「ひとり」に代表させてしまうクセ、そろそろ気づいて変えていこう

今から10数年前、市役所で道の駅をつくるプロジェクトのメンバーになったことがあります(という話はよく書いている。あんなにやりたくない仕事がこんなに大量のネタの宝庫になるとは、人生何が奏功するかわからないw)。今日はまず、そのときに味わった「それは無理でしょ」というエピソードから。

プロジェクトは地域の住民代表の人、出店する地元の業界(農産物だの工芸品だの)の代表の人、金融機関とか商工会議所とかその手の人、と、市の偉い人たち(◎◎部長とか)が意思決定する委員会のようなものがあって、その下の実行部隊にわたしはいました。ま、事務局兼実務担当者ってやつです。偉い人たちに決めていただく資料を作り、会議の進行補助をしたり議事録作ったり、ということをやってましたが発言する機会は(事務方なので)基本ありません(資料作って根回しして上司にしゃべってもらう)。
ところが、あるとき、出席者のとある業界の偉い人が突然「柴田さん、女性としてどう思う?」と話を振ってきました。

その方は以前からいろんな現場でご一緒してきていて、わたしのことは「振れば何かしゃべるタイプ」と認識していたと思います。で、その時の話題が「お店のコンセプト」で、その方は比較的参加者の中ではアイデアのある方で、いろんなご意見を言う珍しいタイプでもあったので、お店のコンセプトの事務局案にちょっと疑問があったようです。でも、他の委員のみなさんは「?」という顔をして、こっちを見ました。そりゃそうw。

わたしに振った理由は、その手前に出していた資料が「道の駅のメインユーザーは50代女性」と書いてあったから、のようです(当時のわたしはギリ40代・笑)。

ええ、その場には20人くらい人がいましたが、わたしが唯一の女性だったんです。でも、わたしはその問いにはふさわしくなかった、と自分で思っています。なぜって、道の駅に(業務以外で)行ったことがなかった(興味がなかった)のですから。

「さあ、わたし個人としての意見はともかく、ただ(事務局として)この案のよいところは…」と事務局提出案をくわしく説明して話を進めましたが(だってわたしが作った案だし・笑)

なぜ、たまたまそこに唯一居た女性というだけで、女性を代表した意見を言えると思うのでしょうか?そこに山ほどいた男性の中の一人に「男性を代表してどう?」とはいいません。そういうことはどうして無意識に起きるのでしょうか。これは、男女のバランスが逆の場でも「男性を代表して」と聞かれます。海外に行けば「日本ってどうなの」と聞かれるでしょう。日本に旅行に来たフランス人に「フランスでは日本のことなんていいますか」とか聞きますよね。でも、そこにひとりいるからといって、属性を代表して語れるでしょうか。また、その語りやふるまいが、その属性を代表して「すばらしい」とか「だめだ」とか言ってよいのでしょうか。

けれども無意識にそういうことをしてしまいがちです。わたしたちはそんなに常に冷静でもなければ、無意識バイアスを意識しているわけではないからです(無意識バイアスなんだから意識してるわけない・笑)。わたしたちの判断ってそういうとこあります。

そして、「昔女性を管理職にしようとしたら、いやだって言うからさ」とか、「女のマネージャーはヒステリックでうまくいかなかったんだよ」とか、n=1の事例を「全体を代表する」ように考えて思い込むことはしょっちゅう起きています。男性にはAさんという素晴らしいリーダー、Bさんというだらしないリーダー、Cさんという冷たいリーダー…いろんなタイプがいて「まあ、ダメな上司に当たったなあ」と個別の事例として語られます。そういうことは、逆のバランスならば(たとえば保育士とか看護師とか)逆のことが起きます。一人の男性保育士がなにか問題を起こしたら、「だから男性の保育士はダメ」と言うように(実際には個人の問題ですよね)。

よく男女の比率をそろえていこう、と言う提案に対して「数合わせはよくない」っていいます。「きちんと人を見て選ぼう」とか「属性によって選ばれたとは言われたくない」とかいうのもわかります。だから原則としては合意なんですよね。でもね、これには前提条件があって、その選ぶ場はほんとうにまっすぐ実力を見られる人がそろっていますか?その実力ってやつは、なにか客観的な指標で測れるものですか?それはオープンで公平になっていると言えますか?

…だいたいそこが底抜けにゆるゆるなんですよね。だってほら、医大の入試なんて、ずぶずぶだったでしょ(苦笑)。しかもバレてからも正当化しちゃってたし。

あ、今日は国際女性デーですが、別に女性の話だけを書こうとしているわけではないです。わかりやすい「間違い」だから、女性の例をあげているだけです。ク〇フェミがー!とか言わないで落ち着いて読んでね。

選ぶお役目をする人がマジョリティで既得権があって、選ばれる側がマイノリティで力(実績)を持っていないとき、この「きちんと人を見て」が適正に行われないことは、さまざまな実験で語られています。ひどく悪意があってやっているわけではありません。単に「そういう見方をしてこなかった」習慣が意思決定をゆがめていることに、気が付かないってやつです。ええ、私だって同じです。直感的に判断する自分と、落ち着いて考える自分がいて、前者だけが動くときに多く起きる間違いです。

女性の管理職登用について、3割という数字がよく語られるのはそういうことです。3割を超えるとマイノリティが「全体として一つ」に見られるのではなく、個々の人の違いとしてそれぞれの意見が立ってくるのだそうです。数は力で、数は環境の見え方を変えます。まず環境の見え方の中にあるわたしたちの「見方のクセ」を変えるところから、始めませんか。
それが、男性も女性も、誰にとっても居心地のいい社会を作っていくことだし、「多くの眠れる才能を解き放つこと(安宅和人氏)」だから。

最後に、国際女性デーだからね、これを伝えておしまいにします(長いね、今日のnote)

女性の皆さんは、「女性だからって理由で上にあげられるのは困る」とか「わたしは実力で評価されたい」とかいう思いを少し横に置いて、多くの先輩たちが細くつないできたリレーのバトンをつなぐつもりで、いろんなことをちょっと図々しく、ちょっとはみ出して引き受けあっていきましょう。それがさまざまな制度を作ってここまでつなげてくれた先人たちの思いにこたえることだし、わたしたちの次世代の娘や息子たちにいい環境をつくることだって思うのです。強すぎる責任感と、自分への厳しすぎる評価をちょっと緩めてね。

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