そこを急ぐことが成果にならないってことをどうしてわからないんだろ

「まかぬ種ははえぬ」
「急いては事を仕損じる」
「急がば回れ」

昔からのことわざ、言い伝えって、案外真ん中をついていることが多い。
最近だと防災の話ではよく言われているよね。だって100年スパンとか長い間をおいて災害が来るので、生きて伝えていけることって限りがあるから。

という、防災のような話じゃなくて、
冒頭の３つ。
結局は真理だなあとこの頃はよく思う。でも、それを全く理解しない人が山盛りいる。

仕事で「質問力」をテーマの研修をかれこれ10年くらいやっている。なかでも、とある組織の「自由参加研修（6時間）」が一番長くやっているもので、今年もその場で印象深い状況を見た。

研修の流れはこんな感じ。
・体感ワークでコミュニケーションの基本を知る
・わかりあうための「質問」の意義と意味
・質問演習（簡単な分析）
・質問の種類（２+４）解説
・相手の価値観を知る意味と意義～演習
・質問演習（少し難しい分析）
・やってみる（ケースを使って＆自分の課題で）
・ふりかえり＆質疑応答

参加者はこのテーマに長けた人ではないので、かなり丁寧にコミュニケーションの入り口からじわじわと、徐々に「だからちゃんと聴くことに意味がある」ということを体感していただき＆意味を説明し、という流れを繰り返している（3回転くらいしてる）。

でも最後の最後に「やってみる」になって崩壊する（笑）。
質問しよう、相手をまず理解しよう、と言っているのに何が起きるかというと「相手をやりこめよう」「相手にわからせよう」、つまり説得と論破と命令になる。あちゃ…って感じ（笑）

もちろんその場でいちいち見つけてフィードバックする。
というか、私じゃなくてもみんな「自分じゃない人のやらかし」は見つけられるようにはなる。で「あれはちょっと」って言う。ただこの人たちは「じゃあどうすればいいか」までは言えないことが大半なので、そこに私がにじりよる。

その流れでとても印象深かったのは、ある人（ミドル管理職世代）がこんな風に言った（その人のロールプレイは「少しも聞いてなくてすぐに解決策を次々言う」っていうNGタイプだった）。
「先生が言うことはわかります。でも、実際にそこまで時間かけられないんですよ」と。
つまりその人は、私が言う「相手の真意をちゃんと聞いて、相手が自己決定できるように問いかけていこう」、ということを「自分がわかっている答えを言わないで、相手に（こちらが求めることを）答えさせるためにまわり道をしろ」と解釈したということらしい。

つまりその人は「自分は答えをわかっている。答えを教えてそのとおりにさせれば効率がいい」と言いたいらしい。
でもね、それについていくつか疑問がある。

１、自分の答えは本当に最上の正解なのか
２、あなたがやらせようとすることを伝えたら、相手はそれを「心から理解して自分ごととしてやる」となぜ思えるのか

世の中のあっちもこっちも、この誤解はある。
家庭でも学校でも企業でもどこでも。
「こうしておけば間違いがない」と言いたがる人がいて、それを従わせたくて「どうやって言えば動きますか」ということばかり気にしている（ということをよく聞かれる）

でもね（研修でも言ったけど）、
人は誰かに言われたように動きたい、っていう生きものじゃないよ。
小さい子も大きい子も。
判断材料はもらいたいかもしれないけど、それでも「自分がそうしようと決めた」ときの人はちゃんと動く。じゃないときは「やれって言われたから（コスパ重視で）最低限やっておこうかな」くらいになるんだよ。

…という話がなかなか伝わらない。

で、冒頭の昔の人の教えに戻るのよ。
「まかぬ種ははえぬ」
「急いては事を仕損じる」
「急がば回れ」

あなたが今、そうさせたいと思うことをそのままさせようとする。
で、その目の前の課題はとりあえず片付く。
けれどね、それ、その人は「言われたから（どうでもいいけど）やっただけ」であって、「これはこういう意味があって、だったら次のこの場面ではこうしたらもっといいかもな」みたいに考えて自分ごとにして動くようにはならないってことだよ。毎回あなたが指示しなくちゃやらないのよ。
それ、回り回って「コスパ悪い」んだけどわかるかな？

遠い昔ダメ上司がいて、その人がいつも言ってたんだよね
「自分が指示しないと誰も動かなくて困る」って。
そりゃそうだよね、って思う。その人はいつも部下に考えさせる前に「言われたことをやれ」って言ってた人だったからね。

目先のことに追われて大事なことにちゃんと力を注がないと、永遠に「わかっている自分」だけが忙しくて終わらないんだよ、ってことをそろそろ気が付いてほしいなあ。


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