憲法改正、侮辱罪厳罰化〜参院選「表現の自由」に関する立候補者アンケート(1)
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6月22日公示、7月10日投開票の参議院選挙で立候補予定者のうち、「表現の自由」について主要政策で掲げたり、訴えの中で取り上げている方々に向けてのアンケートです。東京都選挙区の有権者が投票できる東京選挙区と、全国比例区の立候補者に限定したものです。アンケートの責任は、渋井哲也(フリーライター)。6月30日のオンラインイベントでも使用させていただきました。
憲法21条の「表現の自由」について、意見があればお願いします。
各候補者のコメント(回答順)
ふじすえ健三(自民、比例) 日本国憲法が保証する人権の大きな柱であり、改正すべきではありません。
松浦大悟(維新、比例)表現の自由は民主主義の根幹である。
くりした善行(立憲、比例) 与党より、参院選改選後に憲法改正を発議することが明言されており、その中で表現、言論の自由が大きく制限されかねない内容となっている。憲法21条については堅持されることを求め議論に臨んでいく。
赤松健(自民、比例) 現在の憲法21条は、何らの留保なく、「一切の表現の自由は、これを保障する。」との力強い規定であり、守りぬく必要があると考えている。自民党改正草案の21条については、表現の自由に対して、「公益」及び「公の秩序」による留保を付するものであり、到底賛同できない。このようなものが、議員になったときに党内から再度発議されそうになったら全身全霊をかけて阻止する。もし成立したら議員を辞める。
たるい良和(国民、比例) 表現の自由はエンターテイメント以前に、民主主義の基本中の基本
村田しゅんいち(社民、比例) 「表現の自由」が保障されていなければ、12条「普段の努力」の充分な行使ができません。人権の要に位置づく権利だと考えます。
にひそうへい(共産、比例) 憲法21条は戦前の日本の反省から定められたものです。大日本帝国憲法は、集会や結社の自由を認めていましたがそれは法律の範囲内のことで実際は新聞紙上レイヤ治安警察法、治安維持法でおよそ自由とは言えないものでした。現行憲法は一切の表現の自由を保障することによって、国民が主権者としての役割を果たし日本の民主主義を前進させることを期待しています。
要友紀子(立憲、比例) 法や多数決で制限することが決してあってはならないのが憲法21条の表現の自由です。 また、特定の表現物や作品、創作が、存続の危機にさらされるような行き過ぎたゾーニングについても慎重であるべきと考えます。なぜならば、憲法21条の表現の自由には、ほかの人権や権利の行使に関してよく付け加えられる「公共の福祉」という言葉が一言も入っていません。つまり、憲法の言う表現の自由というのは、公共の福祉に反しようが、反しまいが、表現の自由が大切ということを謳っているからです。
荒木ちはる(ファーストの会、東京) 「表現の自由」は国民一人ひとりの自己実現に資すると共に、表現を受け取る国民の知る権利にも資する、極めて重要な基本的人権の一つです。萎縮効果が生じることがないよう、その規制は最大限の配慮をされなければなりません。 例えば、都政においては、他県のようなゲーム規制条例に関し、都議会において東京都から「科学的根拠に基づかない内容で、条例による一律の時間制限などを行うことは考えていない」旨の答弁を得ています。子どもたちには、情報リテラシー(ネット・ゲームとの関わり方等)の学びの支援が極めて重要と考えます。
刑法改正で「侮辱罪」が厳罰化されたことについて、表現の自由の観点から意見があればお願いします。
ふじすえ健三(自民、比例) 従来の侮辱罪の刑罰が非常に軽く、バランスを欠いていたことは確かです。しかし、虚偽でない事実の指摘によっても侮辱罪が適用され得るという点については、公権力による乱用がないよう注意深く見守る必要があります。
松浦大悟(維新、比例) 一定の評価はするが公人への対処など懸念が残る。維新は対案として表現の自由にも十分配慮したインターネット誹謗中傷対策法案を議員立法で提出している。
くりした善行(立憲、比例) 実質的に科料9000円上限など、侮辱罪の実効性を疑問視することは当初からあった。ネットの誹謗中傷の問題はあり、実効性を高めることは大切。一方で厳罰化されたことによって、警察による逮捕も可能となり、恣意的運用の懸念はました。政治、行政批判については個人に対するものなどとは違い、社会的に許容されるべきレベルが異なる。自分が批判されたことで訴訟をちらつかせる公人などもいるが、そうしたことを後押し濫用を防ぐためにも侮辱の定義についても踏み込んだ議論が行われるべき。
赤松健(自民、比例) 表現は自由に行うことができなくてはならないが、その表現によって他者の権利利益を侵害した場合には責任をとらなくてはならない。 改正前の侮辱罪は、法定刑が拘留又は科料のみであったため、公訴時効が一年だった。ツイッター等の海外のプラットフォームを利用して行われた侮辱行為は、捜査機関が投稿者を特定するのに一年以上かかってしまうことがほとんどで、そもそも被害届や告訴状も受け取ってもらえない、仮に受け取ったとしても、時効期間の経過で起訴できないという問題を抱えていた。 今回の侮辱罪の法定刑の引上げは、社会的評価を毀損された被害者の救済の観点から評価できる。 一方で、表現が萎縮する可能性もあるので、法の適切な運用がされるよう常に注視し、対応しなければならない点については、今回の附則に基づき、3年後に必要な措置を講じたいと考えている。
たるい良和(国民、比例) 侮辱罪の適用の線引きが明確でないので、思い通りの表現することに萎縮してしまいかねない。
村田しゅんいち(社民、比例) ネット上の誹謗中傷・差別・デマに対する法規制は必要。ただし、社会的評価の低下を要件としない侮辱罪については、とりわけ非対称な権力関係の場合に表現規制の装置として使われる可能性があり、2年後の再検討に向けて運用の注視と場合によっては抗議行動をしなければならない。
にひそうへい(共産、比例) 2019年の参院選のとき、安倍首相(当時)の演説中に「安倍辞めろ」「増税反対」などのヤジを飛ばした聴衆が、法的根拠がないまま警察に強制的に排除されました。この事件は今年3月、札幌地裁が表現の自由を侵害したものとして断罪しました(道側は控訴)。侮辱罪の厳罰化は、権力者や政府の政策に対する批判・批評を「侮辱」と認定し、捜査当局が恣意(しい)的な判断で規制・処罰できるようにするものです。明治時代に自由民権運動を圧殺するために導入した讒謗律のようなものはまったく評価にあたいしません。
要友紀子(立憲、比例) 表現の自由、言論の自由の観点から、侮辱罪に限らずですが、定義が非常に難しいものを法律にすることに反対です。また、一般の市民を侮辱することと、権力のある立場の人を侮辱することは意味が違うため、そこを切り分けて考え判断していくのが大事と思いますが、そのへんのことがなおざりになっている以上、厳罰化には反対です。
荒木ちはる(ファーストの会、東京) インターネット・SNS等において、個人に対する過激・悪質な誹謗中傷事例が生じているのは事実であり、その対策の強化は重要と考えます。他方で、政治家や法人への批判や、公益性のあることについては適用の除外や特に慎重になるように気を付けるべきです。表現、言論の自由の観点から過度な萎縮効果を生むことがないよう慎重な法運用が必要です。