【新刊情報】犬飼愛生『手癖で愛すなよ』
このたび犬飼愛生『手癖で愛すなよ』を発行いたします。
犬飼さんは『stork mark』（モノクローム・プロジェクト）で第21回小野十三郎賞詩集部門を受賞。
詩のほか、エッセイストとしてエッセイ集『それでもやっぱりドロンゲーム』（アフリカキカク）も出されています。
本作は『stork mark』から実に5年ぶりとなる新詩集であり、詩21篇が収録されています。
【著者コメント】
時に苦しいこの世界のこと、消えない愛や、嘘や本当のことや、汚れそうな様々なこと、ちゃんと自分の目でみて確かめてね、って言う詩集です。 みなさまにお届けするのが楽しみです。
B面
春が始まった
いつまでも終わらない夢みたいに
町のなかを小さく歩いて食糧を買った
遠くのビルからは拍手
東京は青くライトアップ
あの人のマスクは小さすぎて
あの人のマスクは大きすぎて
私たちは棒グラフになって
週末には画面の中で乾杯する
子どもたちは日付を忘れて
暑い日にはTシャツを着て
どうぶつのいる森へ入って行った
大人はときどきニュースを見る事をやめた
足元に貼られた足型にぴたりとつま先をそろえて待った
二月の終わりを生きながら
聴いたことのない音楽の流れる春だった
まだこの世にないメロディー
どこから流れてくるのかわからなかったし
怖くて 家の中にとどまった
それで私たち、また画面の前で落ち合ったりした
さくらは可憐に咲いて知らぬ間に散ってしまったけれど
私たちは
B面のような世界を生きて
閉じていたとびらを開け放って
呼吸している
著者 犬飼愛生
四六判・並製・小口折
装画・題字 寺田マユミ
88ページ
1700円＋税
発行 8月25日
発売 8月20日頃
ISBN 978-4-87944-539-1
書店さまへ
一冊よりご注文を承ります。
直接取り引き（委託70％・買い切り65％）と、取次ぎは地方小出版流通センターと子どもの文化普及協会へのご注文が可能です。