バイトでいい、派遣でいいと思う人ほど正社員を目指すべき理由
こんにちは。人材系企業で総務人事/派遣コーディネーターをしています、しぶやです。
私のタイムラインには、今日も「キャリアアップ」「年収アップ転職のコツ」「やりたいことを仕事にする」なんてワードが流れていきますが、そういうのに全然興味のない人ほど正社員になってほしいというお話をしてみます。(主に若者向けに書いた記事です)
正社員をおすすめする理由
おすすめ理由をおおざっぱに説明してみます。
では順にみていきましょう。
新卒だと正社員になりやすい
これはおすすめ理由というより、大前提こうだよという話なんですが。最近は効力が弱まってきているとはいえ、日本はいわゆる「新卒カード」が強いです。これはマリオでいうスター状態みたいなもので、新卒であるというだけでほぼ全ての企業の門戸が開かれます。正社員になれるチャンスが一番大きいのがこの時期。高卒や専門卒でも、新卒なら正社員になる確率があがります。(中途採用だと応募条件に「大学卒業」が入ってくるケースがあり、応募すらできなくなることも)
「Fラン」だから就活しても意味がない?いやいや、偏差値関係なく新卒カードは強い!日本の大学進学率は54.4%なので大学さえ出ていればランクはそこまで気にされないことが多いです。偏差値が低くても面接で挽回できます。(ただし大手企業/人気企業は応募者が多く、人事部でさばききれないので偏差値である程度足切りがあります。大手や人気企業に応募するなら偏差値の高い学校が有利です。)
やりたいことがない人、キャリアアップに興味のない人は、一番正社員になりやすい卒業時に、できるだけ正社員を目指すのがおすすめです。就職活動に気乗りがしなくても、実家住みでお金に苦労しなくても、できるだけ頑張って正社員になりましょう。
「YouTuberになったけど稼げないので就活したら、どこにも決まらなかった」という若者が派遣登録に来たことがありますが、YouTuberはいつでもなれます。そのために新卒カードを捨ててしまったとはもったいない。まず正社員になって収入を確保してからYouTuberになりましょう。今は副業可の正社員求人も多いです。
辞めることはいつでもできますが、目指そうと思うとなかなかなれないのが正社員です。
法律で守られている正社員
さて、ではなぜ正社員をおすすめするのか。日本では、正社員のように無期労働契約を結んでいる社員に対し、簡単に解雇ができないようになっています。(クビにできないわけではないので、クビにしにくいって感じ)
一方で、派遣や契約社員は3か月や半年ごとに契約を結びなおす「有期雇用契約」なので、会社の経営が悪化すると「契約期間満了だから更新しません」と簡単にクビにできます。
他にも、産育休は健康保険組合からお金がもらえますし、けがや病気で休む場合は傷病手当ももらえます。正社員は、休みつつ手当を受け取れる。派遣や契約社員だと契約期間満了と告げられて終わりになってしまう可能性があり、そうなると手当の申請もしてもらえません。
また、正社員は福利厚生が充実している場合があります。正社員月給23万と、契約社員月給30万。ぱっと見、契約社員のほうが給料がいいですよね。
しかし、侮れないのが福利厚生と賞与です。
毎月の額面は契約社員のほうが7万円も高いのに、正社員のほうがトータル年収は高くなります。見た目の月給だけに惑わされては泣きを見ます。
中途採用は実力重視
解雇されにくい、待遇が良いだけではありません。別の仕事をしたいと思った場合でも、正社員は有利です。企業が人を採用する際、正社員雇用の経験がある人を好む傾向があります。アルバイトしか経験がない場合、書類審査すら通らないことも。そう、世は即戦力重視社会。
卒業後に新卒求人に応募することはできません。中途採用枠に応募することになります。中途採用枠は、すぐに活躍できそうな職歴のある方を採用します。正社員からアルバイトにはすぐなれるが、アルバイトから正社員になるのはとてもむずかしい。
でもまだやりたいことがよくわからないし…というのであれば、とにかく正社員になって、それからやりたいこと探しをするのもいいですね。その過程で事務から営業になりたい!など職種変更が必要になった場合、正社員ならば異動願を出すこともできますし、営業担当の仕事を少しずつ手伝いながら、職務経歴書でアピールできるように職務範囲を広げることもできます。
