心の崩壊「ミスミソウ」【ホラー映画を毎日観る人】(326日目)
「ミスミソウ」(2017)
内藤瑛亮監督
◆あらすじ
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父親の仕事の都合で田舎に引っ越してきた野崎春花は部外者として扱われクラスメイトから壮絶なイジメを受ける。常に自分の味方でいてくれる同級生の相場との交流だけが心の支えだった。ある日、春花の留守中に何者かが野崎宅に火を放ち両親は死亡、相葉がなんとか助け出した妹も意識不明の重体となる。これまでの凄惨なイジメに耐え続けた春花の心は崩壊し、復讐を決意する。
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原作は押切蓮介先生の漫画「ミスミソウ」で、もちろん拝読させていただいておりました。
原作も映画も凄惨なイジメのシーンや殺害シーンが非常に多く、メンタルに余裕がある時でないと中々にヘビーな作品ですがとてつもなく面白いです。
原作では登場人物たちの目が非常に特徴的で
“妹や相場といるときの春花の生き生きとした目”や
“同級生に復讐を果たすときの虚ろな目”
これを
春花役の山田杏奈さんが完璧に表現していました。
唇を噛み締めながら相場の前で涙をこぼすシーンは今までに見た映画の中でもトップクラスに美しかったです。
冒頭でも言いましたがイジメのシーンも復讐のシーンもかなり重いです。イジメはもはや犯罪レベルで、放火で両親を殺害するだなんて常軌を逸しています。
そのため感情移入する対象はもちろん春花なので復讐にも当然正当性があるのでストーリーに違和感が生じません。
復讐シーンも出色の出来でどのシーンもただのスプラッターになっておらず、まるで春花の憎悪や悲しみを具現化しているかのような繊細さを兼ね備えております。真っ白な雪に飛び散る真っ赤な鮮血はもはや“グロ”や“残酷”ではなく綺麗とすら感じます。
そして個人的にすごくいいなと思ったのが
いじめっ子をただのいじめっ子としてではなく一人の中学生として描いているという点です。
低予算のB級映画なんかだと人物の描き方が薄っぺらく、いじめっ子は全員もれなく何のアイデンティティもないただのいじめっ子役でしかないです。
今作ではいじめっ子も一人一人が明確な意思を持つ普通の中学生でそれぞれにしっかりと春花をいじめる理由があります。荒れた家庭環境への怒りをぶつける者、いじめなければ自分がいじめられる者、歪んだ恋心を一方的に押し付ける者、異性の気を引くための行為がエスカレートして引くに引けなくなった者
もちろん許されることではないけれど彼ら彼女らもただの子供で帰る家もあれば親もいます。このあたりをしっかり描いているので登場人物一人一人に奥行きが生まれ、より深みのある作品になったように感じました。
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