「書く習慣」1ヶ月チャレンジ15日目 オススメの映画「銀河鉄道の父」
役所広司さん主演の映画、「銀河鉄道の父」を見ました。
(1)銀河鉄道の父 あらすじ
簡単なあらすじを紹介します。
この物語は、宮沢賢治のお父さん清次郎の視点から描かれています。
清治郎は質屋を営んでおり、長男の賢治にも深い愛情と期待をかけて育てるんですね。
いつかこの質店を継いでもらおうと。
しかし、清治郎の思い描いたとおりにいかなかったようで…。
地元で学問が抜群にできた賢治は、高等学校に進学を希望します。
また、高等学校では人造宝石に興味を持ちビジネスを始めたいと言い出します。その後、祖父の死や孤独を感じ始め、日蓮宗に改宗をしていくのです。
私たちは小学生の国語の授業で宮沢賢治の作品に触れますよね。
いちばんは「雨にも負けず」の詩。
この詩をはじめて読んだとき、私は宮沢賢治のことを、めちゃいい人!!と思いました。誰に対しても謙虚で、困っている人に手を差し伸べる。そんな賢治を想像していたんです。
ですので、清治郎の期待に反発し、自分の情熱を貫いていく賢治の姿が意外でした。家族から大切され、自分も家族を大切に想いながらもやりたいことを主張していき、時には取っ組み合い、清治郎にぶん殴られて。そんな賢治の人間らしさに共感してしまうんです。
(2)思い浮かんだのは我が父の葛藤
この話で思い出すのは私自身の父の話です。
私の父は、新潟県の田舎の小さい町で長男として生まれました。
祖父は雑貨屋を営んでおり、戦後の復興の時期でモノが飛ぶように売れたことがあったそうです。父は期待を込めて育てられ、大学へ進学し上京しました。地元で優等生としてふるまってきた父は、この東京生活で多くの刺激と経験をすることができたと話します。本心ではそのまま東京に残って就職をしたかったところに、祖父から地元の企業に就職の話をつけられて、跡取りとして泣く泣く戻ってきたことがあったようです。
―家の父は、反発できなかった賢治なのかもしれない。
いや、この頃の日本のすべての地方出身の長男は、みな葛藤に苦しんでいたのかもしれないなと思ったんです。長男だった父親が、長男である我が子にも同じような期待をかけていくという繰り返しがあったのではないでしょうか。そこには疑問もないし、そうするものなのだと。
だからこそ、人造宝石や宗教という、明らかに父親からは反対されそうなものに手を染めながらもやりたいんだと父に頭を下げる賢治に対して、並々ならぬ情熱と、頑固さを覚え、応援したくなってしまうんです。
(3)祖父の死の夜
その後、私の父は、地元の企業で定年間近まで勤めあげました。
祖父が亡くなったとき、父はたまたま出張に出ていて、死に目に会うことができませんでした。
その夜のこと。祖父の亡くなった体に寄り添って、父と私はこんな話をしました。
―お前は、いい経験ができたなあ。
おじいちゃんが元気だったときから病気になってだんだん自分のことができなくなっていく姿を見ることができたからな。人はいつか死んじゃう、っていうことを見届けさせてくれたんだよな。最後まで立派だったな。
と、そんなことを言いながら、目の前で声にならないくらいに泣き出したんです。
父の涙を見たのは、それが初めてでした。父はあのとき何を思っていたのだろう。これは想像でしかないんですが、死が悲しい、さみしいという以上に、祖父と父の間に、家族でも知り得ないくらいの深い絆と、長男としての哀しみを共有していたことを感じたんです。
いま思えば、祖父の死をもって、父の長男としてかけられていた期待から解放されたような気持ちもあったのかもしれません。
(4)父が開いてくれた道
かくいう私も長男です。
父からは、家に残って欲しいという強い愛情と期待を感じて過ごしてきました。しかし、結果的にいまは家を出て離れた土地で働いています。
父は私が家を出ることを最終的に認めてくれました。
―いろいろ思ったんだけどな、俺はお前がどこにいようが、思いっきり仕事ができる環境にいれば、それでいいと思ったよ。それが1番。
そう言って、線路の向こうで手を振って送り出してくれました。
―祖父の期待に応えて長男の仕事を全うした父は、自分の息子に新しい道を開いてくれた。
そんな父のことを愛おしく、そして感謝しています。
さて、私は我が息子に何を伝えていこうか。
そんなことを考えるきっかけにもなった、「銀河鉄道の父」。
また少し経った後で、もう1度見返してみたいと思っています。