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書籍紹介:読書会入門

読書会入門との出会い

みなさんはYoutubeを見ますか?
私は最近、毎日のように開いていますし、ついにはプレミアム会員になりました。

見る動画のほとんどは「ビジネス系」と呼ばれるYoutuberの動画です。
この「ビジネス系Youtuber」と呼ばれる人たちは、ざっくりというと「人生に有益な情報」を沢山の人が理解できるよう、噛み砕いてわかりやすく解説してくれます。
人によっては、「読んでみて役に立った本」の要点をかいつまんで紹介してくれるのですが、私はこれにハマりました。

これまで「今が楽しければいい」と、毎日遊ぶことだけに全力を注いできた私は、人生を長期的に見る「本を読む」という行為をまったくしてきてませんでした。
恐らくはその反動もあって、ビジネス系Youtuberを通して見聞きする本の内容全てが新鮮で、感銘を受けたのです。
30年余りの人生を経て、ようやく「本の面白さ」の片鱗を味わいました。

私は熱しやすく冷めやすい人間です。
しかも、30代も中ごろに差し掛かろうというおっさんですから、これから新規に「読書の習慣」をつけることが難しいことは誰よりも自分がわかっていました。

そこで思いついたのが「読書会」です。

「読書会」といっても、特定の本について話したり、本を紹介したり、色々な種類があるようなのですが、私の開催した読書会は基本的に「ただ集まって好きな本を読む」でした。
まずそもそも「本を読む」こと自体にハードルの高さを感じていた私は、ひとまず本を読む環境を作ることにしたのです。

そして友人に声をかけ、16人程度の参加者が集まってくれることとなったのですが、参加者のひとりが会のために買ってきてくれた本がありました。

それが今回ご紹介する「読書会入門」です。

読書会入門

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今回ご紹介する「読書会入門」は、日本最大級の読書会である「猫町倶楽部」を主宰されている山本多津也さんの著書でございます。

本書では「読書会とは何か」といったところから、主宰として運営していく上での気づきや山本さんなりのルールが綴られていました。
そしてその内容は「読書会」の運営に限らず、これから何かのコミュニティを作りたいと考えている方にはとても参考になるヒントにもなっています。
コミュニティの形成に携わる方には是非一読してもらいたい一冊です。

そして今回はそんなコミュニティを作る上で参考になった!と感じたところや、本書のメインテーマである「読書」について面白い!と感じた点をピックアップしてご紹介させていただきます!

読書のハードルを下げよう

まず本書では「読書」というものについてのハードルをこれでもか!というくらいに下げてくれます。
読書なんてそんな気位の高いもんでもストイックにこなしていくもんでもない、何ならモテたいから読書をする、それでもいいじゃん。
そんな風に言ってくれるのです。
これから読書を始めようとする私にとって、これほどありがたいことはありません。

そして何なら本書には「読書会でモテる方法」まで書いてあります。
えっ?そんなことまで教えてくれるの?というかそんなよこしまな動機で読書会に参加してもいいの?とも思いましたが、すぐに納得しました。
というのも、私が本を読むようになった最初のきっかけは、とあるビジネス系Youtuberの「必ずすべきiPhoneの設定5選」のような動画だったのですが、今も継続してiPhoneの設定について調べ続けてる、なんてことはありません。
もちろん出会い目的の迷惑行為が許されるわけではありませんが、「動機」という意味ではきっかけなんて本当に何でもいいんだな、と腑に落ちました。

読書会のハードルも下げよう

そして同時に「読書会」への参加のハードルも下げてくれます。
それは単に「初心者歓迎!」だとか「アットホームな会です」のような字面だけではなく、「あ、確かにそれなら自分でも参加できそう」といった納得のできる内容でしたのでそちらを2つ、簡単に紹介させていただきます。

