声がデカいと得をする、らしい。
私は声がデカい。
甲高い声では無く、低いトーンのお腹から出す良く響く声である。
なので、私が話しているととても目立つ。
別にこの声で得をしたことはそんなにない。
小学三年生の時に、当時の教頭先生が800人超の生徒全てを面接して
合唱団に入れる子を選抜していたが、それに選ばれてしまったくらいだ。
しかもその中でさらに選抜があり、残ってしまった。
休みはつぶれるし特に楽しそうじゃないし面倒だし、選ばれないほうが良かったのでそう口に出したら
「選ばれなかったこのキモチになってみなさい」と同級生に諭された。
好きで選ばれたわけでもないのに、不条理だが
諭してきた子がいい子だったので逆らわなかった。ごめんと謝ったが、今でも腑に落ちてはいない。
小学生の時から喘息を患っていたくせに声がデカい。
歌うために走らされたりとろくな目に遭わなかったが、何とか乗り切った。
中学生で音楽部に入ったが、合唱ばかりやっていた。
楽器がやりたかったのになと思って二年からは家庭科部へ移籍した。
高校生になったら、入学してそうそう生徒会のあいさつ回りがあり、皆名前を言わされ、声が小さいと何度でも言わされていた。
私は見た目気が弱そうな三つ編みメガネなので、たぶん声も小さいと思われたのだろう。怖そうな先輩数人が私の目の前にやってきて
「名前を言いなさい」と言われたので、
「1年E組○○シゲミです!!!」とクラスのだれよりも大きな声を張り上げて名乗った。
見た目とのギャップがあったらしく、先輩方はたじろいていたが私はそのまま座らされ、事なきを得た。
その後、おとなしい見た目とデカい声のギャップは、カラオケで遺憾なく発揮された。
会社で私語が多いと言われたこともあるが、私が一方的に話しているわけじゃなく単に声が大きくて目立つだけなんだが、と思う事は多かった。
唯一いいなと思ったのは
上長との面接の際に「守屋さん、部署異動とかあったらどうする?」と聞かれ「私でいいのであればどこでも働きます!」とデカい声で返したことだ。
そのおかげで今の製造事務の仕事に変わることとなり、
基本的に残業も無く、好きな時に休ませてもらえる仕事になった。
同期の子にうらやましがられたが、こればかりは言ったもの勝ちである。
あとは40歳にして初めて遭った痴漢に「バカやろー!」と盛大な声で叫ぶことが出来、痴漢が一目散に逃げて行ったことだろうか。
ともあれ、身を守るのも自己表現も大きな声は有利なのかも。
そう思うと、とくに有利ではないと思っていたが、実は得だったのかもしれない。