【ライブレポ】宮内 優里 "美術と音楽の9日間「rooms」" 2020.11.14
去年の12月以来待ちに待った生のライブ、ようやくチャンスが巡ってきました。
2020年3月に開催予定だったものの昨今の情勢で中止・延期を余儀なくされた関連イベントの再始動。
個人的に元々それが今年一本目のライブ参加予定だったので、不思議な巡り合わせを感じます。
止まっていた時間がここから動き出すかのようです。
(まだまだ油断はできませんが)
1.宮内優里さんについて
♪宮内優里 / digo_
https://youtu.be/gqffbKCMb_M
千葉県在住の宮内優里さんは2006年にデビューされたミュージシャン。2013年にはFUJI ROCK FESTIVALにも出演されました。
電子音楽とアナログサウンドがうまく調和したインストゥルメンタル楽曲を主に制作されています。
作風は時期によって若干異なると個人的に思っていて、活動の初期~中期はテンポこそ今と変わらずスローだが、多彩な音色で空間を埋め尽くす情報量多めの楽曲が特徴ではないでしょうか。
ここ数年は映画・テレビ番組への楽曲提供、そしてKenji Kihara氏と共同で行っている「BGM LAB.」など、作品や日常に寄り添う音楽に力を入れて活動を続けられています。
一貫してあるアナログサウンドの側面には木製の家具をコンコンとノックしたような、心のどこかにある原風景を想起させるような温かさがありとても癒されます。(←上手いこと言おうして妙に誌的になる人)
♪"meole_" by 宮内 優里 / miyauchi yûri @ 御徒町 WOODWORK 2011.11.6
https://youtu.be/H9pRY0P6tCU
私はエレクトロニカ・フォークトニカに興味を持ちだした頃に優里さんの存在を知りました。
ルーパーを駆使した多重録音によるライブ映像を観て、多彩な楽器を次々と演奏して世界観を構築していくその「展開の面白さと癒し」が両立したパフォーマンスにすっかりハマってしまいました。
Youtubeに上がっている動画は全て視聴しましたね。
いつかライブに行きたいと思っていたミュージシャンの一人だったので、延期こそしましたがこうして生で見る機会ができて本当に嬉しいです。
好きだ好きだと言いながら見視聴の音源がいくつかあったので、CDを取り寄せたり、廃盤のものはサブスクで聴くなどして当日に備えました。
2.作品展示@芦屋市立美術博物館
『美術と音楽の9日間 「rooms」』は芦屋市立美術博物館の企画展。
11月14日から23日まで展示やライブ、ワークショップなどが日替わりで催されていました。(うち一日は休館日)
私は初日の14日にお邪魔しました。
芦屋市自体あまり馴染みがなくほぼ初めて訪れましたね。
11月にしては暖かい小春日和の中、閑静で自然豊かな街並みを歩きます。
時々立ち止まってはグーグルマップとにらめっこしつつ、住宅街の一角にある会場へ到着。(本当に住宅街に溶け込んだ場所にあるので地図アプリ必須です)ライブは夕方からなのでまずは展示を観ていきます。
展示内容はタイトルの通り美術作品と音楽の融合をテーマとしたものでした。
絵画を基にした音楽を2台のレコードプレーヤーで同時再生して音の重なりを感じるブース、音がランダムで鳴る装置を部屋中に設置したブース、壁面に映した影と光が移り変わる映像作品に合わせてアンビエント音楽が流れるブースなどがありました。
3つ目のブースは自分も影絵のように映り、作品の一つに溶け込んだようで面白かったです。
ちょうど子ども達の合唱ワークショップの時間に訪れたので、親御さんに混じって成果発表を観覧しました。
ひと通り展示を見たのち一度会場を後にし、ファミレスで時間を潰してライブまで待ちます。
芦屋の海沿いの景色は絵になりますね。
ずいぶん地元から出ていなかったので良い気分転換になりました。
3.ライブ開始
日中訪れた場所でしたが、開場時間になると辺りは一変していました。
日が落ちて閑静な住宅街はいっそう静まり返っています。
土地勘が無いこともあり若干心細かったです 笑
でも夜の公共施設って独特のムードが漂ってて嫌いじゃないんですよね。(閉館間際の図書館とか)
入場した館内もシンとしていました。(皆マスク着用で話をしないものあって)
他のお客さんも少しの緊張とライブへの期待でどこかそわそわしているのを感じ取れます。
座席は先着で自由だったので演奏スペース全体が見れる中央付近をチョイス。
前方まで行ってセッティングされた演奏機材を眺めるなどして開演を待ちます。
昼間の児童合唱でも使われていたグランドピアノが目に付きます。
開演時間になり優里さんが遠慮がちに登場。拍手が起こるも機材チェックで一度出てこられただけとのことでした 笑
ライブに先だってそのままMCが始まります。
およそ一年ぶりのライブで緊張されてるとのこと。
今回のライブはノートパソコンをプラットフォームにした多重録音による即興演奏というスタイル。