そもそも「猫町倶楽部」の読書会は「課題型」と呼ばれる、あらかじめ設定された課題書を読了した状態で参加して、当日はその本について話す。といったタイプです。

そうなってくると、「人前で喋る」ということをハードルに感じてしまいますよね。
例えば私が参加を検討する場合だとこんな感じのことを懸念すると思います。
(自分はそんなに本読んでないし深く突っ込まれたら喋れなくなりそう)
(それに自分の感想なんて誰も興味ないんじゃ…)

近いことを考える方も多いのではないでしょうか。
そんなあなたに山本さんはこんな内容で寄り添ってくれます。

1.否定しないというルール
どんな意見であろうが否定しないこと。
これは「猫町倶楽部」に設けられた唯一のルールだそうです。
頭ごなしに否定されてしまうと、発言をしにくくなってしまいますよね。
本書では「読書会は正解を探す場ではなく、ほかの人の話を聞く場」と書かれています。
否定することで他の参加者の話が聞けなくなるのは、会の目的に背いてしまっています。

2.感想は人それぞれだからこそ良い
これも考えてみれば当たり前なんですが、他人に本を読んだ感想を強制することなんてできませんよね。
この本を読んでここで泣きました!って人に、いやいやそこ笑うとこだから笑ってもらわないと困ります!!なんて、きっと本を書いた本人ですら言わないと思います。
感想が人それぞれ違うからこそ、自分にはなかった角度から内容を捉えることができ、それが学びに繋がります。

この内容で自分の感想にも少なからず価値があるんだな、と思えるようになりました。
そして自分と相反する感想があったとしても、それはお互いの学びになることで否定されることではないと納得できました。

そして何よりこれらの内容を主宰が名言しているという事実が安心します。
私は、これこそ「猫町倶楽部」が繁栄している大きな要因なのだと感じました。

読書会に参加するメリット5つ

さて、そんな課題型の読書会に参加することで得られるメリットはなんでしょうか。私が面白いと感じた5つを紹介していきます。

・本を読む
これは言わずもがな、参加を決めた時点で締め切りができ、それまでに読み終えることを自分に強いることができます。

・より詳しくなる
他人に感想を伝えることは、一人で本を読むとき以上に内容を深く理解する必要があります。

・複数の立場を理解できる
自分とは違う意見を聞くことで、一人で読むだけでは得られない広い見解を取り入れることができます。

・自分が選ばない本と出会える
自分が手に取らないような本と出会うことができます。読みなれない本は体力を使うかもしれませんが見聞を広げるチャンスが増えます。

・人とのつながりができる
会社では部長、自宅ではお父さんといった風に人にはその場所で役割がありますが、読書会ではその役割のない自分でいられることができます。
そして役割のない場所での、参加者同士の「弱いつながり」が居心地のいい場所を生み出します。

コミュニティを継続させる秘訣

「猫町倶楽部」は14年も続くコミュニティです。しかも名古屋を拠点として、東京・大阪・福岡など複数の場所で開催されています。

私もこれまでに趣味のコミュニティを作ったことがありますが、長く、そしてコミュニティが大きくなればなるほど、運営が難しくなる、と実感しています。
コミュニティが大きくなるとトラブルも増えるし、長期に渡って参加している「常連」が発生することで内輪感が増してきます。内輪感が増すと、風通しが悪くなり、人の入れ替わりも鈍くなります。そうなるとコミュニティの質は下がり参加者も減ります。最大のデメリットはコミュニティの衰退を感じた主宰のモチベーションが下がることです。
そのため私は何となく「趣味のコミュニティは1年まで」と決めてうまくいっているうちに辞めることを選んでいました。

ですが「猫町倶楽部」は同じように個人で作る非営利のコミュニティのはずなのに大きな会を継続することを成し遂げています。
しかも開催場所も県を跨いでおり、主宰の目の届かない場所があるにも関わらずです。
そこにはどんな考え方があったのか、本書に書かれていました内容を2つに分けてご紹介させていただきます。

