
悪魔の手毬唄…な朝だった。
紫風日記📔皐月二十七日
まだ夜が明けたばかりの薄明かりの早朝、私は仕事に向かっていました。
すると前から一人のお婆さんが歩いてきます。
下半身は垂直、上半身は水平といった感じで腰がほぼ直角に曲がっており、頭には白い手拭を被っていました。
あれ?このシチュエーション、どっかで見たような…。
…よし、わかった!
「悪魔の手毬唄」のワンシーンだ!
それは石坂浩二さん演じる金田一耕助が、岡山県鬼首村から総社の町へと向かう途中の仙人峠で謎の老婆とすれ違う場面。
その老婆は腰が曲がり、頭から手拭を被って顔がよく見えなかったが、金田一に向かって「おはんでござりやす、お庄屋さんの所へ帰ってまいりました、なにぶん可愛がってやってつかぁさい…。」と弱々しい声で言い残し、杖をついて消えていく。
総社の町に着いた金田一は、聴き込みに向かった宿の女将から、おはんという女性は昨年の秋に亡くなっていることを聞かされ、「それじゃ、仙人峠ですれ違った、あの老婆は一体誰なんだ!?」と戦慄する…という、何とも気味の悪いシーンなのであります。
さすがに峠ではないものの、ほぼほぼ同じシチュエーションの中にいた私は、おはんさん…いや、私の目の前にいるお婆さんに向かって「おはようございます…。」と声をかけてみることにした。
すると私の想像を遥かに超えた明るい声で、「おはようございます!」と挨拶が返ってきた。
もしこれで「おはんでござりやす…」とか言われたら、すぐに着物と袴、外套に下駄、古びた帽子姿に着替えなきゃいけないところだけど(着替える必要全くない…。)、ホッと安堵して駅へ向かった。
それから駅に着いて改札口を通り、ホームで列車を待っていると、ステンレス製の近代的な車両が滑り込んできた。
「いやいやいや、ここは蒸気機関車でしょ!」…と、心の中で無茶な注文をしている自分に、心の中で苦笑い。
映画を観ていない方に、ネタバレしない程度にこのシーンについて説明すると、事件を解決して総社の駅から列車で旅立つ金田一耕助は、見送りに来た磯川警部に「あなたはリカさんを愛してらっしゃったんですね。」と動き始めた汽車から問いかけるも、その声は汽笛に消されてしまう。
列車は金田一を乗せて走り去り、何も答えずに煙草を吸いながら汽車を見送る磯川警部が立つプラットホームの駅名板には、平仮名で「そうじゃ」と書かれていた…。
このラストシーン、実に秀逸!🏆
そうなんです、蒸気機関車でないと!
ステンレスの近代的な電車ではダメなのです。
せっかく団地の敷地でおはんさんに会えたのだから(そもそも“おはんさん”じゃない…。)、この秀逸なラストシーンまで終えてから仕事に行かんと!
と、まぁ、そんなこんなで眠気も一気に吹っ飛ぶ刺激的な朝なのでしたが、私の心にひっかかる懸念材料が一つだけ。
今朝のお婆さん、実在してるんやろか…。

【使用筆記具・画材】
📓ターレンス製artcreation sketchbook
🖋️ぺんてる筆ペン 中字
🖋️ぺんてる筆ペン うす墨
さぁ♪手書きを楽しもう!😊✨紫風晄禎
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