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親愛なる「木」へ

木が好きだ。地面に生えてるそのまんまの木も、切った中身も好きだ。中身は家のあちこちに使えるから木と一緒に暮らせて嬉しい。色も模様も肌ざわりも匂いも好きだ。家にあるものの中で一番自然で安心する。どれだけ時間が経っても揺るがない逞しさにも安心する。

長い年月を共に過ごす中で、経年変化を味に変えて、趣き深い姿を見せてくれる。手で触れて、じっと見つめて、その変化に気づいた時、ああこんなに時間が経っていたんだな、今までわたしは生きてきたんだなと、しみじみ感じさせてくれる。

木は一本そこにいるだけでも魅力的だが、何か別のものと組み合わせた時にさらに魅力が増す。空、川、動物、鳥や虫。家の横に木があるとないとじゃ家の印象も暮らしも変わる。

木の中身もそう。タイルや左官仕上げの床とフローリングが並ぶと、相乗効果でどちらもかわいく見える。板壁ばかりじゃなくて白い塗り壁があると、部屋が明るくなるし木の色も引き立つ。障子紙や襖紙とも相性抜群だし、鉄や真鍮などの金属と合わせるとおしゃれになる。ガラスを囲むように木の枠を付けると窓やドアが作れる。ガラスと木はもはや相性がいいなんてレベルじゃなくて相思相愛だと思う。

リノベデザイナーという仕事柄、内装材を選定したり提案したりするのだが、ここ数年で木によく似た「木目調」の素材が進化して定番化してきたなと感じる。塩ビでできた木目調のフロアタイルは木製フローリングに見えるし、木目調メラミンやシートを貼った扉は木製建具に見える。木目調クロスもかなりリアルになってきた。生産面、施工面、価格面で優れているのは理解できるし、品質が均一なのも人気の理由だろう。

でも、「木目調」は劣化する。新品の時が魅力のピークで、経年変化で魅力が落ちていく。傷や汚れは味にならないし、使用状況次第では木目が消えて「木ではない何か」が露呈する。

工業的な擬似製品より、地球の未来のためにもサステナブルな本物の木を選ぶべき。そうわかっていても安価な魅力は強い。

じゃあ、地球のためじゃなく、自分の未来のために選ぶとしたら?

ここからはラブレターです。

私の人生には、一緒に歳をとってくれる存在が必要です。いつか「歳をとるのも悪くないね」と皺を寄せて笑い合いたい。そんな未来が待ってると思えるから、安心して生きていけます。

もっとまっすぐ言うと、好きだからただそばにいてほしい。

親愛なるあなたへ、愛を込めて。

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