ひなまつりの思い出
私の母は長女で、私も長女だったので
母の両親にとって私は初孫だった。
(ちなみに父の両親は彼が小学生の時に日本脳炎で亡くなっている)
ぶっきらぼうで手先は器用なのに、人付き合いは不器用だった祖父は
初孫の私のために、大阪から九州までひな人形を担いでやってきた。
新幹線は通ってるか通ってないかの時代なので、
フェリーでやってきた。
祖父は小柄で150センチ強の身長で、体重は50キロ無かったと思う。
そんな祖父が立派な二段のひな人形をガラスケースごと運んできたのだ。
よっぽど嬉しかったのだろうと思う。
祖父とはまともに話したこともなく、
ずっと巨人戦を見ている人だった。
孫にテレビを譲るようなこともしない。
祖父は小学三年生の時に脳内出血が原因の病気で亡くなった。
その時にはもう何もわからなくなっていたが、
もうすぐこの人は死ぬのだろうな、ということは分かっていた。
祖父に可愛がられた思い出は無いのだが、
ひな人形の話をされるたびに、私は愛されていたのだと感じるのだ。