「うちの子は〇〇ができないから」とつい言いたくなるかも、だけど違う。

人の細胞は4か月で入れ替わる。

なーんて話はよく聞くよね。
一方でわたしたちはよくこう言う。
「わたしは〇〇ができない」とか「●●が苦手なんです」とか。それはまあ自己理解の範疇でもあり、謙遜も含むかもしれない。はたまた「やりたくないことを避けるための方便」でもあるだろうなと思う。

一方で親が我が子のことをそうやって言う場面もよくある。
「うちの子は~~ができない」とか「うちの子は~~が苦手なの」とか。それを謙遜で他人に言う、だけじゃなく、子どもの前で他の家族や他人に「◇◇ちゃんはーーーが苦手だよね」なんて言ったりもする。

これって、なんのために言うのだろう?

◇◇ちゃんは…と言うときその子は25歳とか30歳ではない。
せいぜい10歳とか、13歳とかそんな感じ。下手すると5歳とかだったりもする。こうやって文字で書くと読み手のみなさんの中には、こう思う人もいるだろう「そんな年で、そんな風に決めるの?」と。けど、日常はこんなことにあふれている。

昔教育委員会の仕事で子どもたちが取り組むプロジェクト型の学習事業を立ち上げた。やりたいことがある子どもたちが手を挙げて参加する自主事業だったのだが、ある年の最初の集合ミーティングの場で、こんなことがあった。その日、実行計画を立てる作戦会議の場で、とある小5の男の子が自分のやりたいことを実行するためのプランを綿密に書いていた。わたしがその子に休憩中に「すごいね、それ。どんなふうにやるの?」と尋ねると、本人がちょっと言いよどんだ。わずかの時間だが「うーん」と考えていたその次の瞬間、後ろにいた母親がわたしに「うちの子は話が苦手なんです。上手く話せないので!」となぜか主張した。いや、発表の場とかじゃない(単なる休憩時間)し、と思い、気にせずもう一度その子に聞いた。「うん。なんでもいいよ。どんなふうにやるの?」と。すると即母親が「それは~~で…」と説明しようとした。「うちの子は自分で上手く言えないので」とも付け加えてきた。私の横にいた別のスタッフが「お母さん、そんな…」と言いかけたので、お願いしてそのままスタッフにお母さんを会場の外に連れだしてもらった。残ったその子にわたしは話を聞くことができて、その子は訥々とながらも、ちゃんと話を聞かせてくれた。十分よくわかった。待っていたらいいだけだった。母親の介入は何の意味があったんだろう。



親が我が子を前にして「~~が苦手で」というときにも、それを言って何がいんだろう?とよく違和感を覚える。言われた子どもは「わたしって、苦手なんだ」と認識を強化するだけであって、成長の阻害要因でしかない。「苦手なんだ。よし、頑張って克服しよう」とはならない。だって、そう言っているとき親は「…というのがうちの子なんです」と固定化しているから。

でも、人はだれだって、細胞が入れ替わるようにずっと変化し続けている。その変化の中には「成長」だってある。なのに初期のころに「この子は〇〇が苦手だわ」と見立てたそのことは、あたかも「うちの子=〇〇が苦手な人格」と固定化してしまうことになっている。どうしてそんなことする?

キャロル・ドゥエックの本「マインドセット」の中に2種類の考え方が紹介されている。一つは「人は変わらない=fixed」というマインドセット、もう一つは「人は成長し続ける=growth」というマインドセットなのだが、どうも「わたしは〇〇ができないので」とか「うちの子は~が苦手なので」と語ることは、前者の「すでに固定化された、もう変わらないもの」という考え方になっているよね。その考えで我が子に接していたら「自分は頭が悪いからだめなんだ」「自分は人前で意見が言えないタイプなんだ」って信じ込むかもしれない。それってなにかいいことあったっけ?本当にそう?

実際には、たとえば小学校の同級生に20年後に会うと「え?あの子が?」みたいな変化を遂げていることなど、珍しくもない。

世界の高校生の比較調査データを見るとつねに、先進国の中でぶっちぎりに「自己評価が低くて、自信がなくて、社会を変える力があるとは思っていない」のが日本の子どもたちらしい。それは謙遜の美学なのか、最初から期待値調整する処世術なのか、はたまた本当に自分たちの存在に無力感を持っているのか…。

それを見て「なんで今の子は」とか「悲しい」とか言う前に、大人自身はどうなのさ、ってことを考えたほうがいいよね。大人は自分を変化し成長する存在だと思っているのか、そして、子どもたちを変化し成長する存在だと思っているのか、と。

少なくとも我が子の「今できていないこと」は、「今」できていないだけなんだってことは、忘れないでほしいなあ。

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