一人一人の人生だけれど、みんなに起きていることもある。
キャリアコンサルタント、という仕事をしていると、ときに「この話はこの間のあの話と構造が同じだな」と思う相談場面に出会う。でもそういうとき、そのことを私に話してくれている方は「こんな情けない自分って」とか「わたしはこんなにダメだ」とか、そんなふうなスタンスでいたりする。
いやそれ、そんなことはない。
キャリアの話には2つの側面があって、1つは「人はみな固有の物語を生きている」ということ。だからこそ、それぞれの物語は大切だし「わかったふうに処理する」なんてことは出来ない。当たり前のこと。でももう1つは「こういうことは◎◎な環境・時期の人に起きていること」だよね、ということで、そう、それらは「キャリア理論」の中でもちゃんと説明されているある種の法則だったりもする。
人の人生は唯一無二のものだけれど、でも、何かにつまづき上手くいかないとき「こんなダメなのは私だけ」ということはない。そういうことは「起きやすい時期と環境」のなかで他の人にも起きているのだってことは、安心してほしいし、だから解決する方法はある。それを知ることはとても大切。
私たちキャリアに関わる人間の仕事で一番やってはいけないことは、ちょっと話を聞いたくらいで「ああ、これって~なアレね」というような「わかったつもりのカテゴライズ」「上からいきなりアドバイス」だ。そう思ったとたんにバイアスがかかり、話をまっすぐ聴くことができなくなり、目の前の人の理解ではなく、自分の頭の中にあるパターンに当てはめるような聴き方になり、真の理解ができなくなるから。
経験上、どんな人も最初の印象で感じた「ふ~ん、あれね」と思った通りであることはない。これはホントにそう。ここダイジ。
それとは別に、やはり「キャリアの発達課題」…つまり「組織の中でこんな立場だからこその壁」とかいうことはある。たとえば…
・新卒で初めて社会に出たとき(リアリティショック)
・産後の女性
・中年期(中期キャリアの危機)昇進葛藤とか
・定年前後(役職定年なども) etc…
※参考「キャリア発達とストレス」(金井篤子)
こういうときって、課題が出てきやすくて、それまでスムーズだったことが上手くいかなかったり、大きな壁にぶつかったり「しがち」(みんながそうなるわけではない)ということでもある。
壁は悪いものではない。私に言わせれば「順調だね」でもある(そんなこと言われてポカンとしたクライアントさんはたくさんいる・笑)。
でも、初めてのことで「今までうまくいっていたこと」がうまくいかなくなり、「自分がこの上もなくダメになった」気がしたり、「どうにかしたいのにうまく決められない」と思ったりして、人によっては「自分がダメ」だと悩んでしまうし、「現状を全部否定して、リセットしたい」と思ってしまう人もいる。決して楽ではない。
けれどね、その壁は(感じ方の差はあるけれど)多くの人が通ってきていることでもある。そしてその通り方を運よく知った人、自然にサポートを得られた人と、一人思い悩んでしまう人がいるんだろうと思う。多分私はそこで思い悩む人に出会う(ご相談を受ける)ことがものすごく多い。私の年齢と経験とキャラがそうさせるのかもしれないが(笑)、お役に立てるのであればこんな嬉しいことはない(だから時にはかなり具体的な話をする。上司にこんな言葉で交渉しようとか、部下をこんな風に巻き込もうとか。この辺りはキャリアコンサルタントを逸脱しているかもしれない)
この課題は転職するとかしないとか、どの道を選ぶにしても関係ない話で、ある意味逃げても逃げてもまたぶつかってしまうことでもある。手段として「転職」を選ぶこともあるだろうけれど、そのまえに「何が壁なのか」は一緒にちゃんと確認しておく必要があると思っている。そこをお手伝いできるのは(転職紹介を目的にしない)キャリアコンサルタントの強みだからね。
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