トラブルについて

コミュニティには人間関係のトラブルは付き物です。
私の経験上、その多くは特定の尖った参加者が入ってくることによって引き起こされていると感じています。
本書内ではそんな尖った参加者を取り扱ったエピソードがつづられていました。
そのエピソードは、当時の山本さんの苦悩が文章から滲み出ており、息の詰まる思いで読み進めました。
結論から言うと、その参加者を出入り禁止にすることはなかったようです。
その理由のひとつに「考え方の違う人間は排除する」という組織でありたくないという思いを述べられていました。
きっとその人を出禁にしなかったことで「じゃあもう参加しません」と去ってしまった方もおられると思います。
でもそれを含めて「排除しない」という決断することができたのは「読書会のコンセプト」はもちろん、「山本さん自身の哲学」が明確だったからこそではないかと感じました。

どうするべきか、苦渋の決断を強いられる時が来る前に自分が目指すコミュニティの在り方を考えておく必要があるのかもしれません。

常連との付き合い方

次は常連との付き合い方についてご紹介します。
「猫町倶楽部」は会も大きく、開催場所も様々です。
主宰一人では到底手が足りません。
そこで、サポーターと呼ばれる運営を手伝ってくれる方を募っていらっしゃるようです。

そんな大きな会を手伝う人なのだから、それはもう厳選に厳選を重ね、信頼のおける人間だけに委ねているのだろうなと思ったのですが、まったくの見当違いでした。
サポーターになる条件は「会に3回以上参加してくれている」の1つだけ。しかもそのサポーターの任期はたったの1年間だというのです。

会に3回行けばいいだけって、そんなので大丈夫なの?それに頼りになるサポーターができたのならずっとやってもらったらいいんじゃないの?

と若輩者ながらそう感じたわけですが、これにはちゃんと理由がありました。

まずサポーターをずっと続けてもらった場合
・その人がいないと回らなくなる
・ベテランが生まれてしまい、上下関係が発生する
のようなデメリットが発生してしまいます。

確かにサポーターと言えどもボランティアです。
その人がいないと回らない、となったところで「辞めます!」と言われてしまったら潰しがきかなくなります。それは困りますよね。

そして何より本書では上下関係が発生してしまうことを危惧しています。
仕事でも家庭でもない、役割から解き放たれる居心地のいい場所を求めて読書会に参加したのに、そんなところでも下っ端扱いされたらたまったもんじゃありませんよね。

サポーターになりたければ3回参加でOKというハードルの低さも、それはほぼ「やりたい人ならだれでもできる」わけですから、常連が蔓延る息苦しさを軽減するのに丁度いい塩梅に感じます。

じゃあ1年任期のメリットってズバリなんなの?って話なんですが、これは「元サポーター」が参加者に増えることです。
任期は1年ですが、サポーターを終えたからといって読書会に参加しなくなるわけではありませんよね。そのサポーターだった人は参加者に戻るだけです。
参加者にサポーターを経験した人が増えていくことは、つまり運営側の悩みを理解する人が参加者内にどんどん増えていくということです。
確かにこれなら、参加者でありながら運営が求めている言動をしてくれる人が増えていきます。
参加者が増えると同時に理解者も増やす。
この割合を維持する仕組みは非常に合理的で素晴らしいと思いました。

主宰の在り方

最後に、会の主宰はどうあるべきなのか。を紹介して締めたいと思います。

本書では主宰とは「飲み会の幹事程度の気持ちでいろ」と書かれています。めちゃくちゃ本を読んでて詳しい、なんてことはなくてもいいし、参加者に尊敬されなくてもいい。でも重宝はされる。それはまさに「飲み会の幹事」的ではないか。

知識でマウントを取らない、尊敬も求めない。でも重宝される。
表向きはそんな都合のいい存在でありながら、自分の中ではしっかりとビジョンがあってするべき決断を下せる。
そういった考え方こそがコミュニティの主宰として長生きする秘訣なのかもしれません。

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