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年末年始、事始めの切なさ
大晦日、家の戸を叩く。
戸を開けた先には満面の笑みの母。
問答無用で落ち着く。体の力が抜ける。
住み慣れた場所のただならぬ安心感を感じた。
いつもの通り、祖母との散歩。
近頃はあまり歩きたがらないという。
自らの意志に反して体の自由が効かなくなるつらさはいかほどか、靴を履く時によろけて体を戸にぶつけ、「どうしてよろけるんだ」と呟いていた。
何度も歩いた道を時間をかけてまた歩く。
お墓の間を通るのが近道だ。
細い石畳の上に、「きれいな色ね」と季節外れに赤赤とする落ち葉を見つけ、ゆっくりと拾い上げる。
もともと小柄な体は丸まってさらに小さい。
私を見送る母と祖母の並ぶ姿はいつだって切ない。真っ直ぐこちらを見る顔はいつも私を案じている。ときたま現実を突きつけるように諭す言葉も、すべて私を案じてのこと。
私はいったい何ができているのだろうか。
将来自分たち亡き後、私が自立して暮らしていけることを今ただ望み憂う彼女たちに、私は私のためにやはり旅立たなくてはならない。