以前はずっとBOSS製のルーパーを使用しての演奏でしたが、使い方を忘れてしまい、思い出すこともできるだろうが、いっそ新しい手法でやってみようと練習されてきたそうです。
パソコンを介することで音質も向上したとこのこと。期待が高まります。
〈セットリスト〉
MC
即興演奏①
・前半
・後半
MC
『読書』
即興演奏②
即興演奏①
最初のセクションは連続した即興演奏でしたが、半分を過ぎたあたりで一度飽和した音をリセットするように新しい多重録音が始まったので前半・後半と分けされてもらいます。
キーボードから静かに前半の演奏が開始。音色を変えながら空間が彩られていく。
さらにギター、バードコール、ジャズドラムに使われるブラシ、小ぶりのウインドチャイム、ラチェット(工具)など優里さん愛用の個性ある楽器が一つずつ重ねられていきます。
ギターは今回ヘッドレスのスタインバーガータイプを使用されていました。普段よく耳にするエレキギターとはまるで違う、キーボード近い角のとれた音作り。
どれも嫌味のない美しい音が繊細に積み重なっていきます。
ルーパー使用時と同様に楽器の持ち替えや音量調整がテキパキと行われていきます。
テキパキといっても聴いている分にはせわしなさは感じません。
Twitterでご本人に反応頂いたように「しっとりじっくりな演奏」でした。
演奏する優里さんをじっと見たり、意味もなく天井を見上げて音の広がりを楽しんだりして過ごします。
お客さんも各々ほんの少し体を揺らしながら聴いていましたね。
しばらくしてグランドピアノに手が伸び、リフレインに加わります。美術館というシチュエーションに非常にマッチしていました。
気付くと幾重にも重なった音の数々で空間が埋め尽くされ、次第に音圧が高まっていきます。
生のライブってこうだよなぁと配信では味わえない迫力を噛み締めます。
しばらくすると飽和寸前の空間がいったん落ち着き、後半部分に移ります。
今度は落花生の形をしたマラカスを軸に開始。
前半とはまた違ったリフレインがもう再び重なっていきます。
後半印象的だったのは鍵盤ハーモニカ。
おそらく小学生が授業で使うものと変わらないタイプだと思いますが、優里さんの演奏はどこか切なげで情緒があってすごく好きです。
鍵盤ハーモニカってこんなに綺麗な和音が出せるんだなって。
30分を予定していた一つ目の即興演奏が終わる頃には、気付けば45分が過ぎていました。
長くて退屈だったいうことは全くなく、むしろ長くなった分よりじっくり楽しめましたね。
『読書』
続いて2011年に星野源さんとのコラボで生まれた楽曲、『読書』を披露。
収録されている『ワーキングホリデー』は最初に手に入れた、一番好きなアルバムだったりします。
歌詞を確認し、いくつか音を重ねてからギターが爪弾かれます。
テンポは星野源さんが歌う原曲よりさらにスローでした。
低く落ち着いた優里さんの歌声が心地よかったです。
曲の序盤はギターの弾き語りに近いスタイル。
中盤からは多重録音で伴奏をしっかりと作り、にぎやかさが増した所に歌を乗せていきます。
アルペジオといいソロといい、優里さんのギターを存分に味わえる一曲です。
(個人的にはパソコン画面で隠れていた手元がよく見えていたらより楽しめたかなと)
♪宮内優里 / 読書 (feat. 星野源)
https://youtu.be/SXrh7HmHr8k
即興演奏②
『読書』の演奏を終える頃には公演の終了予定時刻を回っていました。
私はもっと聴いていたかったので気にしませんがそうはいかないようなので、急ぎ気味で最後のセクションが始まります。
最初のじっくりな即興演奏が今の優里さんのスタイルそのものだとすれば、ラストは曲展開多めで、空間を音で埋め尽くす昔の楽曲っぽさが出ていたような気がします。
優里さんの楽器達で目立つものといえばトライアングル、今日は出番ないのかなーと思ってたらここで登場!
用意されていた楽器は全て聴けたんじゃないでしょうか。
音数を少しずつ減らしていき、最後はグランドピアノの旋律で終わりを惜しむかのように締めくくりです。
4.あとがき
幻想的な心地よさに浸って帰路につきました。
ロックライブの余韻とはまた違いますね。
翌15日には優里さんによる展覧会に寄り添うBGM演奏が5時間にわたりまったりと行われていたようです。
何もなければそのまま泊まって聴きかかったのですが、今回は一日のみ参加。
自由にライブに足を延ばせるように日が待ち遠しいですね。
ですが関西に来ていただいただけでも感謝しないと。
また機会があれば他の土地にも足を運び、優里さんのパフォーマンスを楽しみたいです。
♪improvisation - LIVE SHOW RECORDING on November 14th, 2020
https://soundcloud.com/miyauchiyuri/rooms_live
♪LIVE BGM on November 15th, 2020
https://soundcloud.com/miyauchiyuri/rooms_bgm