見出し画像

#13 【書評】 Z世代化する社会

今日紹介するのは、舟津昌平氏著『Z世代化する社会』である。

本書は経営学者である著者が最近の若者にまつわるさまざまな例をもとに、多様な観点から「若者」を観察・考察している。

私自身、現在大学3年の21歳というまさに筆者が見てきている学生と全く同じ世代であり、Z世代ど真ん中である。

本書を手に取ったきっかけは、自分たちZ世代のことをそうではない大人、それも自分の専攻している経営学の先生が一体どのように見ているのか、という興味である。

読んでみて思ったのは、これは今のZ世代こそが読むべき本であるということだ。(普通はあまりこういう言い方はしない、というより好きではないが今回ばかりは本当におすすめしたいのであえて書く)

筆者のスタンスとしては、現在のZ世代の中では普通だが上の世代の人にとっては異常だったり、不思議でならない出来事や傾向を実際のZ世代とのやりとりにおいて考察していく。

しかし、ここに書いてあることは少なからずZ世代自身も疑問に感じている部分が多いのではないかと思う。かくいう私自身が、この本の中で「なんとなく感じていた『Z世代』というものに対する疑問、モヤモヤ」をとても明快に説明してくれていた。

「あーまさにこう思っていたんだよな〜」と共感するものばかりであった。

自分を俯瞰する

この本のみならず、『Z世代』について書かれいる本は数多ある。Z世代において特徴的にみられる社会的行動を科学的に観察し、考察するわけであるが、本書もそれに近いものである。

しかし、この本のオリジナリティはそれを「経営学的視点」から行なっているということだろう。他の本が、文化や社会の観点から見るのであれば本書はビジネスの観点からZ世代というものを眺める。

この本の本来の目的、筆者が意図したこととしてはZ世代というものの観察を通して現代の社会について考えるというものである。もちろんその目的は読んでみて十分果たされているように思える。

しかし、私がこの本を読んで最も面白いと感じたのは、自分と同じ世代ではない人が冷静に我々を観察していることで、我々自身が自らの世代、社会について俯瞰的に見ることができるという点だ。

誰にとっても「普通」というのはある。それは別に悪いことではない。というよりそもそもいい悪いの話ではない。

しかし、たまにはその普通から抜け出して俯瞰して自らのことを観察してみるのも面白い。普段だったら全く気にせず素通りしていることをあえてじっくりみてみることでわかることもある。

このような意味で、本書はかなり有効なのではないかと思う。「大学生」という空間に浸かっていたら見えないものがこの本を読むことで見えてくるようになるのではないかと思う。

自分の中の不安が晴れる

こんなことを言うと「そうやって自分はちょっと俯瞰してハスに構えている」と思われるかもしれないが、私は大学生で本書で書かれていた大学生の傾向に当てはまらなかった。

むしろ筆者が感じる疑問の方に共感できると言う感じであり、Z世代でありながらZ世代側の心理がよくわからない。

本書にも出てくるZenlyやBe Realのような最新のSNSはやっていないし、インフルエンサーなどに関しても、名前は知っているけど程度の知識だ。

なので、むしろ同じ世代に対して「なんでそう思うのだろう?」と思うことが少なくない。

これまでもたくさんそう言うことを考えることはあったものの、なかなかこれ!と言う結論を出せずにいた。それが本書によってほとんど明らかにされたと言っても過言ではない。

何が言いたいかと言うと、この本には大学生が抱えるモヤモヤを解決する力があると言うことである。本書は決して若者に迎合した生やさしい本ではないし、時にはなかなか残酷な考察をしている部分もある。

しかし、最終的には我々Z世代にエールを送ってくれていると言える。特に第5章の1番最後は読むと少し肩の力が抜けて楽になると思う。

久しぶりに興奮する一冊に出会えた。ぜひ一読してみてほしい。



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?