくて現実世界で探すのだ。
ゲームのマップに表示されるピンの位置をもとに隠されたお宝を探す。
お宝というのは比喩で、実際は瓶の王冠だったりメントスの箱だったりする。分かる人だけにそれと分かるトークンのようなものだ。

隠し場所は公共の場所である。ベンチの裏だったり何かの隙間だったり、探そうと思わないと見つからないような場所に隠されている。
つまり知らないだけで探せば誰にでもアクセスできる。
人通りの多い場所、例えば渋谷駅なんかに行ってそのゲームを開くと相当な数のピンが表示される。
つまりそれだけの数のお宝を誰かが隠しているのだ。
 
友達にこのゲームを教えてもらった僕は試しに最寄り駅でそれを開いた。
ピンが表示される。
僕の最寄り駅というのは新宿から1時間半は下るような田舎である。
そんな田舎の駅にもお宝が隠されているのだ。
探して見るとお宝はあった。ベンチの裏側にマークの付いた王冠が磁石でついていた。
恐怖した。僕が知らないだけでお宝はずっとそこにあったはずなのだ。
慣れ親しんだ最寄り駅が急に遠く、知らない世界に迷い込んでしまったような気持ちだった。
知らないだけで、そこかしこにお宝は隠されている。
 

ちなみに弟はクレジットカードのワンタイムパスワード生成器が怖いと言っていた。
何かの折にその話をしたところ中々その存在を信じてくれなかった。
写真を見せても「手の込んだ冗談でしょ」と言った。
僕はワンタイムパスワード生成器については恐ろしいと思わない。
 

冒頭で書いたゲームのルールはこうだ。
まず回答者が1から10までの数字を思い浮かべる。例えば5。
質問者はその数字を当てるべく質問をする。
例えば「(その数字を言い表すなら)どんな動物?」
回答者は思い浮かべた数字、10段階中5に相当する動物を答える。
数字は10が最高に好きで1はとても嫌いという意味だ。
5は中間なので、好きでも嫌いでもない動物を回答する。例えばニワトリ。
その流れを何回か繰り返し、質問者は回答者の思い浮かべている数字が分かったと思ったら宣言する。
質問者を複数人にして順番に質問し、一斉に宣言すると楽しい。
 
こうして一つだけ知らないことが減った。
もしこの世界がマトリックスだったらどうしよう。

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