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自分の意見を言えない子、というのがある日爆誕しているわけではない

仕事柄、親の立場の人、教える立場の人、そして企業の側にいる人とさまざまに出会う。あるあるなのは「最近の子は」「今の若い子は」、とどめは「うちの子ってどうして」という始まりのこんな話。

・自分の意見を持ってない
・(持ってるかもしれないが)言えない
・何を考えているのかはっきりしない(言わない)
・どうしたいのかわからない(言わない)

ほんとに困る、と、ね。

あたかも「今急にそうなった」かのように言う。
もしも読んでいるあなたが同じことを感じているなら、そしてもしもあなたに子どもがいる(いた)なら、身近に小さい子どものことを想像できる状況があったなら、思い出してみてほしい。

1歳とか2歳とかの子どもが何を言って何をするか(笑)

これかってー!
じぶんでやりたかったー!
あっち、いくのー!
いやいやいやいやいやーーー!

…そんな感じよね笑
程度の差はあるけどまあ、自己主張しかないでしょ。

「自分の意見を言えない子」は3歳、4歳…と大きくなるにつれじわじわ出てくる。その分何をするかというと「親の顔を見る」とか、本人が何か言う前に「親がその子の気持ちっぽいことを言う」よね。
親は意見を奪い取ろうとしているわけではなく、つい、うっかり、良かれと思って、待てなくて、周りを待たせられないと思って…といろんな事情でそうする。「この子はこうだから」と本人に聞かずに本人の好みを答えたりもする。「私はわかってるから」と。

何年か前にバズったセイバンのランドセルの動画、覚えてる?

最初に子どもが選ぶのを陰から見ている親が「きっとうちの子は●●が好きだから」という通りのを選ぶ子どもたち。でもそのあと、「ほんとに自分の好きなのを選んで」と言われたら全然違うものを選んで、親は驚くけど「そうなんだな」ってしみじみするという動画で、すごく素敵なんだけど(この皆さんはそのまま受け入れててそれもいいんだけど)、現実はこうやって親が何を望むのかを、子どもは敏感に感じ取っていて、そのことに親は気が付いていない、ってよくあること。

「あなたは~~なんでしょ」といつも親に言われて、そうなんだなって思ったり「あなたはこうしたらいいのよ」と言われて「そうするのが正解なんだ」って思ったり…その繰り返しで、人によっては3歳くらいから徐々に徐々に、何かを答えるときに「親はどっち?」を気にするようになっていく子もいる。自分の意見のかわりは親だけじゃなく、学校にいけば先生になったり、はっきりものを言う同級生になったり、部活の先輩になったり…そうやって自分をちゃんと見ることも、自分の気持ちを言語化することもしなくて当たり前、になっていってしまう。
言わなかったら言えるようにはならないし、言わなかったら自分の気持ちもわからなくなる。

「いつもお母さんの選んでほしそうな方を選んできたし、お母さんが喜ぶ方に進んできたから、今自分が感じているのは自分の気持ちなのかお母さんの気持ちなのか、よくわからないんです」
そんなことを雑談の中でふと言った女性(24歳)がいた。それを聞いた時、びっくりして息が止まりそうになった。

ある若者は「自分は体育会の副主将だったので、人を大切にできて、みんなの意見をまとめるのが得意」と言った。その強みを買われて就職した職場でかなり苦労して早々に離職することになったときに、当時の上司から「自分で考えて行動できない」ことを厳しく言われたのだとか。
「学生時代はどうやってまとめてきたの?」と聞いていくと、どうやら本当に「みんなの話を全部聞いて」「不満が残らないような落としどころを探して着地させる」ということだけで、そこに自分の意見や主張は一切伝えてきてなかったということがわかった。それを別に我慢しているわけでも、不満でもないという。「小さいころからいつも親に、他人の気持ちを大切にできることがいいこと、って言われてきたし、親が進路もちゃんと決めてくれてきたから、特に…」と言う。

職場で「どんどん若い人の意見も出してほしい」と言われて言ったら「それは今言うべきじゃない」と言われた、とか、「やり方を見直した方がいいと思う」と言ったら「わかるけど、新しいことはやらない方針」って門前払いだったとか、そんなので言わなくなる人もたくさんいる。そういうのがずっとずっと積み重なっている。

組織の上を見たら「どうも暗黙のルールでこうなってるんだな」と言うのが見えて、そっちの裏ルールのほうが強いんだなと思ったり、誤解したり…そもそも意見言うことで余分な仕事が増えたり、生意気だと思われたりしてメリットなさそう、って感じたり…

まだまだある。

つまりは、目の前に見ているその課題っぽいものは、そこに至る長いプロセスとその場における「見えない規範」のコラボで生まれているということ。

人は、とにかく時間をかけていろんなことを学習して(ときにはそれが誤学習で)そこにそうしている。わたしも、あなたも。
だからね、
「あいつはほんとにな~」とか「今の若いやつはな~」とか言ってるうちは、全然ダメなんだと思うよ。自分の胸に手を当てていろいろ考えてみるところからだよね。


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