有史以来最高にエモい10トントラックの使い方について(いと・をかし③)
宣言します。
いきなり・だれに向かってか不明ですが、noteに週2で記事を上げることを宣言します。私の勤務先でnote委員会が発足し、今日そこで、各人のノルマを決めました。
内容的には音楽や言葉の話になると思うので、音楽や言葉が好きな方で興味を持っていただけるようでしたら、フォローしていただけるとうれしいです。
※前回投稿した記事
今日のテーマ
有史以来最もエモい10トントラックの使い方について
今回のnoteにおいて、さっきまでEric B and Rakimの『Paid in Full』の特にカッコいいフレーズを分析しようと思っていました。
しかし、自分の前回の投稿を見るに「次回は「人類史上最もエモい10トントラックの使い方」ということで、」と書いてしまっていたので、それをテーマに語っていきたいと思います。
『There Is a Light That Never Goes Out』
今回取り上げる『There Is a Light That Never Goes Out』はイギリスのロックバンド(いわゆるロックでもないけど)であるザ・スミスの86年リリースのアルバム「The Queen Is Dead」に収められています。
ファンの中でも一際人気の高い曲だと思います。
なお、スミスそのものやモリッシーやマーのことを語ると尽きないので、あくまで「リリック」をベースに分析していきたいと思います。ちなみにスミスの曲のなかで僕が一番よく聴くのは『What Difference Does It Make?』です。
どこに10トントラックが使われているのか
この曲のサビに当たる部分です。
下の太字にした箇所が「10トントラック」です。
And if a double-decker bus crashes into us
To die by your side is such a heavenly way to die
And if a ten-tonne truck kills the both of us
To die by your side
Well, the pleasure, the privilege is mine
下線部を訳すと、
10トントラックが僕たち二人を轢き殺そうとも、
君の傍らで死ねることを想像しただけで、
喜びと誇りで胸がいっぱいさ。
というような内容になります。やっぱり和訳って難しいものですね。
僕はここにめちゃくちゃエモさやロマンティックさを感じます。当然ではあるのですが、このサビに限らず曲全体がエモく、歌詞を書いているモリッシーそのものがエモ神です。
なぜエモいと感じるのか?の前に、10トントラックって実際どんなもの?
検索してみたら、このようなものでした。こちらはいすゞさんの「ギガ」という型の10tトラックのようです。世間一般的には、エモくない方ですよね。
なぜエモいと感じるのか?の前に、人はどんなものに対して「エモさ」を感じるのか?
具体的に10トントラックにエモさを感じるのかを分析する前に、一般的に、人はどういうものに対してエモさを感じるのかを振り返りたいと思います。
これについて、前回のnoteから引用します。
感情との接続がある = エモいと思う ということなのだ。なので、上記の法則が当てはまらなくても、そこに「感情との接続」があれば、きっと「エモい」と思うはず。
改めて読むと言葉足らずですが、言いたいことは、「感情」を感じさせる表現・展開があると、受け手は「エモ…」と思いそうだ、ということです。
なぜこのフレーズがエモいと感じるのか?
くだんの箇所をもう一度引用します。
10トントラックが僕たち二人を轢き殺そうとも、
君の傍らで死ねることを想像しただけで、
喜びと誇りで胸がいっぱいさ。
この一文において、感情の伴わない冷静な表現・論理展開は一切ありません。ここで言いたいことは「君と一緒に死にたい、君の傍らで死にたい」ただそれだけです。この最大限言いたいことが「感情」そのものなので、胸焼けするほどに「エモ…」と思わせます。
エモ装置としての10トントラック
前々回のnoteで書いたとおり、なにかを印象づけるには、ちいさな「?」が重要です。パッと見でわかるものよりも、じっくり見てみたり、考えたりして「?」が氷解した途端、熱い感動が人の心に鋳型を残し、鋳型を愛でることでその感動を反芻します。
究極の生・究極の価値はマインドシェアなので(ワンピースのチョッパーも言っていましたね)、すべての表現の成果はこの「?」の設計に掛かってくると言っても過言ではありません(as of 今日 、そう思っています)。
文末に歌詞全文を引用しますが、徹頭徹尾グズグズのエモとロマンと妄想に塗れています。そのうち一瞬だけ出てくる殺傷装置、10トントラック。それがただの「自動車(car)」や「銃(gun)」だったとしたら?
全編エモとロマンと妄想に塗れているからこそ、一時的に文脈を切断する舞台装置はギャップを抱えていなければならない(≒ちょっとでも想像付いたり、エモいとダメだということ)。それが「10トントラック」。
『There Is a Light That Never Goes Out』。消えない光。
局所的に例えると、
「10トントラックという全っ然エモくない存在」=影
「君の傍らで死にたいという感情」(あえて"愛"とは言いません)=光
ドイツの詩人ゲーテに有名な言葉があります。
「光が多いところでは、影も強くなる」
「影が濃いほど、光が強くなる」とも言えるのではないでしょうか。
有史以来最もエモい10トントラックの使い方だと思いませんか。
次回に向けて
今回分析してみて、改めて「詩才」という一つの才能の存在を確信しました。モリッシーすごい。いま上村彰子さんの『お騒がせモリッシーの人生講座』をちょうど読んでいて、より理解が深まります。よかったらみなさんもどうぞ。
次回は(僕の中ではついに)、この歌詞分析noteを書くきっかけになったTWICEの『TT』の歌詞分析にチャレンジしてみようと思います。
『TT』は歌詞の観点からも名曲です。
歌詞全文
Take me out tonight
Where there's music and there's people
And they're young and alive
Driving in your car
I never never want to go home
Because I haven't got one
Anymore
Take me out tonight
Because I want to see people and I
Want to see life
Driving in your car
Oh, please don't drop me home
Because it's not my home, it's their
Home, and I'm welcome no more
And if a double-decker bus
Crashes into us
To die by your side
Is such a heavenly way to die
And if a ten-ton truck
Kills the both of us
To die by your side
Well, the pleasure - the privilege is mine
Take me out tonight
Take me anywhere, I don't care
I don't care, I don't care
And in the darkened underpass
I thought oh God, my chance has come at last
(but then a strange fear gripped me and I
Just couldn't ask)
Take me out tonight
Oh, take me anywhere, I don't care
I don't care, I don't care
Driving in your car
I never never want to go home
Because I haven't got one, da...
Oh, I haven't got one
And if a double-decker bus
Crashes into us
To die by your side
Is such a heavenly way to die
And if a ten-ton truck
Kills the both of us
To die by your side
Well, the pleasure - the privilege is mine
Oh, there is a light and it never goes out
There is a light and it never goes out
There is a light and it never goes out
There is a light and it never goes out
There is a light and it never goes out
There is a light and it never goes out
There is a light and it never goes out
There is a light and it never goes out
There is a light and it never goes out
ソングライター: Steven Morrissey / Johnny Marr
ゼア・イズ・ア・ライト 歌詞 © Warner/Chappell Music, Inc, Universal Music Publishing Group
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