【ハーブ天然ものがたり】どくだみ
日本三大薬草のひとつ
どくだみの別名はたくさんありますが、蕺草(生薬名では じゅうさい)が正式和名です。
江戸時代中期の百科事典「和漢三才図会」で、どくだめと記載されてから、どくだみが俗称になったそうですが、もちろん毒をもっているからではなく、毒を止めるという意味で命名されたようです。
漢方では魚腥草。
日本では乾燥した葉を十薬といい、ほかにも地獄蕎麦、馬芹の名があります。
日本に現存する最古の本草書、平安時代の「本草和名」や「和名抄」などの書物には之布岐と収載されています。
湿った陰地に群生して、特有の匂いがあり、べんじょぐさとも呼ばれます。
ヒメジョオンと1、2位をあらそう日本の蔑称ハーブともいえるどくだみ草ですが、不名誉な名前もなんのその、ゲンノショウコやセンブリとともに、日本三大薬草のひとつで、田舎でも都会でも旺盛に生育する繁殖力には目を見張るものがあります。
どくだみ特有の香り成分は、アルデヒドに由来するもので、生臭いと感じます。
香り成分は揮発するので、乾燥させたり熱を入れると匂いはほとんど気にならなくなりますが、東南アジア、特にベトナムでは生春巻きや魚料理にそのまま使う食用葉です。
カメムシ臭がするといわれるパクチーしかり、ところ変われば芳香となり、臭気にもなる。
香りを受けとる人間のレセプターは、記憶をつかさどる脳機能、海馬に深くかかわっているので、個人差もあれば、食歴による民族差もあり、一概に「臭い」とは言いきれないものです。
生のどくだみが持つ香り成分は強力な殺菌作用があり、主な精油成分デカノイルアセトアルデヒドは、抗生物質のもとになったペニシリンをしのぐといわれるほどです。
皮膚のかぶれや完全治癒がむずかしいとされる、真菌による疾患(みずむしやたむし)の特効薬として、民間療法ではつとに有名です。
名の由来にある通り、解毒、代謝促進、毛細血管の強化、むくみ解消、利尿、便秘解消と、デトックス効果も高いです。
植物界のワン・フォー・オール
もう十数年前の話ですが、札幌の生家を手放し、いよいよ解体されるという数日前に、30坪ほどの空き地(誰も来ないので、勝手に裏庭と呼んでいた)に座って、クサたちにごあいさつがてら裏庭草のマインドマップをつくりました。
幼少期の思い出がたっぷり詰まっている空き地(裏庭)は、オオバコやいたどり、たんぽぽ、すぎな、コンフリー、あじさい、山ぶどう、水仙、月見草、野生のアスパラなど、季節ごとの花や実が楽しめる、クサの宝庫でした。
裏庭と呼びつつまったくのほったらかし(当然といえば当然)ですが、今思うとクサたちは、たがいの領域を侵犯せずちゃんと毎年、同じような場所に芽を出していました。
どくだみの生育場所も毎年同じ場所、同じように広がります。
陽のあたらない、ジメリとした家屋の壁づたい、裏庭のかたすみです。
後年はセイタカアワダチソウに侵食されて、裏庭の風景もかなり変わってしまいましたが、クサたちは完璧に根絶やしされることなく、なんとか多様性を保っている風でした。
わたしたちが生きるこの地球上では四大元素のうち、土元素界が一等はばを利かせていると思い至ったのはこの裏庭でぼんやりしているときです。
火と風元素は土にとりこまれて身動きできない、なんてことはないと思いますが、水は土という器に従うしかないんだなぁ、と。
もちろん水の流れが地をけずり、大地を変形させてしまうこともありますし、海岸の岩石でさえ長い年月をかけて波しぶきの彫刻対象になります。
ただ内陸に入るほど、とくに都会という精霊たちのめぐりシステムをまる無視した特殊なバイオーム(穢れ地なんて呼ばれるようなエリアではことさらに)陽あたりが悪く植物もなかなか根付かないので、じめっとしたり、どろりと感じたり、陰気な気配が濃厚になります。
植物に吸い上げられて気化できる分には循環・めぐりのサイクルに乗りやすく、湿地や泥地などでも、葦などの水質浄化システムをもっている植物群落があれば、小さな生き物が棲みつき、水も絶えずうごき続けることができます。
植物が根づかない土元素界には、土から天にむかって上昇する反発力がうすくなり「水は低きに流れるもの」という特殊な地球ルールで、精霊たちも、がんじがらめにされるのではないのかな、と。
陰気な気配というのはもしかすると、土に閉じこめられた水精霊たちの、SOSなのかもしれません。
水の精霊ウンディーネを題材とした、悲しい物語が多いのは、囚われたものたちの集合意識に同期をとって、自由になりたいと訴える精霊たちの叫びを表現しているからなのでは…?
循環しない、めぐりが悪い、太陽光の消毒作用もない、となると、かなり厄介な土精霊&水精霊の巣窟、という雰囲気が漂いますが、そんな場所を選んで毎年花を咲かせるどくだみは、いってみれば囚われた水精霊たちの救世主。
こごった場所に流れをつくる、スーパーヒーローなんじゃないかな、と。
どくだみの、白い花のように見える葉が変化した総苞片は、天にむかって十字を切り、その中心に小さなうす黄色の花々を掲げて、虫たちを誘います。
地下にのびる地下茎は、白く、細長く、あちこちで分岐して、芽吹く準備に余念がなく、よどんだ土のなかにそっと降ろされた、天使の梯子のように思えてきます。
古名・之布岐は水シブキ?
どくだみの古名、之布岐は、水しぶきのシブキ、だとしたら水元素の溌剌元気な在り様を、思い出させる言霊です。
「之」は出る、前に進む
「布」はエーテルを表現し
「岐」はふたつの道を示す。
「土・水界の深みに通じる道をひらき、火・風界に上昇する道も確保しました。梯子はかけておきますから、どうぞご自由に冒険なさってくださいな」と。
当時の「どくだみマインドマップ」には、そんな言葉が紙面いっぱいに綴られています。
植物たちは根を張り茎をのばし、土元素界に深く介入しながら、火や風、水精霊たちと共にバイオームを形成して、大地を覆うように四大精霊のきざはしとなり、めぐり・循環を生み出しています。
わたしたち人間も、化学的エビデンスありきの世界線に閉じこもってしまうと、土のスピリットが旺盛になりすぎて、囚われ感や閉塞感で、息が詰まってしまいます。
植物たちの存在感や芳香成分は気分を刷新して、からだのなかの水精霊をうごかし、隙あらばミチミチと空間を埋めたがる土精霊たちの鎖をほどいて、解放へのショックを与えてくれるのではないかと。
土に作用して澱んだ水をうごかす力の強さは、そのままヒトのからだにも応用されて、気・血・水をめぐらせる。
どくだみというストレートすぎる俗称は、その効力に感じ入った江戸っ子たちの、精いっぱいの表現だったのかもしれません。
どくだみについては過去記事にも綴っております、本日は過去記事から、どくだみ部分のリライトになります。
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