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テレクラとマチアプ

私が新社会人の頃は、まだススキノにもテレフォンクラブ(テレクラ)があって、営業の先輩と飲んだ後に、よく寄ったものだった。

テレクラとは、端的に言うと男女のいかがわしい出会いをプロデュースする場。まだケータイ電話も普及していない時代だから、見知らぬ異性と出会う手段と言えば、街でナンパするか、合コンするか、その2択しかない。生身のカラダでぶつかって行くしかない。そんな時代に、顔の見えない相手と電話だけのコミュニケーションで、出会いに持ち込む、ある意味、話術虎の穴的な存在であった。

テレクラに入店すると、受付で部屋を指定される。いくつもある小部屋の1つに入る。一畳に満たない部屋には椅子と机が置かれ、机上には電話機が一台。その電話が鳴るのをひたすら待つだけ。それがテレクラ。

私の経験上、テレクラに電話をかける女性の6割はサクラ、2割はウリ、2割は話をしたいだけ、だった。テレクラに入店する客のほぼ100%が、素人女性とのいかがわしい行為目的であるのだが、そのニーズに完璧に応える女性の存在など奇跡に等しい少数派で、いかに巧みな話術でアポイントに漕ぎ着けるかが試された。アポを取れたとしてもすっぽかされることも多い。宝くじレベルで思いを成就する男の数少ない成功体験が伝説となり、男たちの間で広まる。その伝説が、溜まりに溜まった男の欲望をテレクラに吸い寄せるのだった。

その頃はすでにマーケットとしてのテレクラは衰退期に入っていて、テレクラという施設がなくても同様の出会いが可能な、ツーショットダイヤルというビジネスが台頭した頃だったが、まだインターネットもないローテク時代。電話オンリーのコミュニケーションは特殊な出会いの形だった。

インターネットが普及すると、いかがわしい出会いの場は、電話からネットの世界に移っていった。生身では無い匿名による出会いの受け皿としては、ネットは格好のプラットフォーム。そこで生まれた言葉が「出会い系」。この時点でネットによる出会いはまだいかがわしいものだった。

しかし、ここ10年くらいだろうか、マッチングアプリなるものが普及して、これが男女の出会いのスタンダートになりつつある。いかがわしいものから極めて健全なものまで、多種多様で、若者は簡単に見知らぬ人と、事前に相性もチェックして、会う手段を手に入れていた。おじさんは流石に、そのアプリをインストールする気力はないのだが、若い頃にこの手段があれば、狂ったように夢中になっていたに違いない。ここまで普及して、普通のことになってしまったので、マッチングアプリを使うことに「後ろめたさ」を感じる若者はほぼいないように見受ける。

あの、若いオトコ特有の性に対する高揚感・背徳感。枯れオジとして、しみじみ懐かしく思う。

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