サラカンとタケカンってなに?〜知らないと現場で大失敗〜
現場でよく聞く言葉「サラカン」と「タケカン」について。
理解せずに現場に出ると、良かれと思って言ったことが思わぬ大失敗につながりかねせん。
この記事ではふたつの言葉の意味と役割、私自身が経験した失敗についてお話しします。
現場経験の少ない若手設計者・現場監督が読むことで、私と同じような失敗を繰り返さないようにして頂ければと思います。
【サラカンとは】
まずは「サラカン」について。
工事監理業務もしくは工事監理者のことを指して使われます。
「工事監理」は建築士法で下記のように定義されます。
簡単に言うと「工事現場の状況を設計図と照らし合わせ、設計図の通りに工事が進められているかどうかを確認する」ことです。
たまに現場に来て監督に色々と指示を出している人(建築士)、というイメージで差し支えありません。
【タケカンとは】
次に「タケカン」について。
工事管理もしくは工事管理者のことを指して使われます。
こちらは「工事監理」とは違い、法で定められた定義はありません。
簡単に言うと「設計図の通りに建物を建てるため、必要な段取りを整える」ことです。
いつも現場にいて職人さんに色々と指示を出している人(現場監督)、というイメージで差し支えありません。
【こんな呼び方をする理由】
ここまでの説明で「工事監理」と「工事管理」、2種類の漢字を使い分けていることにお気付きでしょうか。
読み方は両方「コウジカンリ」ですが、「監」と「管」のどちらの字を使うかによって意味が異なるのです。
このような言葉を同音異義語と言いますが、「工事監理」と「工事管理」は建築業界の代表的な同音異義語です。
書面なら漢字で判別できるのですが、口頭で「コウジカンリ」と言われてもどちらの意味か分かりません。
「監」という漢字の部首「皿」から「監理」のことを「サラカン」、
「管」という漢字の部首「竹」から「管理」のことを「タケカン」、
このように使い分けることで、意味の取り違いが起こらないようにしています。
ちなみに、学校の名称で使う「私立」と「市立」も同音異義語です。
これらを「シリツ」と「イチリツ」と呼んで区別するのと同じようなもの、と言えば理解しやすいと思います。
【私の失敗談】
「サラカン」と「タケカン」の意味を理解していないとどうなるのか。
ここからは私自身の失敗についてお話しします。
私が社会人4年目のときです。
当時の私は、昔から目標にしていた一級建築士を取得し、仕事もある程度は自分の力でこなせるようになったことから、少しずつ自信が付いてきていました。
そんなある日、配筋検査に来てほしいと現場から要請があり、私が検査へ行くことになりました。
その現場は大手設計事務所が工事監理、私の所属する設計事務所と付き合いのある建設会社が工事管理を行う現場でした。
大手設計事務所の検査を受ける前に、建設会社の補助として建築士の視点で現場を見てほしいと依頼があったのです。
現場に着いてひと通り検査を行う中で、職人さんに声をかけられました。
「ここの鉄筋ってどう組めばいいですか?図面には描いてないんですけど…」
質問は特別難しいものではなく、私でも回答できるものでした。
「そこはこんな形で組んでおけばいいと思いますよ。」
その場で簡単なスケッチを描いて説明し、私はちゃんと答えられたことに気を良くしていました。
しばらくして工事監理者による検査が始まったのですが、監理者と職人さんが何やらモメています。
その場に呼ばれて話を聞くと、先ほど私が質問に答えた箇所の手直しが必要とのこと。
監理者に経緯と回答の意図を伝えたところ、「その考え方も間違いではないんですが、うちの社内基準と違うので手直しが必要です。そもそもうちが監理でしょ?」と一蹴されました。
結果、私が質問に答えたことによって職人さんに二度手間をかけさせることになりました。
図面から読み取れないことに対する決定権は工事監理者にあり、工事管理者の補助である私が勝手に判断して良いことではなかったのです。
すべては「サラカン」と「タケカン」の違いを理解していなかったことが原因でした。
【まとめ】
「サラカン」と「タケカン」の言葉の意味と役割、私自身が経験した失敗についてお話ししました。
自分の立場を把握したうえで検査をしなければ、思わぬ失敗を招くことを理解して頂けたら幸いです。
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