つかみぬく(國松絵梨『たましいの移動』より)

雲の奥から 爪みたいな輪郭が覗く
整ったものを
やわい手つきで
つかみぬきたくなる
ゆびのあいだから 街が
ひねりでていく
水かきの
はえてしまった あしの
ゆびさきを
にらみつけ
ゆったりと
泳ぎだす
蹴りかえす
陸にいたころのことは
すべて
置きさって 夜な夜な
声ではない何かを 風にのせては


國松絵梨『たましいの移動』収録
発行:七月堂

七月堂HP通販はこちら
七月堂古書部オンラインショップはこちら


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?