社労士試験を受けたい、英検を受けたいといった、受講にお金がかかる場合も、正社員であれば研修費などの名目で一部補助が出ることもあります。
また、同業界で職種を変えて転職する際も、正社員は有利です。例えば、IT企業の事務職をしていて、人事に転職したいと思った場合。人事経験がなくてもIT企業での業界経験があることをアピールすれば、業界知識があると判断され、未経験でも採用が決まることも。
年齢差別があるという事実
今後は人材難で是正されていくはずですが、今の日本では年齢差別がひどいです。アルバイトしか経験がなくても、20代であればまだ道はあります。しかし30代に入ってくると、正社員経験が1社もないと正社員での就職はほぼ不可能と思った方がいいです。
そろそろ安定した正社員になるか…そう思っても、30代での就職は、過去にどんな仕事を成し遂げてきたのか詳細に聞かれます。何歳でも就職が決まる人というのは、実績がきちんとある人です。38歳ではじめて正社員になったという人を知っていますが、この人は長年のフリーランス活動で確かな実績がありました。我々凡人とは生きる世界が違います。
「派遣を転々とするからいいよ~派遣は責任の重い仕事もないし、気がラク!」と考えていても、派遣先がすぐに決まるのは30代までです。40代に入ると派遣先がぐっと減り、50代になると専門派遣以外ほぼないと思ってください。50代で派遣先が決まるのは、それまでの間に正社員で実績を積んできた人だけです。50代からのアルバイト、体力的にも相当きついですよね。
人材の流動性が上がっていくのはまだまだ先の話だと思います。やりたいことがない、自分のスキルに自信がない、そういう人ほど早めに正社員になっておくと安心できますし、会社によっては研修がしっかりしていて結果的にスキルが身につくところもあります。
ブランクがある場合の選択肢が広がる
昔に比べて共働きが増えたとはいえ、子育てで退職、夫の転勤に帯同して退職…女性は家族をもつと退職を迫られる可能性があります。子育てが落ち着いたから再就職したい、子どもの学費がかかるようになったから再就職したい…そんなとき役に立つのが正社員経験です。
基本的に今の社会では、離職後数年が経過している人は「ブランク人材」と呼ばれ、再就職がしにくいです。しかし、前職が正社員であれば選択肢を広げることが可能です。
アルバイト経験のみでブランク人材になると、一般の企業勤めは相当難しくなります。スーパーでレジを打つとか、清掃の仕事をするとか、肉体労働に近いものが選択肢になってきます。
共働きを目指すならやっぱり正社員
私は2児を育てているワーママです。ワーママ歴7年で思うのは、正社員でなければ共働きは無理だったなということです。正社員だから、解雇の不安なく産育休が取れたし、復帰後も時短勤務やリモートワークといった働き方の調整ができました。子どもの看護休暇も付与されるし、賞与もあります。
もちろん、仕事で成果は出さねばならないし、権利だけ主張していては社内の人間関係も悪くなります。でもそれは、アルバイトでも契約社員でも同じことです。どんな雇用形態でも仕事の責任は果たす必要があるでしょう。
ワーママだけでなく、身体が弱い人や、家族の介護をしている人も、正社員という守られた環境を目指すべきだと思います。
自己責任論が叫ばれがちな日本だからこそ
長い文章をここまで読んでくださってありがとうございます。
そんな意識の低い人が会社に居座っているから生産性が上がらないんだ!という批判もあるともいます。私も、独身の頃に比べると読む本の量も減りましたし、勉強時間も減りました。生産性も低いかもしれない。
でも、人はだれしも老化します。年齢を重ねると脳の機能も落ちるし、プライベートでいろいろなことも起こる。常に仕事を頑張れるわけではないと思います。自己責任論が叫ばれがちな日本だからこそ、正社員になって自分の食い扶持は自分で何とかする。それも立派な選択だと思います。
今は一定年齢を過ぎると管理職を降り、働きぶりに見合った給与に抑えたり、嘱託にする企業も出てきています。在職期間が長い人からと威張っているのは論外ですが、生産性が落ちてもその範囲内で生き残れる道があったらいいなと思います。
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