3年目を迎えて
私が主催する指輪のブランド「指月博物館(しづきはくぶつかん)」も今日で2年が過ぎ、3年目を迎えることができました。
今年はいろんな方と出会った一年でした。
皆様本当にありがとうございます。
昨年の記録を見ると、1年目を「荒野を見つめ直し、耕し、種を蒔く一年」と振り返っていました。2年目もより耕し、そして種を蒔く年でした。ただ昨年は不安もありつつただひたすら前を向いて耕してました。今年は、自信を持って耕していました。実際、去年の畑からは芽が少し出ています。そんな2年目でした。
3年目もきっと耕すのだと思います。でも荒野じゃなくて土をです。種ももっと蒔きます。芽は大切に双葉が出るように育てます。風雨に晒されないよう囲いも作り始めないといけないかもしれません。土と芽を枯らさないよう、そして農夫である僕が挫けないよう、今年も続けていこうと思います。
この2年目は100人以上の方の指輪を作りました。無我夢中でしたが、思い返すとすごい数です。北は稚内から南は鹿児島まで。また中国、香港、台湾の方にも作らせていただきました。
指輪の販売で面白いのは、必ず最低限「サイズを伺う」というコミュニケーションが発生することです。そこからいろんな話に転じて、結果的に、このnoteにも掲載している「指輪物語」につながります。
この記事に掲載している写真の指輪は、ブランドを立ち上げる5ヶ月前、趣味で作っている頃、息子が生まれた時に、妻にプレゼントした指輪です。名前はありません。
妻はもともと球体がひとつ付いた指輪が好きで、付き合ってる頃にプレゼントしたことがあります。そんなことから球体なら喜ぶかなとデザインしました。両側の大きな球体は、妻と私。真ん中の小さな球体は息子。そんなことを直感的に表現したつもりですが、結果的に「出産」に関わるいろんなことを想起させるシンボリックな形にもなったなと思います。
指につけると、大きな球体二つは、手の甲側に顔を出し指と指の間にアクセントとなります。また小さな指輪は、子供を守るという意味で、掌に包まれます。
妻のために作りましたが、生まれたことを祝う息子のためでもあり、私の記録のためでもあります。家族のための指輪です。
以前テレビで、ハンバート ハンバートがこう言っていました。
※(覚えてる限りで意訳します。違う意味になってるかもしれません)
「最近は自己紹介するにも細分化された肩書きのような単語を言うことが普通になっている。例えば◯◯会社に勤めてます、◯◯大学出身です、とか。でも昔のもっと大雑把な時代は、そんなカテゴリーがなくて、自己紹介する手段のひとつとして歌とかしなくて、誰もが気軽に一生懸命表現することで自己紹介をした。」
その後、「だから歌とか歌手じゃなくても、もっと気軽に歌っていいんです」と言うふうにつながっていきます。
私にとって、この指輪は、自己紹介のための表現のひとつです。ただこの造形だけで伝われば幸いですが、そうでなくも、来週この指輪に纏わるストーリーを語るときは、もっと違う言葉を使うだろうし、今だってもっと長くも、短くも話せます。本質はこの指輪が想起させてくれることなんです。
指輪制作を依頼してくださる方に対して、私は自己紹介のお手伝いをしています。
そして指輪販売を通して買ってくださる方に対して、たくさんの自己紹介を広めているんだと思います。
私自身もまた表現媒体なのかもしれません。
そんなことを思う3年目のはじまりです。