シブヤコミュニティ散歩vol.9 地域で笑って健康に生きる。笹塚ボウルの秘密(後編)
笹塚で誕生し、創業51年を迎えた笹塚ボウル。ボウリング場という枠にとどまらず、さまざまな工夫で世代も属性も超えたコミュニケーションを生み出しています。笹塚ボウルがあることで、地域にはどのようなよい変化が生まれているのでしょうか。笹塚ボウルに通う人たちの姿から見えてくるもの、また未来への思いを、笹塚ボウルを運営する株式会社京王興産の代表取締役社長、財津宜史さんに語っていただきました。
7インチのレコードでラジオ体操
財津さんへのインタビューも半ばに差し掛かったところ、それまで館内に流れていた音楽が止み、代わりに聞き覚えのある懐かしい音楽が聞こえてきました。
「ちょっと行ってみましょう」
財津さんの言葉に誘われて、ボウリングのフロアへ。
ちょうどプレイ中の皆さんが手を止めてラジオ体操を始めたところでした。
音源はなんとこちら。
7インチのレコードからあの「ラジオ体操」の音楽が流れてきます。DJの方も一緒に体を動かしていて、なんとも笹塚ボウルらしいシーンです。
「ね、最高でしょう?」
と財津さん。平日の昼間にこんな楽しいことが起きているなんて、本当に最高ですね!
コロナ禍の際には一時的に営業停止を余儀なくされたものの、いち早く営業再開を決めたという笹塚ボウル。この場所があることで心も体も健康を保てているという人も多いのでしょう。地域にとってかけがえのない場所であることが、ラジオ体操をする皆さんのいきいきとした様子から伝わってきます。
人々の健康を支えるインフラとして
笹塚ボウルがこの地にオープンしたのは1973年のこと。折しも、全国を席巻したボウリングブームが終わった頃だったのだそうです。
「ブームを狙って建てたんだけど、完成した時にはブームが終わっていたんですよね。そうしたらもうガラガラですよ」
そしてその状況はいまも大きくは変わっていない、と財津さんはいいます。
「一時期は4,000あったボウリング場も、いまは500しかありません。参加人口自体は多いのですが、みんな毎週ボウリングしますか?と言ったらしないでしょう。多くが年に1回程度だと思うんです。それが他のスポーツとは違うところで、年に1回来るお客さんを待っているだけじゃ難しい」
とはいえ、笹塚ボウルがいつも満席状態なのは先ほどのフロアの盛況ぶりからも伺えます。そこにも何か特別なしかけがあるのでしょうか。
「何をやってると思います?」
と、にこっと笑う財津さん。
「お客さんに知ってもらう、来てもらうために、いろいろな企画を打っているんです。
たとえばシニアの方向けには『ボウリング教室をやりますよ』ってチラシをつくって、地域にポスティングしました。興味をもった人たちが来てくれて『やってみたら楽しかった』という体験につながったら、『今日教室に来た仲間でサークルをつくって一緒にやりませんか?』と声をかけて」
まずは知ってもらい、体験して良さを感じてもらう。地道な取り組みが今の盛況ぶりにつながっていることがよく分かります。
「あとは、ここで毎週時間を決めて、試合をしています。試合があるからこそ練習が楽しいんですよね。対戦表があって、順位が出ます。いちばんスコアを取ったのは誰か、というのが分かる。これがあると楽しいでしょう。もちろん誰もがとは言いませんが、ハマりさえすれば楽しいんですよ。そう思うと、楽しいと思ってここに通える人はラッキーですよね。定期的に運動できて、しかも楽しいんだもの」
夏といえば猛暑が続く昨今、スタッフによる見守りの元で快適に、安全に運動を楽しめるのもボウリングの良いところ。
「ボウリングをやっていると、足腰も強くなるし、転びづらくなります。たとえ転んでも、『またやりたいから』とリハビリをして戻って来る人も多いです。病気をしても、もう一回うまく投げるために頑張るんですよ。そんなふうに心の支えにもなっていると思います」
素敵なボウリング場が増えたら、もっと素敵な街が増える
お話を伺いながら、自然と実家の両親のことを思い出していた筆者。(私の地元にも、笹塚ボウルみたいなところがあったらいいのにな)と思っていたら、まさに
「次は地方でこういう場所をつくっていきたいと思っているんです」
と財津さんからの一言が。
「僕は、笹塚ボウルの存在が街の価値を上げていると思っています。ここがあることで、年配の人たちは運動ができて、コミュニケーションもできます。子どもは部活で学んだり、ステージを発表の場として使ったりできる。近くの会社勤めの人たちはここで交流できるし、若者がバンドをやればそこからカルチャーが生まれる。地方にもこういう場所があれば、その街の価値が上がるはずなんです。」
少子高齢化による医療費費逼迫などの社会課題も山積するいま、健康寿命の延伸は多くの地方自治体にとって急務です。行政主体で健康増進のための取り組みも進められていますが、そこには「楽しさ」があることが必要だ、と財津さんは言います。
「うちに来てくれる人がどうして続いているかというと、楽しいからなんですよ。楽しく安全に運動できるという点で、ボウリングは最適です。」
ちょうど館内放送では試合の成績発表が行われていました。成績上位の方の名前が読み上げられ、拍手が起こります。
「ね、最高でしょ?ぼくらのボウリング場。世界中のどこのボウリング場を回っても、朝からこんなにコンテンツがあるところはありません。これができるのはいま、世界で笹塚ボウルしかないと思います。これを地方や、さらには世界に展開していけたら、もっともっと素敵な街が増えるし、もっと幸せな人をたくさん生み出せると思っています」
と笑顔の財津さん。笹塚ボウルの魅力が日本全国に、さらに世界に飛び出す日がいまから楽しみです。
-information-
笹塚ボウル
https://sasazukabowl.com/
住所:
東京都渋谷区笹塚 1‒57‒10(3階・4階)
予約・問い合わせ:03-3374-1301
予約フォーム
https://sasazukabowl.com/reservations
問い合わせフォーム
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※利用の際には事前問い合わせや予約をお勧めします。
営業日:
無休。営業時間は
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