『メルカリ』という映画の中で、ネオのように目覚めて、タイラーのように生きている。Episode 6
●ロディ・パイパーの『ゼイリブ』
映画『ゼイリブ』を初めて観たのは
高校生の頃だ。
大好きなアメリカのプロレス団体WWF(WWE)のプロレスラー、"ラウディ"ロディ・パイパーが主役だという理由だけで観たのを覚えている。
エイリアンが人間に擬態して、
地球征服を企んでいるという、
表面だけ見ればチープな
エンターテイメントSF映画。
ロディ・パイパー演じるナダが、
特殊なサングラスを着けて見渡すと、
擬態された人間の顔は、
髑髏のようなエイリアンの顔になり、
同時に
テレビや
街に溢れている広告や雑誌には、
サブリミナルで、
「(権力・命令に)従え」「考えるな」「眠っていろ」「消費しろ」「結婚して、出産せよ」といった文字列が見える。
高校生の頃に観た時は、
深く考えなかったが、
テレビや流行や回りの環境は、
実はエイリアンが、地球の人々を扱い易いように、
コントロールし易いように、
サブリミナル効果を使っているのではないか⁉︎
同世代の人々や、
サラリーマンの空気になかなか馴染めなかった僕は、
こんな妄想をしながら、脳内で遊んでいた。
だけど、
いまの自分の環境に、常に違和感を感じながらも、
結局は"エイリアンの支配を受け入れていた"
20代の頃の自分。
とりあえず決まった給料が毎月振り込まれて、
心配事は少なく、
無難に毎日過ごせればいい。
柔術という『サングラス』を手に入れて、
価値観が変わった。
いままで見えなかったものが見えるようになってきた。
だけど、それでも僕は、
映画『LIFE!』のベン・ステイラー演じるウォルターのように、
社会人としては
空想の中でだけ勇敢な男だった。
●青帯
職場や社会生活とは裏腹に、
柔術の方はどんどん楽しくなっていた。
2010年には
遂に九州の大会の、白帯マスター(30歳以上)クラスで優勝して、
青帯に昇格した。
いま考えても不思議である。
青帯になってからの僕は、
"何かに擬態"されたように、
または
"自分の中で違う人格が目を覚ました"ように、
急に活動的になった。
毎月のように
九州から飛び出して、
東京や名古屋の大会に一人で遠征した。
東京に行っても、
六本木やお台場と行ったお洒落スポットには
一切行かない。
当時柔術の試合は、
浅草の
台東リバーサイド・スポーツセンターで
開催されることが多く、
浅草のスーパーホテルのポイントだけが
どんどん貯まっていった。
試合に出場するたびに知り合いが増えて、
一人で会場に行っても、
誰かが応援してくれるようになった。
左腕の障害もあり、
僕は決して強い選手ではないけれど、
出場した試合も、
負けた数の方がずっとずっと多いけれど、
この頃は、ほぼ柔術の試合に出るためだけに
生きていた。
(続く)