「源流のある町」より(草間小鳥子『源流のある町』)

与えられるものに固執しすぎていた
くらぐらと冷たい岩陰から音もなく真水は湧き
源流をたどればなにかが変わるはずだと
すがるように歩いてきたわたしたちは
コインパーキングの自動販売機で買った
一番安い缶コーヒーをすする
「なにかを簡単に塗り替えてしまう感情なんて嘘っぱちだ」
きみは力いっぱい空き缶を投げ、
缶は夕映えにうつくしい放物線をひゅっと描き、
それから草むらに落ちた空き缶を
背中を丸め小走りで拾いに行った
うつくしい瞬間だけをつないで生きてゆけたらいいのに




草間小鳥子『源流のある町』収録
発行:七月堂

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